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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「時のいたずら」 第十二話

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「甘くて美味しいです。これはこちらの名物なのですね」

「そうだよ、藤。ここへお参りに来た人はみんなここで食べてゆく。ここの赤福餅は全国で売られているけど、作り立ての温かい餅は作っているところでしか食べられないんだよ」

「それは幸せです。このように大勢の人たちがお参りに訪れ、このような甘いお餅を食べられるなんて平穏な時代なんだと感じられます」

「日本人は大きな戦争を経験して国民のみんなが痛みを知ったんだ。70年ほど前にその戦いが終わって新しく平和を願う国家づくりが始まって、一人一人が戦うことを放棄して農業や工業などの発展と世界から信頼される日本に生まれ変わることを誓ったんだよ」

「崇高な理念だと思います。権力争いは気がつけば力の弱い女や子供が犠牲となります。
勝ってもまたその地位を脅かすものに怯え、あらぬ疑いをかけて追い払い将来に禍根を残します。そのような歴史が絶たれたことは喜ばしいことだと感じました」

「藤はしっかりとした教育を受けているね。式部の影響なのか?」

「お恥ずかしいです。優斗さんのお話はとても分かり易くて藤は日々学習をさせて戴いております。式部様のお話し相手としての時間が知らず知らずのうちに身についたものと思われます」

「そうか、源氏物語を書いたような人だからそうだろう。さてお腹が空いただろう。昼を済ませて早めに宿に向かおう」

優斗はおかげ横丁にある麺類の店で昼食を済ませて、今日の宿鳥羽ホテルに向かった。少し高台に位置しているホテルは海の幸と松阪からの牛肉をメインに宿泊客を満足させる老舗として有名であった。

部屋に入ってくつろぎながら優斗は話を切りだした。

「藤が話したいと言っていたことは何だい?」

「ええ、わたくしは自分が、気が付いたら暗闇の中でかすかに見える明かりを頼りに表の世界へ出たいと彷徨うようになっていました。何度か試みましたがそこから外には出られませんでした。相手からは姿が見えたのでしょう、何度か幽霊と間違われて逃げてしまわれました。
何度も経験しているうちに気付いたんです。出口が遠くそして小さくなっていることをです。あの時思い切って優斗さんに声をかけて抜け出したいと強く思いました。そうしないと永久にここに閉じ込められてしまうと恐怖が襲いました」

「それで悲痛な叫びに聞こえたのか。でもどうして日常生活からそんな世界へ入ってしまうことになったのか解らないよ」