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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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ビルババ抜きゲーム

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東京都内の地盤が浮き上がり、都民の誰もが完全に隔離された。
そんなトンデモ事態になっていたことに気付いたのは、
俺が『株式会社ラブ10』の社員食堂でのんきに飯を食っていたとき。

『大変です! 東京都だけが浮き上がっています!
 ヘリも飛行機も来れません!
 あっ! あれを見てください!』

中継された映像では、
都内のビルがさらに地上から抜きあがりどこかへ飛ばされる。

『ビルが……ビルがどんどん引き抜かれています!
 まるでババ抜きをしているかのようですっ!』

リポーターが必死に伝える上のテロップには
何度も同じ注意が表示されていた。


『絶対にその場から動かないでください』
『絶対にその場から動かないでください』
『絶対にその場から動かないでください』



「って、そんなこと言ってる場合か!」

慌てて外に出ると、コンクリートが割れて断崖絶壁。
帰る手段と言えば、すっぽ抜かれていくビルにしがみつくしかない。

そして、またひとつ近くのビルと
遠くのビルが浮き上がりどこかへと飛んでいった。

「……くそっ! 引き抜かれて飛ぶまでが早すぎる!
 とても捕まっていくとかいうレベルじゃない!」

考えられるのは選ばれるビルに入ること。
でも、どういう基準で2つのビルが選ばれて飛ぶのかもわからない。

「くそっ! いったいどうなっているんだ!」

また2つビルがペアになって引き抜かれる。

「あのビル……たしか前に取引した
 『六菱ビル』じゃないか!」

独り言を言った瞬間、やっと規則性に気が付いた。

「わかったぞ! 選ばれるビルは名前に
 トランプの記号か数字が入っているんだ!」

次も、次も、その次も。
引き抜かれるビルの名前には同じ特徴があった。

「こうしちゃいられない!
 SOMYって会社名のビルじゃいつまでたっても選ばれない!
 別のビルに行かなくちゃ!」

慌ててSOMYビルを出て、
名前に模様もしくは数字が入っているビルを探す。

それは難しいことじゃなかった。

「ほっ、ここなら大丈夫だ。
 ここは『spade12ビル』だから、完璧だ」

ビルの名前に数字も入っているし、
幸運にも名前は『スペード』も入っている合わせ技。
これで選ばれない方がおかしい。

俺はゆっくりと高みの見物で脱出のときを待った。

「……でも、なにか変だな」

この胸の違和感はなんだろう。
なにかおかしい気がする。

俺は自分の行動を巻き戻って考え直した。

「都内でトランプのマークをモチーフにした名前のビルは多い。
 名前に数字が入っているビルなんてもっと多い。
 見つけるなんて簡単だった……」

地図を開くまでもなく、アプリで検索するまでもなく。
一歩道路に出れば、該当するビルはいくらでもあった。

探すのはあまりに簡単だ。
都内を空に浮かせるほどの手間も惜しいくらい難易度は低い。

"ビルばかり引き抜かれてる"と気付きさえすれば、
どこかテキトーなビルに入っても脱出はできる。


本当にそれが脱出口だとすれば……。


「まさか! ビルと一緒に引き抜かれても、
 脱出できないんじゃないか!?」

ペアとなって引き抜かれたビルは浮き上がり、
そのまま超高速でどこかへ行く。

無事に地上へと戻ったのを見たわけじゃない。

「いやむしろ、引き抜かれるビルよりも
 ババ……つまりジョーカー役のビルを見つける方が難しい!
 そっちが本当の脱出先だ!」

この街でたった1つだけあるジョーカービル。
それはどこか。

……。


…………。

……………………。


「……ひるず」


「そうだ! 七本木ヒルズだ!
 あのビルは支店もなにもない! ペアがいないビルだ!
 ジョーカービルに間違いない!!」

俺は六本木ヒルズへと急いだ。

その移動のさなかにも、閉鎖された都内からは
ビルが大根のように引き抜かれていく。

間に合え。
間に合えっ。

「間に合えぇぇぇぇ!!」

俺はなんとかすべてのビルが引き抜かれる前に、
立ち入り禁止線をブチ切り七本木ヒルズへとすべりこんだ。


「はぁっ……はぁっ……よかった。
 ここがジョーカーに違いない。
 ビルババ抜きが終わる前に到着したぜ……!」


きっと、すべてのビルが引き抜かれれば
このビルだけが地上へと戻るはずだ。


ゴゴゴゴ……。


「ほら来た。ナイスタイミング。
 やっぱり俺の考えは正しかったんだ!」

窓から見える風景がどんどん変わっていく。
地上へ降りるどころか、どんどん高度を上げていく。


「そんな……!! ウソだろ……!
 ここはジョーカービルじゃないのか……!?」


空に浮く東京都からさらに高く上っていく。

すると、東京都から切り離されたように
ぽつんとビルが1つだけ浮いていた。


「あのビルは……ウチの……。
 『株式会社ラブ10』の支店ビル……はっ!」


やっとわかった。
最初からジョーカーなんてなかった。



「このゲームはジジ抜きだったのか……!」

ヒルズビルは空の彼方へと消えた。