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道化師 Part 3

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15


俺たちは普段と変わりなく授業を受け昼休み、龍也が俺たちを迎えに一海を連れやってきた。
「昼飯、何処で食べる?」
「裏庭のテラスにでも行くか?」
そうだなと一海とミユキが裏庭のテラスに俺たちは売店に向かった。
「ヒロ、傷は大丈夫か?」
「痛み止めは持ってるし、今のところたいしたことない」
話をしながら階段を降りようとした時、ドンと背中を押され手摺を掴むことも出来ず転げ落ちた。
龍也の呼ぶ声がするが、頭を打ったみたいで意識が飛ぶ。
頭の痛みに顔を顰めながらも、周りを見渡す。保健室だろうか、起き上がろうとするが、体のあちこちは痛いし、腹に力が入らない。
何があったんだっけ、よく思い出せない。頭が割れそうな痛みに目を開けているのも辛くなる。
「ヒロ、気がついたのか?大丈夫か?」
「全然大丈夫じゃない」
龍也が悪いわけでもないのに不機嫌な声しか出ない。
「ミユキたちは?」
「足を滑らして落ちたけど、大丈夫って言ってあるから」
ホントは全然大丈夫じゃないけどなと情けない顔になる。
俺は階段から落ちたのか?ぼんやりと思い出していた。
「龍也、俺の後ろにいた奴って見たか?」
「いや、結構人がいたからな、わからない。どうしてだ?」
「背中を押されたんだ」
おい、マジかよ。と驚きを隠せない。
「ヒロ、魁斗さんと田所さんが迎えに来るから、俺は一海たちについてる。傷口が開いて応急処置しかしてないから、絶対動くなよ」
動こうにも動けないさと苦笑いをすると、龍也もそうだなと俺より辛そうな顔をする。
「龍也、学校にも敵がいるのか?俺、何かやらかしたかな?」
「恨まれるようなことしてないだろ、下手したら大怪我だぞ」
ミユキの兄貴とは関係ないと思いたい。
「ミユキを頼むな」
「わかってる、心配するな」
凄く疲れた、瞼を閉じ、ミユキの心配顔が浮かび溜息が溢れる。

俺が眠ったと思ったのか龍也もパイプ椅子に凭れ天井を見上げている。
静かな部屋、何も起こっていない、何も起こらない、そう思いたくなる穏やかさなのに。
保健室のドアが開く音がした。
「龍也、ヒロは?」
魁斗さんと田所さんが入って来て、小さな声で龍也に様子を聞いている。
「魁斗さん、俺なら大丈夫ですよ」
申し訳ない気持ちで引きつった笑顔を見せる。
「ヒロ、起きてるなら少し傷の具合を見るよ」
お願いしますと言った俺の服をはだけて、包帯ではなく傷口の開くのを抑えるテープとガーゼが貼られていたが、赤く染まっている。
「もう一度縫い直しだね。翌日にこれとは呆れる。まぁ、話は後でゆっくりするとして、帰るよ。龍也はミユキたちを頼むね」
俺は田所さんに肩を借り、なんとか立ち上がれた。
「担任には?黙って帰っていいのか?」
「さっき、校長に話したから大丈夫。さぁ行くよ」
授業中ということもあり静かな廊下を肩を借り歩く。情けない姿に唇を噛み俯く。
朝に乗った車の傍に小林が立って待っていた。
俺を見るなり、ドアを開けシートを倒し、楽に横になれるようにしてくれた。
「ありがとうございます」
小林は何も言わずにっこり笑いかけ、運転席に戻って言った。
俺の横に魁斗さんが乗り込むと車は動き出した。
冷やかに怒る魁人さんが綺麗な容姿だけに怖く嫌な汗が出てくる。
「ごめんなさい」
「ヒロ、あれ程大人しくって言っていたのに階段から落ちるなんて不注意すぎる」
「それなんだけど、背中を押されたんだ。偶然なのか、故意なのかはわからないけど」
そうは言ったが俺は故意に押されたと確信していた。
「どう言う事、突き落とされたって」
予想外の事に言葉を失う。
黙って何かを考えている魁斗を邪魔しない様に外を眺めていた。龍成の家とは違う方向に走っている。
「何処に向かっているんですか?」
不思議そうな声に田所が俺の方に振り返り、安心するように微笑む。
「魁斗さんのお父様の病院です。個人病院ですのでそちらで手当てをさせていただきます。大丈夫ですよ」
魁斗の父親も医者なのかとびっくりした。それと同時に迷惑をかけるのではと不安になる。
「大丈夫、親父には話してあるから心配ないよ」
俺の心配が伝わったのか魁斗が難しい顔のまま心配するなと言ってくれた。
個人病院と言うから小さな病院を思い浮かべたが、中々に立派な病院に尻込みしそうになった。
だが、車は病院の裏手まで行き、同じ敷地内の別の建物の横に止まった。
「ヒロ、降りるよ。シートを起こすけど、腹筋使うなよ」
言われた通り体をシートに預ける。
魁斗さんの手を借りその建物に向かう。俺の後ろには田所が付いてきていた。
「魁斗さん、ここは?」
「俺の実家、住居の方だが、昔使っていた診察室があるからね。そこで、縫ってしまおう」
その後、ゆっくり話をしようと言われ緊張感が増す。

診察室といっても診察台とかでなく、普通のベットが置かれ、俺の寝室と変わらない感じがした。
魁斗さんが可笑しそうに
「実家に帰った時、寝るのに使ってるから診察室って感じしないだろ」
俺が思ってる事がわかるのかびっくりしてしまった。
「ヒロは案外気を許してる時は顔に出てるよ、わかりやすい」
そうなのかと、恥ずかしく赤くなるのがわかる。
傷を見ていた魁斗が、困った顔をした。
「傷口は少し縫い直すだけでいけそうだよ。思った程酷くはないね。後は、肋骨が折れてるから、コルセットを持ってくるよ」
ヒビだけだったのにとため息をつきながら部屋を出て行った。
部屋の隅で立っている田所さんと話をすれば気持ちのモヤモヤが無くなりそうな気がするのはどうしてだろう。
「田所さん、話をしてもいいですか?」
「はい、いいですよ」
俺の側に歩み寄ってくれる。
「俺、学校では無愛想だし、怖いって思われてる。でも、こんな事になる恨みって身に覚えがない。俺が気付いてないだけだろうか?」
「そうですね、人の気持ちは複雑ですし、それぞれの考え方捉え方により、逆恨みのような恨みもありますからね。ヒロさんが一概に恨みを買うような事をしたとは思わないですよ」
「ミユキの兄貴が絡んでいるとは?」
俺の問いに考えを整理しているのだろう。瞳を伏せ考えている田所さんは、中々にハンサムだな。不謹慎にもそう思って眺めてしまっていた。
「今の情報量ではなんとも言えないですね。でも、彼が資産家で力が及ぶところに学校の関係者がいる可能性は捨てられない。そんなところでしょうか」
「そうなると、否応なくしなければならない状況にある生徒がいると」
「考え過ぎかもしれませんが、ないとは言えないですね」
二人して難しい顔をしていると魁斗さんが呆れた顔で入ってきた。
「二人とも、考えても仕方ない事をうだうだ考えない。田所は早く龍成に連絡して情報を集める。ヒロは、龍成のところで大人しくミユキの帰りを待つんだな。考え過ぎない、いいね」
すぐにヒロは無茶をするからとブツブツと文句を言いながら俺にコルセットを装着してくれている。
田所も携帯を手に部屋を出て行った。
作品名:道化師 Part 3 作家名:友紀