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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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地球の国境警備さん

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「お前が新人の入星審査官か」
「はい、よろしくお願いします!」

俺は先輩に深々と頭を下げた。

「いいか、入星審査は楽な仕事じゃない。
 得体のしれない奴を地球という惑星に入れないように
 水際で止める大事な仕事なんだ」

「なるほど。素性調査は大事になるんですね」

「ああ、私は1度だけ判断を見誤り
 敵対宇宙人を地球に入れてしまったことがあってな」

「そ、そうなんですか……」

「どんな生物にも姿を変えられるやつだったんだ。
 奴らは主食が石油で、地球の資源が食いつぶされてしまったんだ」

先輩は過去を思い出して顔が暗くなる。

「いいか、お前が新人だろうがなんだろうが、
 ミスをすれば地球が危機になることを肝に銘じておけ」

「はい!!」

入星審査の窓口に立つと
エイリアンたちがパスポートを持って列を作る。

記念すべき初入星審査だ。

「渡航目的は?」

「仕ご……あーーいや、観光です」

見た感じ悪いエイリアンではなさそうだ。
パスポートも素性も大丈夫だし、手荷物もOK。

「どうぞ」と言いかけたところで、先輩の言葉が頭に浮かんだ。


"ミスをすれば地球が危機になる"


「そうだった。やりすぎることなんてないんだ」

俺はエイリアンスキャナーで、エイリアンの体の中身まで見る。
すると、体の中に強力な武器を隠し持っていた。

「お前! 地球侵略が目的だな!」

「ちぃ! ばれちまった!」

入星審査のゲートを閉じて、エイリアンを地球から守る。
危なかった。
あのまま雑に通していたら大変なことになっていた。


次のエイリアンがやってきた。

「渡航目的は?」

「仕事トロ―イ」

語尾が気になるエイリアンだったが、
体の外も中も含めて問題はなかった。

「はい、大丈夫です。どうぞ。
 次の方――」

また次のエイリアンがやってきた。
しっかり確認しても問題はない。

最初のエイリアンだけが特別なのであって
他のエイリアンはそうそう侵略とか考えないのだろう。

「はい、大丈夫ですよ。楽しんでください」

「わかったデスー」

こっちも語尾が気になったが、個性として流すことにした。
その後も入れ替わり立ち代わりでエイリアンはやってきたが、
特に問題ないまま休憩時間を迎えた。


「新人どうだ、初仕事は?
 変な奴はちゃんとはじいたか?」

「はい。最初に1匹いましたけど、それ以外は大丈夫でした」

ふと休憩スペースのテレビを見ると、緊張放送が流れていた。

『突如、地球にやってきた宇宙人による侵略が激化しています!
 市民のみなさんはシェルターに避難してください!』

慌てるリポーターの横には、
侵略しているエイリアンの画像が映し出される。

『語尾は特徴的で"デストローイ"というそうです。
 見つけたらすぐに逃げて下さい!』

「あっ……」

その画像には見覚えがあった。
俺が通したエイリアン2匹が合体した姿だった。

「おい新人。お前何か知ってるのか!?」

「このエイリアン……俺が通したんです。
 まさか、入星審査後に合体するなんて……。
 1匹1匹はぜんぜん問題なかったのに……!」

奴らは賢かった。
語尾が特徴的なエイリアンは自分を分裂させて
敵エイリアンだと思わせないまま審査を通過させる。

そのあと、合体すればいい。

甘かった。
あの時、語尾に違和感を感じて引き留めていれば。

「ちょっと俺行ってきます!」

「行ってくるって、何をするきだ新人!?」

俺は最初に入星を断ったエイリアンのもとに走った。


「そこのエイリアン!
 特別に入星審査を許してやる!」

「え? さっきは断ったじゃないか。
 体の中をスキャンまでしてよぉ」

「さっきはさっきだ! 特別に許可をする!」

敵対エイリアンも断る理由がないので、
嬉しそうに地球へと入っていった。

それを見た先輩がすっ飛んできた。

「新人、お前なにしてる! 正気か!?
 地球が危機の時に、敵対エイリアンを招くなんて!!」

「わかってます! でも地球を救いたいんです!!」

「はぁ!?」

俺が通したエイリアンは地球に入ると、
侵略活動を始める前に、すでに侵略中のエイリアンとぶつかった。

「誰だお前はデストローイ」

「そっちこそ、地球を侵略するのはワレワレだ!」

地球を取り合ってエイリアンは大規模な戦いへと発展した。
その結末は地球の勝利に終わった。

「お前、あえてエイリアンを招き入れて……。
 エイリアン同士を戦わせて疲れさせたところで
 地球の反撃で撃退するって作戦だったのか」

「はい。俺の惑星を誰にも渡したくなかったんで」

先輩は俺の頭をこぶしでこつんと叩いた。

「やれやれ。入星審査官としてはダメダメだが。
 人としては満点だな」

「ありがとうございます!」

先輩が去っていくのを見届けた。



俺は誰も見ていないことを確認して人間の姿を解除する。

「はぁーーおなか減った。
 さて、地球で石油でも食べくるか」

人間の姿に化けているととにかく疲れる。
石油も食べたくなるし。

それでも、人間に化けてまで入星審査官になってよかった。

「まさか入星審査官が敵対エイリアンだとは思わないだろう」

俺は審査ゲートをチェックなしで通って行った。