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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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2学期デビューはそうそうできない

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「えーーそれでは、明日から夏休みとなりますが
 夏休みの宿題はありません」

生徒全員がきょとんとした。
望んでいたはずのものがこんな急に与えられるなんて。

「その代わり、夏休みの間になにか"自分革命"をしてください。
 自分革命ができなかった人は学校に戻れません」

終業式が終わると、友達と話しながら帰った。

「やったな、宿題ナシだってよ! 遊び放題だ!」

「でも、自分革命ってなんなんだろうな」
「知らね」

夏休みが始まると、例年以上の充実した夏休み。
宿題という重荷がないから後ろめたさを感じずに
毎日毎日遊びまくれる。ビバ夏休み。

「今年の夏休みはホント最高だぜ!!」

「健ちゃん、勉強は?」

「宿題なんてないんだから勉強しなくていーんだよ!」

「でも、1学期の成績は悪かったじゃない。
 夏休みの間に差を詰めるチャンスなんじゃない?」

「あーーもううっさいな!
 なんでオトナはみんなそういうんだ!
 母さんだって休日は仕事したくないだろ!?」

大人にとって子供の夏休みなんてのは、
"ただ学校に行かない日が続く"くらいの認識しかない。
だから、人の気持ちも考えずに勉強なんてスケジュールをぶっこみたがる。

夏休みってのは1学期のストレスを発散して、2学期の備える期間なんだ。

「というわけで、遊びまくるぜ―――!!」



なんてやっていると、もう8月も終わり。
夏休みが終了の前日へと迫っていた。

けれど焦りはない。

「宿題もないから最高にいい気分だ、明日から頑張るぞー」

そういえば"自分革命"とか言っていたな。
まあ、いいか。

翌日、学校に行くと門の場所で止められた。

「待ちなさい。自分革命はやってきたかね?」

「え?」
「やってきたのかね」

こんなトーンで来るとは思わなかった。
"すみませ~ん"と言えばいいくらいだと思っていた。

「自分革命をしてない人間はここを通せません」

ものすごい剣幕の人に門前払いされた。
でも、むしろこれは好都合。

"学校に入れてもらえなかった"という大義名分のもと、
存分に夏休みの延長戦をエンドレスに楽しめる。

「よっしゃーー! まだまだ遊ぶぞーー!!」

2週間もすると、休みが楽しくなくなってきた。
最初こそみんな仕事しているなか休めることに幸せを感じたが、
今となっては焦りや不安しか感じない。

「ど、どうしよう……俺がいない間学校はすでに始まってる。
 こうしている間にもどんどん差をつけられてしまってるかも」

不安で気が気じゃない。
学校に戻った時に自分の居場所がないかもしれない。

「とにかく自分革命をしなくちゃ!!!」

慌てて自分を革命することに。
でも革命って何をすればいいんだ。

まずは髪型を変えてみた。

「そんなのは革命じゃない。ただの変化だ」

ダメだった。
またもや門の前で止められた。

今度は夏休みに時間があることを活かして、
これまでまるで興味のなかった趣味に挑戦してみた。

「待ちなさい。自分革命はやってきたかね?」

「はい、スカイダイビングに深海探索。
 サーフィンに弁論大会、募金のボランティアも!
 自分らしくないことをたっくさんしてきました!」

「ふむ……」

門番がはじめて難しい顔をした。
これはもしかして……。

「小粒だな」

「えっ」

「革命ではない。革命とは大きなひとつの変化であるべきだ。
 お前のは小さな変化を積み重ねただけだ。
 革命ではない」

「もうわからないよぉ!!」

また門前払いをされてしまった。
これではいくらあがいても戻れやしない。

「おかえり、健ちゃん。今日も学校行けなかった?」

「うん、変化の幅が小さすぎるって……」

「お勉強すればいいんじゃない?
 たくさんお勉強して1学期よりも成績あげればきっと……」

「そんな小さな変化で革命として認められるわけないだ……ろ」

いや、その線があった。
まさに天からの声。ありがとうママン。

俺はその日から一心不乱に勉強をしまくった。
今までの自分と比べるのがおこがましいほどに勉強した。
1日28時間くらい勉強した。

学校で習う領域なんてとうに超えて勉強した。

「ね、ねえ健ちゃん。そんなに勉強してどうするの?」

「決まってる。学校に戻るんだ」

「でも、勉強したくらいじゃ革命にはならないんでしょ?」

「うん」

「だったらどうして……。
 それだけ勉強できたら別の学校に行けばいいじゃない」

「大事な友達がいるのはあそこしかないんだ!」




それからしばらくして、俺は学校に戻れることができた。
俺の革命に親も驚いていた。

門番も、
「な、なんだと……!? この期間でそれだけのことを!?
 それは本当に革命だ! 通っていいいぞ!」

ついに閉ざしていた門を開けた。

教室に入ると、俺の変化に誰もが驚いていた。
浮足立つ生徒たちを担任の先生はたしなめた。

「はいはい、全員席につけ。
 今日は全員にニュースがある」

クラスがざわめいた。

「実は、今日からこの学校に新しい先生がやってくる。
 それがこの人だ!」


「佐藤健です。みなさん、よろしくお願いします。
 2学期からは生徒ではなく先生として接してください」


この歳で教員免許を取った俺を見て、クラス中は言葉を失った。


「「「 か、革命だ……! 」」」