小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

ご覧のスポンサーの提供で悪を倒す!

INDEX|1ページ/1ページ|

 
「わははは! この程度でもう終わりか!?
 宣伝ヒーローというのは実に歯ごたえがないなぁ!!」

宣伝ヒーローは追い込まれていた。
悪の組織の資金源を断つために挑んだ戦いだったが、
圧倒的な力の前に膝をついて立ち上がる元気もない。

「我らの資金源の謎を解明するとかほざいていたが
 この程度の攻撃で根を上げる程度の貧弱な奴ではムリだな!
 さあ、このまま何もせずに死んでいけぇ!!」

今にも攻撃されるその瞬間。
ヒーローは懐に忍ばせていた魚肉ソーセージを思い出した。

「はっ! そうだ! 私には
 『戦隊ヒーローのおまけが抽選で当たる
  成長期のお子様の成長を助けるソーセージ』があった!」

魚肉ソーセージをかじると、
みるみる宣伝ヒーローは元気を取り戻した。

「『戦隊ヒーローのおまけが抽選で当たる
  成長期のお子様の成長を助けるソーセージ』 定価280円
 の栄養で、力がみなぎってくる! さあ、覚悟しろ!」

「な、なにぃ!?
 その栄養価でわずか280円だとぉ!?
 それでは世のお母さんが子供に買い与えても安心な価格じゃないか!!」

宣伝ヒーローは必殺武器の銃を取り出し、
専用の弾丸をセットする。

「遊びは終わりだ!
 この『宣伝ヒーローガン』定価1500円(税別)で貴様を打ち抜く!

 弾丸は、全国のスーパーにあるガチャガチャから手に入る
 『宣伝ヒーロー弾』シリーズを装填してなぁっ!」

「や、止めろ!
 1回200円のガチャガチャで手に入る『宣伝ヒーロー弾』で撃たれれば
 どんな怪人もたちどころにやられてしまう!」

「必殺!! 宣伝ヒーローブラスター―!!」

宣伝ヒーローの放った閃光が怪人を貫いた。
怪人は爆散し、世界の平和は保たれた。

「今日の戦いは厳しかった……。
 『戦隊ヒーローのおまけが抽選で当たる
  成長期のお子様の成長を助けるソーセージ』と
 『宣伝ヒーローガン』と『宣伝ヒーロー弾』がなければ勝てなかった」

宣伝は海に沈む夕日を眺めながらしみじみと語った。

「これで悪の組織の資金源を断って、壊滅させることができるはずだ……」

怪人カネスキーを倒すことができた翌週に、
今度は新しい怪人が現れたので宣伝ヒーローは向かった。

そして、いつものように宣伝ヒーローガンで蹴散らした。
……そのはずだった。

「ぎょぎょぎょ。そんなへなちょこビーム、効かないぎょねぇ?」

「な、なんだって!?
 全国のおもちゃ屋さんで売られているこの宣伝ヒーローガンが効かない!?」

宣伝ヒーローは持っている銃を確認すると、
パワーが著しく落ちていることに気付いた。

「な、なんで……!?
 いったいどうして……!?」

原因がわからずに呆然としている宣伝ヒーローを
悪の組織が許すはずもなく、宣伝ヒーローはタコ殴りにされて敗北した。

「うう……いったい何が起きているんだ……」

宣伝ヒーローは自分の武器が使い物にならなくなった原因をさぐるべく
博士のもとを訪れた。

「博士、実は宣伝ヒーローガンの調子が悪いんです。
 パワーがダウンしてしまって、敵を倒せません。
 いったいなにが原因なんでしょう?」

「ふむ……これは……」

博士はいろいろ分解しながら分析して答えをつかんだ。


「お前さんの宣伝力が弱まっているせいじゃ」

「なんだって!?」

「この宣伝ヒーローガンは、持ち主の宣伝力に呼応して力が強くなる。
 有名人や芸能人が持てば当然強くなることはお前も知ってるな?」

「ええ、まあ」

「だが、度重なるお前さんの宣伝のせいで
 お前さんの人気……つまり、宣伝力が落ちてしまったんじゃ。
 だからパワーが落ちてしまったのじゃ」

「そんな……それじゃ悪の組織はどうなるんです!
 奴らは今こうしている間にも、
 どこからか資金を募って怪人を作り出しているんですよ!」

「とにかく、今のお前さんは宣伝力が低いどころか
 マイナスイメージすらついているヒーローじゃ。
 宣伝武器シリーズを使っても逆効果じゃろう」

博士のその言葉は「丸腰で戦うしかない」という
最も過酷な選択肢を迫るものでもあった。

「わかりました。
 これでも私はヒーローです。
 武器に頼らずに悪と戦ってみせます!」


宣伝ヒーローはその日を境に宣伝武器の使用をすっぱり辞めた。
厳しい肉体トレーニングと技の研鑽を積み重ね、
再び悪の組織と合いまみえるときには一流の武闘家に成長していた。


「ぎょぎょぎょ。今日はいつもの魚肉ソーセージも
 妙にギミックが多い武器も、
 やたら数ばかり多い弾丸も持ってきてないのかい?」

「ああ、そうだとも。
 だけど今はこの体そのものが磨き抜かれた武器なんだ!」

「ぎょ!?」

面食らう怪人に先制攻撃を仕掛けた宣伝ヒーロー。

回りくどい商品説明も価格説明も省いたその攻撃は
油断していた怪人にとってまさに電光石火。

そのまま宣伝ヒーローの繰り出す鮮やかな技によって
怪人は倒されて世界は平和を取り戻した。

すると、その様子を見ていた博士がかけつけた。

「宣伝ヒーロー、すごいじゃないか!
 丸腰で敵を倒すなんて!」

「自分を磨いていてよかったです。
 これで必ずや悪の資金源を断ってみせます」

「ああ、お前さんなら必ずできる!
 それに見てくれ。今のお前さんの宣伝力を!」


宣伝力:100,000,000,000,000,000


宣伝ヒーローはその桁数に驚いた。

「こんなに……!?
 私は何も宣伝してないのに、
 これほどまでにグッズを買った人がいるなんて!」

「すべては君の活躍あってこそだ。
 君が道具に頼らない戦いを見せたことでファンが増えたんだよ。
 ファン心理としては、君の使ったものを集めたいからね」

「それじゃ……」

「ああ、君こそ本物の宣伝ヒーローさ」


道具に頼らない戦いのヒーローが初期に使っていた装備。
その触れ込みが、ヒーローにあこがれる人たちに強く宣伝された。

そして、宣伝ヒーローは今日も悪の組織と戦いの日々を送るのだった。











提供 悪の組織


「ウチで作った宣伝ヒーロー弾、めちゃめちゃ売れてますよ。
 いやぁ、これだけ資金があれば次の怪人も凝ったのができるなぁ♪」


――ご覧のスポンサーの提供でお送りしました。