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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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2重オークションのオマケ達

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「結婚したいなーー……」

現在30歳。
普通に生活していれば当たり前に結婚できると思っていた。
でも現実はそんなことはなく。

今日も持て余した金をネットオークションで溶かしていた。

「お届けものでーーす」

「あ、来たか」

先週、オークションで買ったゲームが届いた。
さっそくゲームしようと思ったが、箱にはまた別のものが入っていた。


【電車で席が空く】


「なんだこれ? 短冊か?」

オークション出品者が間違って封入したんだろうか。


翌日、いつもの満員電車で変化が起きた。

「空いてる……!」

10年近く同じ時間の電車に乗っていて、こんな瞬間はなかった。
俺の前の席が「座ってください」とばかりに空いている。

すぐさま座って、安息の時間を満喫した。
思い出したのはゲームに入っていたあの紙だった。

その日の夜、家には品物が届いた。
ちょうどオークションで落札したDVDだった。

「また入ってる!」


【髪が伸びる】


「……び、微妙だ」

なんか全然嬉しくないようなオマケだった。
でもしばらくしても俺の髪は全然伸びてこない。

「やっぱりただの偶然の一致だったのかな。
 最初の電車の件でちょっと本気にしちゃったのか」

そう思って押入れを空けた瞬間。

「うわぁぁ!!」

腰が抜けた。
昔拾ってきた人形の髪が、地面につくほど伸びていた。

「伸びるって……こっちかぃ!!」

最近髪が薄くなり始めた俺としては残念だが、
やっぱりオークションのおまけの効力は確実だとわかった。

それからは、オークションの使い方がガラりと変わった。

「これのオマケは……安売りのシーンに出くわす……、買いだな。
 こっちのオマケは、あたり棒を引く……いらないな」

部屋には必要最小限のものばかりだったが
今となってはこけしから読まない本、ラジカセなど

絶対に使わないようなものもどんどんあふれ始めている。
これもそれもどれも、おまけのため。

詳しく調べればオークションのおまけで何があるかわかる。
どれを競り落とすかはそれ次第だ。

「な、なにぃ!!?」

などと語りながらネットサーフして、
今までのおまけを吹っ飛ばす特上の商品があった。


全自動卵わり機
オマケ:【美人の嫁がもらえる】


「こ……これは欲しい!!」

卵わり機なんて粗大ごみ直行だが、嫁がついてくるとなると話は別。
すでにおまけを見越して落札件数はものすごい数に。

「くそ……!! こんなところで競り負けてたまるか!!」

絶対にこの卵わり機を競り落とさなければ!!
欲しいのは嫁だけど!



「君、最近よく働くねぇ。急にどうしたの?」
「最近の仕事ぶりは目を見張るものがあるよ」
「いったい何かあったのかい?」

「俺は、出世して金が欲しいんです!!」

それこそ死に物狂いで仕事をした結果、俺は大出世。
上がった給料はそのまますべてオークションにぶっこんだ。


>あなたが現在の最高落札者です


「お願いだ……もう誰も入札しないでくれぇ~~……!」


祈るようにパソコンの前で手を合わせる。
このままあと10分すぎれば、俺の悲願がかなう。

残り5分。


残り3分……


残り1分……………




>おめでとうございます! あなたが落札者です!!

「うおっしゃあああああああ!!!」

思わず立ち上がって空にほえた。
嫁が手に入る嬉しさと、自分の努力が肯定された喜ばしさ。
それが津波のように一気に押し寄せてきた。

しばらくして、卵わり機は到着した。
1回試してすぐに次の粗大ごみの日に出された。

【美人の嫁がもらえる】

「まだかなまだかなぁ~~……」


うきうきしていたが、一向に来ない。

「ま、まさか……この商品のオマケだけウソとか!?」

怖くなって外に出た瞬間。
サングラスの女性とぶつかった。

「すみません、私ったら道に迷ってしまって……」

「こちらこそ、周りが見えてなくて……」

後に聞いたら、その人は女優だったらしい。
過去形なのは今は俺の妻として女優を引退したからだ。

「お前みたいな美人と結婚できて本当に幸せだよ」

「うふふっ、私もあなたと結婚できて嬉しいわ」

オマケはやっぱり確実だった。
こんなきれいなお嫁さんがもらえるなんて、俺は幸せだ。

「でも、どうして俺みたいな人と結婚する気になったんだい?」

「ええーーそれはね……」




「あなたとの結婚のオマケが、玉の輿ってあったもの♪」

妻はそっと紙を見せた。