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雨の季節

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ここのところ雨の日が続きいよいよジメジメと鬱陶しい梅雨の季節がやってきた。

雨は嫌だなと思われる人も多いが、雨は雨の楽しみ方があり、私はそれも嫌いでは無い。
例えばカフェのガラス窓を伝う雨粒を見るとも見ないとも眺めながら時間を潰し飲むコーヒーも良いものだし、土砂降りの雨がルーフを叩きフロントグラスを滝の様に流れるのをフォルテシモの打音に包まれた車内で眺め、少し恐怖を感じるのも悪く無く、カタン、カタンとリズミカルな音を立てメトロノーム様に左右に動くワイパーアームは雨の日しか味わえない。
今はほとんど見なくなった番傘や蛇の目を差すと、和紙を打つパラパラという音を聞きながら寺へ行くのも一興で、軒先から落ちた雨だれが雨落溝の玉石を跳ね踊るのもこの季節ならではの楽しみで、それは洋傘では味わえない和傘ならではの独特な雰囲気だ。
シトシト降る雨なら池や水たまりに同心円に広がる波紋を感じるのもいいし、凛と咲く花菖蒲もよろしい。

梅雨といえばなんと言っても紫陽花が似合う。
毎日歩いている小径に植えてある紫陽花が大きな花を咲かせ出した。


先日まで晴れが続き水欲しさからか膨れた頭を力なくうな垂れてたが、この二、三日の雨で元気に背筋を伸ばし生き生きと大きな花を沢山咲かせている。花や葉っぱに玉になった雨は恵みの雨への嬉し泣きの涙か?

春ハラハラと散る上品な桜や甘く香しい香りを放つ華やかな薔薇であっても、たっぷりと水分を含み近くの山が白く霞んで見える、この雨の時季は似合わず、主役は紫陽花に譲るしか無い。
赤や青、それに白、鞠のようや花火のような花たちは、「今は私が主役なの」と見栄を切っているようで大きな株の深い緑の大きな葉をバックに咲く姿はまるでステージに揃う混声合唱団の様にも見える。

花にまとわりつく蜘蛛の巣に雨粒が風に揺れてキラキラ光るのはネックレスかティアラのようで、それは立派な主演女優。

ストレスを貯め文句言いながらお金を稼ぎ、わざわざどこか行かなくても、少しは見方を変え自分の中でイメージすればその辺に有るものでも十分楽しめ幸福感を味わえる。
与えられるものでは無くどう捉え楽しめるかでそれは決まる。問題はそれを感じられるかどうかだ。


楽しきかな雨の季節
作品名:雨の季節 作家名:のすひろ