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大石 りゅう
大石 りゅう
novelistID. 59714
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風の皇子 タケハヤ その一、旅立ち

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「お~い、タケハヤ!お客さんだど~っ!」
時は、中国大陸で、周王朝が、殷王朝を、滅ぼしてた頃。オラは、豊葦原の瑞穂の国の、北の際果て、ツガルの郷で、せっせと、苗代つくりに、精を出していた。
「な~んだぁ、うね男!大きな声で。」
と、同じ村の、うね男を振り返ると、顔が、赤い。うね男は、興奮したようすで、
「あったり、めぇだぁ。おめぇの、姉ちゃんが、おめぇを、訪ねて、来たど~。いんやぁ~、ビックラ、こいただ!おめぇの姉ちゃんてば、めんこいなぁ~!!」
「何ィっ!姉ちゃん!?ヤバイっ、こうしちゃおられねぇ、『風渡りの術』っ!」
「うっひゃ~!!タケハヤ、おめぇ、あに、するだぁ~・・!お~い、おめぇの、兄ちゃんも、来とるど~っ!村長の、家だぁ~っ!」
オラの得意の術、身体のまわりの空気を、振動させて、竜巻を起こし、高速移動する、『風渡りの術』でのあおりをくらって、後ろに吹っ飛んだ、うね男のことなど、気にもせず。
オラは、波打つ葦原を、飛び越えて、せっせと苗代づくりに精を出す、村人たちの、早春の、ツガルの郷を、眼下に見下ろし、姉兄の待つ、ツガルの、村長の家へと、気持ちは、焦るばかりだった。そして・・
びゅ~ちょっ!!がらがら、どっか~んっ!!
「うわっ!?どっひゃあ~!!!!!」
勢い余って、村長の家の、門やら、壁やら、ぶっ壊して、オラは、勢いあまって突っ込んで、しまった。

 ガレキの山に埋まって、うんうん云ってる、オラを、助け起こす者があった。
「相変わらず、そそっかしいのう、タケハヤ!」
「夜中比古(ヨナカヒコ)兄ちゃん!」
懐かしい声は、涼しげな目元と、筋肉質だが、スラリとした、長身の、美丈夫の異母兄、ヨナカヒコだった。
「ほんにのう・・、相変わらず、元気の良いこと・・。村長、申し訳ございませぬ。後で、我らの術にて、元通りに、しておきますゆえ、お許し下さいましね。」
「ひ、日女(ヒルメ)姉ちゃん・・。」
たおやかな、優しい声は、すずを張ったような、ぱっちりとした、黒目がちの、少し目尻の切れ上がった、美しい瞳の、健康的な、古風な美女の、異母姉である、ヒルメのものであった。
ツガル村の村長の、新稲方翁(ニイガタオウ)が、恐縮しながら、言った。
「エエがら。えれえ、神さんの、お子さんがたに、すんな、下しごと、させるわげには、いかねぇだす。すのまんまに、してくんろ。」
「申し訳、ないですねぇ。迷惑ついでに、少し、お人払いを、して貰えませぬか?タケハヤと、少々、込み入った話を、致しますゆえ。」
「へぇ・・。分かりましただす。」
白髪の、腰の曲がった、ニイガタオウが、よちよちと、部屋から出て行くと、ヒルメと、ヨナカヒコの二人は、おもむろに、懐から、何かを、取り出した。
 ヒルメが取り出したのは、゛天の勾玉(アマノマガタマ)゛と、呼ばれる、黄金色に輝く、先の曲がった、玉で、その形状は、絹の材料となる、繭を作りだす、聖なる昆虫、蚕の姿を、モチーフと、したものだった。
ここで、説明せねば、ならない。
 
 日本古代神話は、語る。八百万の神とは、天空を駆け、海を渡り、あまねく光を与える、数々の、神秘を、起こしたと。それも、そのはず、八百万の神とは、地球を離れて、何憶光年、「天孫星」という、異星(とつほし)の、生命体、つまり、宇宙人であった。天孫星は、すぐれた科学技術と、「精神魔力」と、呼ばれる、特殊技能が発達した、星であった。「精神魔力」とは、現代風に云うと、「魔法」「超能力」のようなもので、その名のとおり、精神の力で、さまざまな現象を起こす、技能であった。
 
