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ディフェレント・ワールド-1-

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ディフェレント・ワールド


 人気のない静かな夜道を、男が一人歩いている。
 二十歳の若い男で名前は富山弥月(とやまやつき)、その顔には疲労の色が色濃く浮かび、顔を翳らせていた。
 世間で一流企業と呼ばれている商社に入社して一年。朝早くから出社して、夜遅くに帰宅する毎日。ことあるごとに理不尽な叱責をする上司に加え同僚は皆競争意識が強く、職場の雰囲気は常に険悪である。
 こんな毎日から抜け出したいと常々思っているものの、会社辞める覚悟はない。
 憂鬱なため息が弥月の口から漏れ、自分の耳へと届いた。
 そこで弥月は違和感に気づく。
 静かすぎる……。
 深夜とはいえ、都心の駅へと道のりである。それなのに周囲に自分以外の人の姿はなく、車も一台も通らない。
 人気のない静かな夜道……?
 会社から自宅までの道のりに、そんな道など存在しないはずなのに。
 「ど、どこだ? ここは……?」
 弥月は怯えた声を発した。すると、
 「くふふ──」
 いきなり真後ろから笑い声がして、弥月は慌てて振り返った。
 そこに立っていたのは、美しい少女だった。
 年の頃は十四か十三……あるいはもっと幼い。
 精緻な人形のごとく整った顔立ちに、清流のように柔らかくなびくながい金髪、闇夜のなか真紅に輝く瞳。
 一糸纏わぬほっそりした裸身が、月明かりを受け青白く輝いている。
 幻想的なほどに美しい少女の裸身に、弥月は息をすることも忘れて見入ってしまった。
 そんな弥月に、少女は再び妖しく嗤いかけた。
 「くふふ──アナタは今、ワタシの召喚魔法で〝ディフェレント・ワールド〟へ呼び出されたの」
(──続く──)