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同調率99%の少女(8) - 鎮守府Aの物語

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--- 7 幕間:報告




 視聴覚室の片付けが終わり、那美恵たちは艦娘部顧問の四ツ原阿賀奈を呼びに職員室へと行った。艦娘部顧問が決まって以降は、視聴覚室の借り出しの責任者は艦娘部顧問の名義で行っていたためだ。

「はい。ごくろーさま。で、どうどう?なにか進展あった?」
興味ありげに聞いてきた阿賀奈に、那美恵と三千花は嬉しそうに伝える。
「はい!先生聞いて下さい。なんとですねぇ、川内の艤装に同調出来る人ついに現れたんです!」
「えー!?本当?先生もなんだかうれしい〜。それで誰だったの?」

 人物の名前を言おうとした那美恵だったが、とたんに表情を暗くする。普段は明るい印象しかないことで学校の誰からも知られている生徒会長である那美恵が暗くしていることに、さすがの阿賀奈も気になった。
「どうしたの?何かあった?先生になんでも言ってご覧なさい?」

 阿賀奈は那美恵の隣に居た三千花に目配せをするが、三千花は頭を軽く横に振って那美恵の肩に手を置くだけ。その様子を見て阿賀奈はますます何かあったのだなと察した。那美恵自身が答えるのを待つ。

「実は……」

 那美恵から、今日のその時の状況を聞いた阿賀奈。彼女が凹む理由を理解した。
「そっか。そういうことだったんだ。うーん。それは残念だけど、彼女にもそれなりに思うところがあるはずだし、多分いきなり言われて混乱してるだけだろうから、そこは気長にね。その辺りは光主さん自身も中村さんもわかってるでしょ?」
 那美恵と三千花はコクリと頷いた。ついでに二人が感じたのは、四ツ原先生がすごく先生らしいことを言ってくれてるという事実への驚きであった。
「先生だってあなた達から話を聞いた時驚いたもん。けど、あなたたちは私にお勉強する時間をくれたでしょ? それで先生はね、やっと心の整理が出来て受け入れることができたんだもん。だから職業艦娘の試験も受けに行こうって意欲が持てたんだし。だから内田さんにも少し時間を与えてあげてね?」

「「はい。」」
「よし。よろしいよろしい。」
 自分でも先生らしいことを言って生徒を元気づけている今の様子を誇らしく思い、椅子に座った状態ではあったがふんぞり返って軽くドヤ顔をしてみる。が、那美恵たちは全くなんの問題もなく、スルーする。

 ふと、那美恵は阿賀奈が職業艦娘試験を申し込みに行ったことを思い出して聞いてみた。
「そういえば四ツ原先生。職業艦娘の試験ってどうなりました?いつなんです?」
「うん。なんか定期的に行われてるらしくてね、直近では今週末にあるらしいから、その日で申し込んだの。先生のほうは何の問題もないはずだから、あなたたちは勧誘活動頑張ってね。決して無理に誘っちゃダメだよ?」

 確かに阿賀奈のほうはもう何の問題もないことがわかっていたので、那美恵たちは安心して返事をすることができた。あとは、自分たちの活動だけだと把握した。

「そうそう。このことは先生から提督さんに話しておくね。こういう連絡行為も艦娘部顧問の役目らしいから。」
「はい。お願いできますか?」
「まっかせなさ〜い!」

 せっかく一緒になれそうだった艦娘になれる人を一旦は失って、意気消沈する那美恵。今の心境のまま、提督に自分の口から伝えるとおかしな口調で変に心配かけてしまうと思った。自分の巻いた種の出来事だから、弱音は吐きたくない。艦娘のこととはいえ、学校内でのことなので提督に余計な気苦労をかけさせたくない。提督には、正式に揃った○○高校艦娘部部員、川内・那珂 ・神通で揃って報告にしに行きたい。そう那美恵は決意を胸にしていた。

--

 帰り道、三千花と一緒に帰路についた那美恵は他愛もない話題でおしゃべりをしながらの歩であった。那美恵の口からは、艦娘関連の話題は一切出ない。
 そのあまりにも極端な話題そらしに三千花は僅かに心労を覚える。このオチャラケて明るくて果てしなく強い親友は、その実あまりにも脆い面がある。そのことをわかっていたので、三千花は励ましの言葉をかけようと思って口をそのために動かしかけたが、地雷に踏み込みそうな気がした。こういうとき親友たる自分はあれやこれやと口うるさくせずに、必要なポイントだけでフォローすべきなのだ。
 三千花はすぐにつぐみ、那美恵が出す話題の相槌打ちにその労力を傾けた。


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 その後、阿賀奈から報告を受けた提督は、秘書艦の五月雨と最近よく代わっている妙高、そして明石にメールを転送し那美恵の高校での状況を伝えておいた。

五月雨からのメール
「そうですか。うちの中学とは違ってちょっと大変そうですね・・・那珂さん大丈夫でしょうか?私心配です(>_<)」

妙高からのメール
「他人ごとのような言い方で申し訳ないですけれど、なんだか青春という感じですね。那珂さんには暗い印象は似合わないので、無理せず頑張って欲しいですね。」

明石からのメール
「私たちはすでに艦娘の世界に飛び込んでるから感覚が麻痺してるのかもしれませんね〜。まさに一般の人の反応って感じです。まぁ気長に待つしかないのではないでしょうかね?」

 提督ら鎮守府Aの面々は直接的には外野なので、形の上での心配しか出来ない。
 那美恵たちはもちろんだが、提督たちも、新たな艦娘川内・神通の着任までは、もうしばらく焦らされる羽目になる。