 例えば、先ほど、オラが使った、「風渡りの術」。地球人であれば、念じるだけで、回りの空気を、高速振動させることなど、不可能だし、空気を高速振動させると、竜巻が起こる、などと云う、科学知識など、当時の地球人には、なかった。
 
 紫外線に、極端に弱い性質を持つ、天孫星人にとって、紫外線から、肌を守る性質を持つ、絹の衣服を、身にまとうことは、命に関わる、重大な義務だった。その為、その当時の、国策であった、養蚕事業は、後の世にも、伝わって、聖徳太子も、憲法十七条の、第十六条に、「蚕を育てなさい」と、謳ってある。
 ヒルメが、何事かつぶやきながら、゛アマノマガタマ´を、振りかざすと、その姿が、黄金色の光に、包まれて、陽光の如き、光り輝く、黄金の髪に、琥珀色の瞳の、神人に、変化した。同様に、ヨナカヒコが、取り出した゛月読の鏡(ツクヨミノカガミ)゛に、自らの姿を映すと、その姿は、白銀色の光に包まれ、月の光を映し取ったかのような、白銀色の髪に、薄く氷を張った、冬の湖のような、淡く透明感のある、青水晶のような、瞳の、神人に、変化した。
「ずっと、人間っぽい姿をしてるのは、疲れたべ?天照大御神(アマテラスオオミカミ)さま、月読命(ツクヨミノミコト)さま。」
そう、オラのたった二人の、姉兄とは、この、瑞穂の国を治める、神の中の神、アマテラスオオミカミと、ツクヨミノミコトであった。の、だが・・。
「くおら。タ・ケ・ハ・ヤ~ぁ・・。」
「ひ・・。」
アマテラスは、黄金色に光る眼で、きっと、オラを睨みつけると(美人なだけに、すごい迫力)、
「アンタは!!どこまで、ヒトを、待たせるね~んっ!オラ、オラ、オラァ~っ!!」
「ひぇぇ~っ!!イタイの、キライっ!やめて、許してっ、アマテラ姉ちゃん!!」
オラを、死ヌまで、どつきまわした。アマテラスは、その日によって、様々に照り方を変える、太陽のように、気分が変わりやすく・・まぁ、つまり、ヒステリーだった。これが、オラが、急いで、アマテラスたちの元へ、向かった理由なのだが・・。意味が、なかった。
「まぁまぁ。姉じゃ。時が移る、その程度で、止めたら、どうじゃのう。・・・のう、タケハヤ、そのような、堅苦しい名前で、呼ばずとも、本名の、゛ヒルメ゛、゛ヨナカヒコ゛で、よいのだぞ。」
ツクヨミが、苦笑しながら、間に入った。ツクヨミは、静かに輝く、月のように、もの静かで、冷静な性格をしており、オラと、アマテラスの、良き、仲裁役だった。

八百万の神の名は、多くは、役職名を、表したものである。例えば、゛天照大御神゛は、総理大臣と気象庁長官を、兼任したような役職で、主に、政治と、農耕民族であった、瑞穂国民にとって、何よりも大切な、゛太陽゛の運行を、ある程度まで操り、気象を正確に予報すると云う、要職であった。゛月読命゛は、天文学博士と、月の、満ち欠けによる、太陰暦を、司る、現代では、あまり、重要視されていないが、これもまた、農耕民族にとっては、大切な、暦(こよみ)による、種まきなどの、正確な、時期を測る、と云う、要職であった。


「確かにのう、このような、みちのくの村にまでは、我らの容姿は、伝わって、なかろうから、あらぬ誤解を、避けるため、出来るだけ、黒髪黒眼の、この国の人間らしい姿で、通そうと、思ったのじゃが・・。さすがに、こう、長い間、酸毒物質(オゾニウム)にさらされるのは、つらいものがあるのう。」