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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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俺というアカウントが生まれた日

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生まれたときはフォロワー2人だった。
両親が俺をフォローしていた。

両親のどちらとも顔の似ていない俺だが、
そんなことよりも自分が生まれるより早く
『Uwitter(ユゥイッター)』のアカウントができてたことに驚いた。

ユイッターは、現実の俺と自動的にリンクしている。

俺が今日やった行動などは自動的にSNSで報告される。
そして、俺を……俺のアカウントをSNSでフォローされると
その数字が現実世界の俺の頭の上に表示される。


15
大田大輔。


15人しかフォロワーはいない。
だからといって、損をするわけでもないし
多いからといって得をするわけじゃない。

「いらっしゃいませーー」

夜のコンビニに寄ると、客がレジ前に列を作っていた。
棚から弁当を持ってレジの最後尾に並ぶ。

10,556
相坂ひとみ

926
松田浩二

8,627
金田正義


わかっている。
このフォロワー数がただの数字くらいわかっている。
なんの意味もないことくらい。

それなのに……。
それなのに……。

「なんで俺だけ……劣っているんだ……」

俺のフォロワー数は「15」。
ほぼすべてが親戚か友達だ。

俺の1日の行動に興味を持ってくれるのは15人しかいないのか。

「よし、フォロワーを増やそう!!」

これまで自分から積極的に動くことがなかった俺だったが、
積極的に誰かに興味を持ってもらえるように日々を過ごした。


が。


20
大田大輔

「増えたの……たった5人かよ……」

休日は毎日出かけるようにして、
できるだけ同じ道を通らないよう、日々に変化をつけた。
それでもフォロワーはわずか20。

他の人のアカウントと比べて圧倒的に少ない。


「フォロワー多い人はどうしてるんだろう」

気になった俺は、フォロワーの多いユイッターアカを調べた。
さぞ、個性的で興味を引く内容なのだろう。


9/9 08:15 道に花が咲いていた
9/9 10:08 猫カフェでたわむれた
9/9 11:57 ちょっとお昼寝。最高


「な、なんだこれ……」

俺と大して変わらないじゃないか。
いや、むしろ俺よりもずっとタメにならない。
ゴミみてぇな内容じゃないか。

「なのに、フォロワー数999,999人って……」

もしかして、自分でアカウント作って水増ししてるんじゃないか。
そう思ってフォロワーをたどってみたが、
みんなちゃんと活動しているらしく投稿されている。

というか、ユイッターアカウントってどう作るんだ?

「そういえば、ページにもアカウント作成する方法はないし
 俺が生まれたときにはすでにアカウントあったなぁ……」

って、そんなことはどうでもいい。
とにかく今はフォロワー20の状況をなんとかしなくちゃ。

そこで、フォロワー数が多いアカウントの人にアドバイスをもらうことに。


「……フォロワー数を増やすコツが知りたい?」

「はい、見てのとおり俺のフォロワー数は20なんです。
 これといって損があるわけじゃないですが増やしたいんです」

「いいよ、教えてあげる」

人気ユイッター人は快く教えてくれた。
俺もそれを余すところなくメモして頭に叩き込んだ。

そして気付いてしまった。

「今さらどうすることもできねぇじゃん……」

待っていたのは絶望。
生まれながらに容姿や才能が決められるように
ユイッターのアカウントやプロフィールは変更できない。

人気ユイッターのアドバイスはどれも的確だったが
どれも最初の段階で差がつくもので
これからどう努力してもどうしようもなかった。

「はぁ……こうなったら、
 捨てられたアカウントをフォローさせて数を増やすか」

興味がなくなり、捨てられたアカウントもあるだろう。
それをうまいことハッキングして自分をフォローさせる。
そうすれば数は増やせるに違いない。


「……あれ? ない。ない。ない!?」


ユイッターを探すこと数時間。
俺の求めている"捨てアカウント"はものの1つもなかった。
なにこれ不思議。

「どのアカウントも全部生きてる。こんなことあるんだなぁ」

俺なんか飽きっぽいから、SNSやってもすぐに放置するのに。
放置されているアカウント1つもないなんて……どうなってんだ。


「アカウント……アカウント……あ、そうだ!!
 俺のアカウントをまた作り直せばいいんだ!!
 そうすればきっとフォロワーが増やせるぞ!」

ここにきて神がかり的なアイデアがひらめいた。

最初のアカウント作成の時点で工夫をしておけば、
人気ユイッターのアドバイスも生かせてフォロワー数激増だ。

「へへへ、アカウント作成し直すことはできなくても
 アカウントを削除することはできるからな!」

アカウントを削除すれば、自動的にアカウント作成されるはず。

「よし! アカウント削除だ!」


Uwitterアカウントを削除しますか?
 >はい  いいえ





その瞬間。

自分の体が粒子になってサラサラと消えていく。
と、同時に画面のアカウント画像が立体的に飛び出してきた。

液体状のソレは、画面から飛び出るとだんだんと形を整え
俺とまったく同じ姿形へと変わった。


0
大田大輔


生まれたての自分を見てやっと気付いた。

「俺のアカウントじゃなくて……アカウントが俺なのか……」

捨てアカウントがいるはずない。
だってみんな……アカウントから生まれているのだから。