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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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理想の兄弟がほしい!

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昔から兄や妹が欲しかった。
兄弟や姉妹がいる友達がうらやましくてしかなかった。

『兄弟レンタルショップ』

そんな私が見つけたのは1件のサイト。

「なになに……あなたの理想の兄妹を設定できます。
 レンタル料金は1泊100円……。
 まるでレンタルビデオね」

サイトに入るとまずは"素体"を設定する。

「やっぱりお兄ちゃんは私より背が高い人がいいわね。
 妹はやや低いくらいがいいかしら。
 服を貸し借りできる関係になりたいし」

次に兄妹との関係性や、情報を細かく設定していく。

「兄妹間の仲はやっぱりベタ仲良しかなあ。
 二人ともすっごく頭良くて、完璧な兄妹なの。
 わぁ、夢が広がるわぁ」

設定が完了すると、1週間後配達に来るらしい。
うきうきして待つこと1週間。

「ってなんでまだ来ないのよ!!」

やってきたのは、さらに2日後だった。
私以外の利用者がなかなか返却しなかったらしい。

玄関には背が高くイケメンの兄と、
スタイル抜群の女優のような妹が立っていた。

「急なことで驚くかもしれないけど、
 お前には兄妹がいたんだ。俺が兄で」

「私が妹のなの。
 すぐには理解できないかもしれないけど
 よろしくね"お姉ちゃん"」

「理解するする~~♪ さぁ、入って入って♪」

リアリティを追及するのもあってか、
レンタルで借りたというのは隠して"実は兄妹がいた"という設定。

もちろん、二人にレンタルのことをたずねても。

「お前なに言ってるんだ?」
「お姉ちゃんったら変なこと言うんだから」

「あははは、ごめんごめん」

2人はこの疑似兄妹関係を崩さないように配慮してくれる。
もうレンタルショップ、ぐっじょぶ。

ここで"あと2日でレンタル終了です"とか言われると
一気に現実に引き戻されて冷めてしまうところだった。

「ねぇ、せっかくだし兄妹でショッピング行きましょうよ!」

兄妹は快く受け入れてくれた。
私は一番のおしゃれで町にくり出した。

夢にまで見た兄妹との仲睦まじい買い物。
最っっ高!!

「ねぇ、あの兄妹すっごく美人じゃない?」
「本当! 女優と俳優さんかしら」
「でも真ん中だけブスじゃない?」

真ん中って……私!?

道行く人のうわさにそそのかされて、
ショーウィンドウのガラスの前に3人が立つ。
ガラスに映っているのは美男美女……私を除いて。

「しまった……完璧にさせすぎちゃった……」

モデル体型の2人に挟まれた私は、
いっそうスタイルが劣って見えてしまう。

耐えきれなくなって、兄妹をレンタル終了し新しい兄弟を探すことに。

「やっぱり弟がいいわよね。
 年下の男の子がいるのって最高だわ」

今度は最初の失敗もあったので、
あまり"よくできた弟"にならないように調整する。

「できた! これなら完璧だわ!」

到着は1週間とあり、きっちり1週間後に弟はやってきた。


「姉さん……今まで黙っていてごめん。
 実は姉さんには弟の僕がいたんだ」

「あーーはいはい、そういうのいいからわかってるから」

「わかってるの!?」

「慣れっこだしね。いいからあがって」

隠し姉弟設定をスキップして、再び夢にみた姉弟ショッピング。

嫌がりつつも本心は嬉しい弟に服をあてがうのが
もう一人っ子出身としては楽しくてたまらない。

「やっぱり弟が一番ね! 年下だから従順だしっ!」

「姉さん、従順って……」

もっといろんな人に自慢したくなり、
姉弟で手をつないで町中を意味なく歩き回る。

「ねぇ、あの姉弟仲良いわねぇ」
「歳も近そうだし、うらやましいわ」

そうでしょう、そうでしょう。
これこそ私の望んだ姉弟の関係。

「でも、弟の方だけブサイクじゃない?」
「あーーたしかに」
「ちょっと見劣りするわよね」

どこからか聞こえるその声に、慌てて手を放す。

「……姉さん?」

確かに私はあまりかっこよくないように設定した。
そのことで、弟が私の引き立て役になってしまったんだ。

まるで、モデル体型に挟まれた前の私のように……。

そう考えると罪悪感で胸が苦しくなる。
とてもこんな関係を続けられそうにない。

「もう無理! 姉弟なんてもう無理ぃ!!」

慌てて家に帰る。

私は甘く見ていた。
姉弟だって同じ人間なんだ。

人間同士ともなれば、何かと悪い感情も生まれてくる。
そのことを考えてなかった。


レンタルを終了しますか?

>はい   いいえ


「姉弟なんて……姉弟なんてもういらない!」

私はレンタル終了をクリックした。
これで姉弟から解放されたかと思うと、ほっと安心した。

「やっぱり……一人がいいわね。
 誰にも気を使わせないし、気を使わない一人がいい……」


――ピンポーーン


インターホンが鳴り玄関を開ける。
そこにはスーツの男と、私より年下とおぼしき男が立っていた。

スーツの男は頭をぺこぺこと下げて、必死に謝っている。

「大変申し訳ございませんっ!
 ご依頼いただいた"レンタル弟"の配達が遅れました!
 2週間たってしまいましたが、レンタル弟をお持ちしました!」



それじゃ、私がさっきまで一緒だったのは……。