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レイドリフト・ドラゴンメイド 第17話 怒りのギャップ

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 智慧に拘束されたまま、敵と同じような格好で。
【ふざけるな! お前たちに何ができる! 字も読めない、九九もできないくせに! 】
 そして、決意をあらわにした。
【俺の命よ、炎に変われ! 】
 呪文と共にハサミの中で、青白い光が生まれた。
【平和への願いを理解できない野蛮人に、お似合いの罰を! 】
 この光を見た時、その場にいた人々はすぐに何をするのか悟った。
 バルケイダ星に伝わる、特殊な量子・バルケイダニウムが、呪文つまり熱エネルギー増幅異能力を受け取っている。
 同サイズのプラズマより高い熱エネルギーを蓄えることができる、熱エネルギー砲だ。
【させないよ! 】
 そう言って智慧は、ハサミのコントロールを奪った。
 ハサミの向きを持ち主自身に向ける。
 それでも、バルケイダ星人の決意は変わらなかった。
【これだけのエネルギーがあれば、市役所全てを吹き飛ばせる!
 そしてここまでスイッチアの戦乱を長引かせたのは俺の責任もある!
 死して詫びることに恐れなどない! 】
 その光と決断に、異星人たちは喜んだ。
【いいぞ! 野蛮人どもに見せてやれ! 】
 皆、這いつくばったまま。
 それでも声を張り上げる!
【宇宙正義の名において、死刑を執行するんだ! 】
 だがその流れに逆らい、逆転する力があった。

【やめろぉ!! 】
 ジル、1年A組学級委員長。
 テレパシーを送る智慧の視界が、真っ白な光で塗りつぶされる。
 目を閉じても、腕で覆っても見える光。
 同時に、防弾盾の向こうで爆発が起こった。
 狭い空間で起こった爆風は荒れ狂い、立っていた人間を激しく揺さぶる。

 それは、時間にして10秒に満たないことだ。
 光と振動が収まると、智慧は急いで辺りを見回した。
 異星人と、優太郎の姿が見えない。
【ジル、あんた……】
 友には向けたくない、恐怖を込めた言葉。
 優太郎のいた場所に、もう一人のバルケイダ星人がいた。
 ただし、その銀色の甲殻には青いラインが走る。
 バルケイダニウムが、全身に走っている証拠だ。
 盾の向こうを見てみた。
 そこには、5人いる。
 その周りには、誰もいないように見えた。
 だが智慧には、床から放たれる意思が見えた。
 大急ぎで床に顔をつけ、凝視する。
 そこには小さな、手のひらサイズの人影が、いくつも動いていた。
 サーカスの動物たちに施した技術で小さくされた、異星人たちだ。
 智慧は、心底ホッとした。

 ジルの正体は、ハイパーバルケイダ星人。
 異能力をコピーし、凝縮することで強力な異能力へと変える超物質バルケイダニウム。
 ジルはそれを全身にいきわたらせることができる。
 地球人そっくりに擬態することもできる。
 どういう運命のいたずらで生まれたかは分からない、突然変異体だ。
 そしてそのことは、決して祝福されることではない。
 バルケイダ星では、社会にコントロールできない個人は悪なのだ。
 魔術学園には、親から「異能力者がたくさんいる日本で一人で暮らせ」と言われてやって来た。
 そして、学園には彼の様な存在が大勢いる。

 6人のジルのうち、5人の体が青白く光るバルケイダニウムに変わり、盾の向こうに居た一人に吸収されていく。
 分身の術だ。
【さあ、捕まえますよ】
 そしてジルの人間に似た手は、足元のバルケイダ星人をつまみ上げた。

 この様子を、テレビモニター越しに見ていた者たちがいた。
(まるで、SF小説のようだ。いや、こんなデタラメな構成の小説などない。
 これは現実だ)
 シエロ・エピコス少年兵の心は、荒海のように乱れていた。
 彼は、シェルターにいるはずの父、ヴラフォス・エピコス中将が現れるのではないかと探した。
 だが、SAT以外に表れる者はいなかった。

 シエロがいるのは、真脇 達美にあてがわれたキッスフレッシュSMBVRKE(シムブバーク)対策車の中。
 SMBVRKE(シムブバーク)対策車の意味は、Science:科学兵器・Magical:魔法戦術・Biological:生物兵器・Void:真空・Radiological:放射性物質・Kaiju:怪獣・Explosive:爆発物・対策車両。
 ウォータージェットエンジンにより、水上移動もできる。

 その兵員輸送スペース、というより、イスのついた荷台。
 そこでシエロは、恐怖で打ちふるえながらも、背を伸ばして椅子に座り、視線をぶらさずにいる。
 これができるのは、チェルピェーニェ共和国連邦陸軍士官学校の厳しい訓練のおかげだ。
 シエロが思いだす、赤レンガの校舎での厳しい訓練。
 吹雪く雪山での行軍。
 荒海での遠泳。
 脱水症状と、それぞれに違った危機が待つ熱帯雨林と砂漠。
 自然という人間ではコントロールできない自然環境と、人を殺すという究極のストレスを学んだからこそ、魔術学園高等部生徒会ともスムーズに意思疎通ができ、今も取り乱さずにいられるのだ。
 シエロは、そう思いたかった。

 実際には、表情をおさえるため、かみしめ続けた奥歯が痛い。
 心臓はエンジンのように唸り続け、顔は火がでそうなほど、熱い。
 額から気持ち悪い汗がでてきた。
 握りしめた手は血が流れなくなって白い。
 ゆっくり手を開き、血を巡らせる。
 だが、銃もない状況で、これが何の役に立つのか?

 向かいに座る、カーリタース・ペンフレット。
 普段の彼なら、とっくに恐怖のあまりおかしくなったはずだ。
 いや、おかしくなっている。
 今おとなしく座っているのは、赤いベレー帽をかぶっているからだ。
 この太った科学者少年は、ベレー帽をかぶると美しい物にしか賞味を持たない、冷静な人物になる。
 シエロから見れば、それは我が国の独立には役に立たない存在だ。

 目の前の光景は、シエロの十八年の経験をはるかに超えていた。
 視界を埋めるのは、無数の立体映像モニター。
 それを食い入るように見つめる、地球人と未知のテクノロジーを使う者たち。

 口元に牙の彫刻が入ったマスクをつけた少年少女。
 背の低いメカ少年、都丹素 巧・レイドリフト1号と、銀髪のスレンダーな魔法少女、狛菱 武産・レイドリフト2号が見るのは、今シエロ達がいるチェ連製量子世界の地図だ。
 そこに、敵味方を示すアイコンが書き込まれ、駆けまわっている。
 シエロは、アイコンという言葉は知らず、点だと認識している。
 赤い点が敵・チェ連で、緑の点が味方・PP社だと予想した。
 その地図を、2人は叩いたりなでたりしている。
 スマホやタブレットのタッチパネルと同じ動きだ。
 そのたびに小さな立体映像が現れたり、文字や数字が現れたりする。
 小さな立体映像は、戦場のど真ん中で撮影された映像と音を送っていた。
 兵器や兵士が撮影し、送ってくる情報。
 IT技術が進歩しなかったチェ連の電子機器では、多数の情報を並列処理することさえできない。
 成れないながらも映し出される状況を見ると、勝負は決したように思えた。
 PP社の自社製品であり、人のイマジネーションをすべて受け入れる性能を秘めたドラゴンドレス・パワードスーツ。