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ワタシタチ。

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花瓶に水を。











今夜は眠れない。







思いを寄せている君からの着信がないのはいつものことで、
おまけに彼女には好きな人がいた。




俺の幼馴染だ。



須藤タカシ。



ハッキリいって、どこがいいのか全くもって分からない。





伸ばし切った黒髪にダサい太縁眼鏡
いつの時代だよ!と思わずツッコミたくなるカラオケでの曲のセンス。





その癖、性格は優柔不断だし友達も少ない。
女子とあんまり話しているのを見かけることもないし
案の定、彼女なんて一度も出来たことはない。







あんな奴のどこがいいんだよ、なあ。







俺は高校入学してからのこの三年間ずっと...








「あなたには分からないのよ。」







顎下で綺麗に切り揃えられた髪の毛を揺らしながら
君は自販機で買ったレモンティーを俺に差し出した。







「あいつ、貸したDVD全然返してくんないんだよなー。」



「へえ!」



「そういや高校あがるまで、母親のことママって呼んでたんだぜ。」



「そうなんだあ。」



「かけっこでいつもビリだったし。」



「あはは、なにそれ、彼らしいね!(笑)」







違う、俺が言いたいのはそうゆうことじゃなくてもっと...








「だからさ、」





「んー?」




その...








「たまには俺に電話かけろよ。」






「..は?」






「だから、あいつのこと知りたいんだろ、もっと。
俺一応幼馴染だし?しかも俺くらいだろ、あいつの友達とか。(笑)」





「んー...。」







ためるとこなのかよ、おい。









夕陽に照らされた横顔がやけに綺麗に見えた。


彼女はいつだって綺麗だ。


親や周りの友人にもすごく優しい。


みんなが面倒でやらない花の水やりだって、居残りをして彼女がいつもしている。








彼女の良いところは俺が一番よく知っているはずなのに―――――










「考えとく!また明日~~!!」










俺にしとけよ、と言えるはずもなく







頑張れよ、ともどこか恥ずかしくて






結局




「またな。」








そんな約束というには不確かな三文字で
毎日を終える。









家に帰り自分の部屋のベッドに倒れこむと
少しだけ夢を見た。







俺が彼女に柄でもなく花束なんか渡して
「ありがとう、嬉しい!」って、すんげー笑顔で俺に言うんだ。






そしたら場面が変わって結婚式。
俺がタキシードを着ているのかと思ったら――――






はい出ました、絶賛只今彼女が夢中の
俺にはどこがいいのか理解不能の幼馴染。








真っ白なウエディングドレスを纏った彼女の隣に
当たり前のようにあいつが並んでいて...







「「大輔~~!ごはん~~!」」


「...あ~~。」








タイミング良いのか悪いのかよく分からないところで
母ちゃんの声で目が覚めて俺は情けなくなった。





iphoneを見ると一件メッセージが来ていた。





彼女からだった。









「そういえば当たり前のように教室にあるあのお花を買ってきているのは、」











俺は素早くスクロールをしてとことん落胆した。









「須藤くんなんだよ。」






そういやあいつは昔から花が好きだった。



なんだ、そうゆうことか。











俺は花をあげるキャラでもないし、
育てる器用さも持ち合わせていない。







道端に咲いている花を見て「綺麗だな」と彼女に一言。


それすらもきっと叶わない。









俺が毎日彼女のことを考えていたり
連絡を待っていたりすることを一切知ることもない君は―――――










これから先も知ることはないのだろうか。












俺は静かに画面を閉じた。











リビングに行くと、二つ下の弟と、母ちゃんと父ちゃんが
いつもの定位置の椅子にそれぞれ座り俺が来るのを待っていた。







「唐揚げじゃん。」






いただきます。





「母ちゃん、俺失恋したわ。」




「あらなに大輔の口からそんな台詞を聞く日が来るなんて...」




「顔だけは良いからなあ~~兄ちゃん。」






ウッセー!と、隣に座る弟に蹴りを入れ
俺は深いため息をついた。








すると黙っていた父ちゃんが俺を見つめて
こう言った。









「気持ちは伝えたのか。」








何言ってんだよ親父、子供じゃあるまいし
振られることが目に見えてるのに言うわけねーだろ。






ってのは心の中だけにしといて、







「バカじゃないんでね、状況的に言わない。」





そこだけを切り取った。















夕食を食べ終えて自分の部屋に戻ると
俺はさっき届いたメッセージの返信をしようと思った。










送ることはただひとつ。









遠回りが俺のやり方だ。







急になんて言えない、それこそきっと距離がひらいてしまう。













今夜は眠れない。




今夜も、眠れない。









誰のせいだよ。



傍でずっと見てきたんだよ。











やっぱりいきなりだとちょっと恥ずかしいけど







なあ、だから






























「すこしだけお話しませんか。」












そう簡単にあいつになんか渡してたまるか。






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『花瓶に水を。』/ meluco.


















作品名:ワタシタチ。 作家名:melco.