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つま先立ちの恋に慣れたら

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第五話 夢


 「--------はっ!」
 「・・・・ん?どうしたの、奈々」

 週末のある日。奈々は怜治の家に泊まりに来ていた。二人で寝ていたところ、怜治の部屋着の裾をつかんで彼女は涙目でおびえていた。

 「怜治さん・・・怖かったです・・・!!」
 「悪い夢でも見た?」
 「鬼が!!たくさんでてきて、こうなってこうなって、私全速力で逃げたんですけど、あっという間に追いつかれてもうだめだって思った瞬間に目が覚めました~~~~」

 詳しい状況を身振り手振りで教えてくれたが、いまいちよくわからない。とにかく鬼に追いかけられたらしく、なんだか疲れているようだった。その後も青ざめた様子で心臓飛び出そうとか、生きた心地しなかったとか、思い出したように玄関を振り返ったりしていて、怜治は鬼だけでここまで騒げる奈々がおもしろくて、ついに吹き出してしまった。

 「あーーーーっ!笑いましたね!?」
 「ご、ごめん。いや、だって・・・ぷっあはははははは!!!夢だし、そこまで気にしなくてもいいのに、大げさでおもしろくて」
 「・・・・」

 彼女はふてくされてそっぽを向いて体育座りをしてしまった。どうやらいじけてしまったようだ。笑いすぎたよね、悪かったって。

 「馬鹿にしてるわけじゃないよ」
 「・・・・・・・」
 「そういうところも可愛いなって」
 「はい、ストレートでました」
 「ひどいなあ、ほめてるのに。照れてる?」
 「照れてないです!」

 座ったままうつむいて丸くなり、しばらく黙りこくってしまった。こっちを向かない奈々に焦れた怜治は、彼女のさらさらの髪の毛を一束すくって、くるくると自分の指でもて遊んで気を引こうとしたが、反応はない。