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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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エクストリームかくれんぼ

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「これから一流のスパイとして才能を見極める!
 諸君にはこの街で生き残ってもらう!」

スパイ候補生たちの間に緊張が走った。
殺し合いでも始まるんじゃないかと警戒する。

「では、これから諸君にやってもらうのは……」



「かくれんぼだ!!!」

全員が崩れ落ちた。

「諸君ら全員にはウイルスを仕込ませてもらった。
 ウイルス感染者に見られると死ぬウイルスだ。
 ……賢明な諸君にはもうわかっただろう」

死のかくれんぼ。
自分以外誰にもけして見つかってはいけない。


「合格者は生き残った人間の中から、判定で決める!
 全員スパイらしく最後まで隠れるように!!」


かくれんぼスタート =========================

「ここが俺の部屋か……」

参加者はそれぞれ離れた場所に居住区が与えられる。
とはいえ、町(エリア)がけして大きくないので安心できない。

うっかりコンビニに行って遭遇すれば即死する。

「誰かいそうだな、この部屋……」

慣れてないせいか、ウイルスで疑心暗鬼になっているのか
なんだか自分が常に監視されているような気配がする。

それに、この部屋は何か足りない気がする……。

「なんだろう。何が足りないんだ?」

普通の家にあるものが足りない。
でも、なくても生活には困らないもの。なんだ?

とはいえ、かくれんぼ期間は1ヶ月。
1ヶ月誰にも見つからずに過ごすぶんには問題ない。


初日、俺はずっと部屋に閉じこもって過ごしていた。
2日目、俺はずっと部屋に閉じこもって過ごした。

3日目、さすがに家に出る必要性が出てきた。

「は、腹減った……なにか、何か食べるものを……」

深夜に居住家から出てコンビニへと向かう。
目が合わなければ死にはしないので、深夜は最適。

暗いし、人通りも少ない。

「いらっしゃいませーー」

コンビニ明かりが今は憎らしくてたまらない。
他の参加者と遭遇しないように店を出……

「あ」

遭遇した。


「うぐっ……ああああああああ!!」


死んだのは向こうだった。
相手を視認したのは俺の方が早かった。

「あ、危ねぇ……深夜に出歩くことは、みんな考えるのか……」

同じ環境で同じ思考になることを考えてなかった。
安全に思われた深夜作戦は完全に危険だった。

かといって、昼間に人ごみにまぎれて外に出るのも怖い。

先に見つかれば死ぬ。
人に紛れることはできても、ほかの参加者も紛れている。

スナイパーのように狙撃されるかのごとく死んでしまうかも。



「くそっ!! こんなの……1ヶ月も無理に決まってる!!」

そう思ったのはちょうど半分を過ぎたころ。
びくびくしながら買い出しにいって、引きこもる日々。

自分でも怖いくらいのスピードで減っていく食料。
買い出しにいくたびに、いつ自分が見つかって死ぬのか不安でたまらない。

最近は部屋にいても常に視線を感じるほど。

「も、もうこんな生活限界だ! なんとかしないと!!」

そのとき、悪魔的なひらめきが浮かんだ。
ゲームそのものの本質をすげ替えるものだった。

「……そうだ、ほかの参加者を全員消そう」

最初の段階で、居住区は与えられている。
おそらくほかの参加者もそこを根城にしているはずだ。
奇襲すれば先に死ぬのはあっち。

他の参加者を全員消せば、俺は安心して残りを過ごせる。

「やってやる……覚悟しろよ……!」

俺はかくれんぼの「子」から、「鬼」へと役割が変化した。



「うがあああああ!! がくっ……」
「ぐほっ……うぐええええ……」
「そんなの卑怯っ……ぐはっ……!」

「あははははは!!! バカどもが!!」

俺を含めて、参加者は全員夜型の生活リズムは想像できた。
だから、寝静まる午前中に奇襲をしかけて見つける。

スパイは常に相手の裏をかけなくちゃな。

ただ、1人をのぞいて。

「くそっ……! あと1人だけ逃したか」

1人だけ賢い奴は居住区を離れていた。
どうやら奇襲を警戒して、与えられた家を使わなかったんだ。

「……まあいい、1人なら遭遇率も低い。
 それに俺の居住家とは一番離れているから、来ないだろ」

自分の居住家を捨てたといっても、遠くにはいかないだろう。
俺とばったり遭遇するなんて考えにくい。

「あぁ~~!! これで安心して出歩けるぜ!」

俺は安心して家に帰った。
あとはこの家で残り期間を消化するだけ。

家について洗面所に立った瞬間。

「あっ……そうか、これが足りなかったんだ」

家に最初に入った時の「足りなかったもの」。
それがいまやっとわかった。

「鏡が……鏡がなかったんだ」

洗面所には誰が取り付けたのか、鏡が壁にかけてあった。
その瞬間。


「ううっ!! がっ……ま、まさかウイルス……!?」

俺を危険にさらすのは、ほかの参加者だけじゃなかった。
俺自身も俺を見ることでウイルスは発動する。

だから鏡がなかっ…………


 ・
 ・
 ・




「スパイ合格、おめでとう」

「ありがとうございます」

参加者でただひとり生き残った参加者は、認定証を受け取った。

「最後の最後で、鏡を配置したのはなかなかよかったぞ。
 自分で手をかけずに、相手を消すのはスパイの基本だ」

「光栄です」

「しかし、君は最初に与えた居住家にどうして戻らなかったんだ?」

上官の言葉に合格者はにこりと笑った。



「最初から他の参加者の家に潜んでいれば、
 食事も勝手に調達してくれるし、絶対に安全でしょう?」