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てっしゅう
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novelistID. 29231
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歴史に学ぶ男と女「男は体、女は心」

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そして、持ち帰った返事は、深夜に裏木戸を開けて、人払いをしておいてほしいというものでした。
つまりこそっと抜け出して逢いにゆくぞ、ということでした。

約束通りに高市が来ると采女は木戸を締めます。
二人は朝方まで愛し合い、そして何度か目の夜にこれ以上は逢瀬を続けると危険だと思って十市はこう言います。

「無理はしないで欲しい。わたしは心と心がつながっていれば信じられるからそれでいいの。会わずにいても心さえあればそれで・・・いいの」

高市は答えます。

「男はね、体で心を確かめるのが充実感につながるんだよ。それを知ってしまったら心だけでは不安になる。だからもう離れてはいられない」

十市は高市の思いを胸に秘めて、高市の未来を見据えて別れる決心をします。
自分の母である額田王が深く大海人皇子を愛していたとしても、一度は大友皇子の母となった身であり、大海人とは敵の皇子であったことには変わりがない。自由になった今、縁りを戻そうとはしない態度に十市は母を見習うべきだと知ったのです。

十市は何といっても高市の父大海人にとって討つべき首謀者大友皇子の妃だったのです。
時が平和であったら何の問題も無かった高市と十市は強い思いを秘めながら、自らの運命に悲しい結末を選択しなくてはならなかったのです。

大海人皇子は息子高市にこう言います。
「男は、男自身がそう思い込みたがっているほど強い生き物じゃない。だからこそつねに自分を律し続けて男であり続けなければならないのだ」

父がかつての恋人そして妻であった額田王のことを何より愛していることを悟った高市は、自分の思いもまた父の思いであると知ったんですね。
日本が天皇を頂点とする政治体制を作り上げることが自分と父の使命なんだと自覚するのです。

潔いですね。
一番愛していて一番大切な人だから別れる。
お互いの幸せを壊すようなことをしてはならないと考える恋愛があるのですね。