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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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伝説の薬剤師 vs ネット依存症

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ネット依存病棟。

社会から隔絶されたその病棟には
数多のネットゾンビへの治療に取り組んでいた。

「様子はどうだった?」

「ダメっす。ネットから切り離した生活をさせても、
 彼らの頭にはネットしかないッスね。
 サクッと解決する方法はないもんッスかね」

「地道に治療を進めよう。
 すぐに答えを得ようとすれば、足元をすくわれる」

「でも、もう手の打ちようがないッスよ。
 いっそググって……」

「バカ! ここはネット隔離病棟だぞ!
 ネットなんか使ったらこっちまで……」

「わかってるッス! わかってるッスよ!
 ジョーダンじゃないッスか、マジにならないでくださいよ」

後輩にカッとなってしまった先輩は自分の言葉を反省した。
先の見えないゴールと、成果の出せない治療。
自分でも気付かないうちに焦っていたのかもしれない。

「俺は患者の様子を見てくるよ」

先輩は患者の下へと向かった。




「ああああ! きっとコメントが来ている!
 ブログを見なくちゃ! 日記を書かなくちゃあぁぁ!!」

「友達からいいねが来ているはずなの!
 自撮りをアップして、いいねされないと死んじゃうーーー!!」

「は、配信しないとランキング抜かれてしまう!
 私のニコ生配信を待っている視聴者がいるんだぁぁーー!」

患者の様子を見て先輩はうなだれた。

「……成果なし、か……」

ネット依存症になり幻覚すら見えるようになった患者たち。
自らの意志でここに来て、ネット断絶生活がはじまったものの
隔離治療のかいもなくこのザマだ。

「もうここも終わりかもしれないな……」

成果を出せなければ、援助金は滞ってしまう。
そうなれば経営もできなくなり、依存者はそのまま元の生活へ戻る。

研究者としては、なんとかして治療したいが
国からは「成果を出せ」と期限まで指定されてしまっていた。

でも、患者を診た様子ではとても残り時間で
ネットから離れた真人間になれる兆候はこれっぽっちもない。

「いや、諦めるわけにはいかないな。
 最後まで後輩と一緒に研究を進めていこう」

先輩は自らを鼓舞して後輩の下に戻った。


部屋には明かりがついていなかった。
けれど、部分的に青白い光が人影を照らしていた。

先輩は背筋がぞっと冷えるのを感じた。

「おい、後輩! なにをして……」

「あははは……先輩、ネットはなんでも知ってるんッスよ……。
 だからもっといい治療の方法があるはずなんだ……。
 あは、あははは……」

「お前が見てるサイト……アダルトサイトじゃないか!!」

「あ、あれ? おかしいな、あは、あははは……。
 確かに治療方法を検索していたのに……」

「お前、まさか……!
 『調べものをしているはずが気が付いたらエロサイトに行っていた病』に!?」

後輩をパソコンから引っぺがし隔離した。

成果を上げるためとはいえ、答えをネットに求めてしまった後輩は
答えの出ないネットサーフィンをしている結果
『調べものを(中略)エロサイト病』を発症してしまった。

またこの隔離病棟に"患者"がひとり増えてしまった。


「もうだめだ……。
 1人では研究もできないし……。
 いっそ、俺もネットを使って依存症になろうか……」


質問サイトで答えを聞けば何かわかるかもしれない。
チャットサイトで質問すれば何かわかるかもしれない。

自分もネット依存症になるリスクを差し置いても、
この状況を打開する可能性が目の前にあると思うと……。

「ああ……もうだめだ……」

先輩はついにネットへと手を出した。


「諦めるのはまだ早いぞ!!!」

扉を開けてやってきたのは、白衣をはためかせたドクターだった。

「あなたは……!?」

「私は世界でも有数の薬治療の専門家だ。
 ここで重度のネット依存所患者たちがいると連絡を受けて
 治療のためにやってきたんだよ」

「まさか……!」

犯人は後輩だった。

後輩は自分がネット依存症になることを知りながら、
世界でも権威のある薬治療のドクターをここに呼び寄せた。

「あいつ……これじゃ先輩の立つ瀬がないじゃないか……!」

「私が来たからにはもう安心です。
 私に治療できない病気はないですから」

「お願いします!!」

「任せておけ!!」

ドクターは患者の下へと走っていった。



翌日、患者全員の治療が完了していた。

あれだけネットに依存していた患者たちは
ネットの「ね」の字すら口に出さないようになっていた。

「さすがドクターです! 素晴らしい!
 本当に、ほんっとうにありがとうございます!!」

「最高の薬剤ドクターの私に治せない病気はないといったろう。
 彼らはもう二度と前のようにネット依存することはない」

先輩はその言葉に安心した。
そして、悪いなく好奇心で1つだけ質問をした。

「それで、どんな治療をしたんですか?」





「ああ、彼らのネット依存先でこっぴどく批判したんだ。
 するとブログもSNSもニコ生も、
 二度とやりたいなんて言わなくなったよHAHAHA」

「薬じゃねぇのかよ!!!」