小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

道化師 Part 2

INDEX|4ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 

「茂は成長期なんて随分と昔のことだよね、でも、成長期ってあったのか?」
タモツさんが揶揄う。
「タモツ、茂を怒らすなよ。話しが出来ないからな」
サクヤさんが「さてと本題にいこうか」を合図に皆の表情が変わる。
タモツさんが口火を切り
「サクヤ、パーティーのメンバーの把握は?」
「勿論、確認済み。何人かに情報も流した。さぁ、地下のイベントに参加するのは何人ぐらいまで減るか楽しみではあるね」
「茂、署の動き任せた。タイミングを逃すな」
「タモツ、俺を見くびるな」
今日のタモツさんの笑みは綿菓子ではない。悪巧みをする子供のようだ。
それぞれが集めた情報を交換していた時ドアが開き、木島と射水そして鷺沼が入って来た。
「遅くなった。ヒロ、茂を怒らせてないよな」
口端を皮肉にあげた笑いは
(怒らせたよな、間違いなく)
といっているようで
「腹にもろに一発。防御した腕とかも痣になるかも」
「そっか、帰ったら見せろ」
俺は、焦った。鷺沼さんのいる前で何言ってんだ、このオヤジ。
「ヒロ、赤い顔して何期待してんだ。手当するだけだ」
「だ、だ、誰が期待なんかするか!」
「残念」
亮が俺で遊ぶのを呆れたように笑い遮る。
「亮、揶揄うのは後。龍成、そっちの守備は?」
「滞りなく進んでる。会場に入るのは俺とサクヤ、タモツお前もOKだな。それと、おまえが流した情報で何人かが俺に探りを入れてきてたから、煽っておいたぞ」
「茂、薬の情報の裏が取れた。後で渡す」
木島が薬と言ったのを聞き俺は、子供が関わる世界じゃないと感じ震えが走った。
「大丈夫、お前は留守番。必ず連れ戻すから待っていろ」
俺の肩を抱く木島を誰も咎めようとはしない。
タモツさんが亮の情報に「亮ちゃん、どの辺の薬が使われる?」
「催淫剤だな。何処で使うかが問題なんだが。ミユキだっけ、あの子に関しては、地下に降りてからだな。表のパーティーに顔を出してからだからな」
「どうかな、最近のはジェル状のものは、速効性はないけど持続に使うものもあるから、少し色っぽくなるぐらいでパーティーくらいなら平気かもな」
鷺沼さんは、どのタイプのが使われるか確認した方がいいだろうと茂に亮が調べた書類を後で見せるように言っている。
いろんな情報が飛び交う中、俺は理解が追いつかないでいた。
「ヒロは明日も学校だろ、そろそろ帰らせるぞ。事務所に戻るが、乗っていくか?」
射水さんに問われ、無意識に木島の顔を見てしまう。
「送って行くだけだ。亮みたいにつまみ食いはしないよ」
と、笑顔を向けられたが、
「つまみ食いされたわけじゃない」
と、何故か口から出るのは憎まれ口だ。
「可愛いな、味見したくなるから挑発するな」
「あ、あ、あ、味見って」
木島も射水も俺を揶揄う事を楽しんでいる。
「龍成、俺のヒロに手を出したら許さないよ」
サクヤさんまでが、俺のなんていうから、木島も
「おい、いつからおまえのになったんだ。俺のヒロに手を出すな」
「ちょっと、亮のヒロなら俺のヒロでもあるわけだよね」
鷺沼さんまで。
俺は溜息を零し、射水の腕を引き寄せ絡めて、挑発的に笑みを浮かべ
「射水さん、送ってください。でも、俺は、誰のものでもない、俺自身のモノだから味見なんてまっぴらだ。俺を自由にするのもさせるのも自分で決める」
挑発的な物言いをしたが、皆が忙しい仕事の合間に色々と動いてくれていることに感謝もするが、やはり何もできない自分に引け目も感じている。そんな俺の気持ちを少しでも軽くするために冗談を交えてくれる暖かさに、部屋を出る際、俺は無言で深く頭を下げた。精いっぱいの感謝をこめて。


作品名:道化師 Part 2 作家名:友紀