小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

俺の天才性を証明する方法

INDEX|1ページ/1ページ|

 
みんな誰しも自分は特別だと思っている。

自分には人より優れた才能があって、
その才能を正しく評価されれば間違いなく天才と言われる。

そして、俺こそは本物の天才だ。

「天才免許証、ですか?
 すみません、こちらでは取り扱っていません」

「くそ……やっぱり都市伝説なのか」

市役所で追い返されて、悔しさがこみ上げる。
俺には確かな才能があるのに、
それを認めてもらえる免許証が手に入らない。

「あ、待ってください。
 そういえば、聞いた話では……」

役人の話を聞くと、
天才免許証は特別な場所で渡されるらしい。

その場所に向かってみると、高層ビルの1室だった。
部屋には2人の男が待っていた。

「お待ちしておりました」

「俺のこと、知っているのか?」

「ええ、お噂はかねがね。
 私どもは独自の天才発掘ネットワークがございますから。
 天才の方には目をつけているんですよ」

「それは光栄だ。
 で、本題だが天才免許証が欲しい。
 手に入れるには何をすればいい? テストか?」

「あ、はいどうぞ」
「軽っ!?」

あっさり免許証を渡された。
なんかもっとこう……適性を測るみたいなテストを覚悟していた。

「先ほども申し上げたように、
 天才のネットワークがございます。
 わざわざ改めてテストする必要なんてないんです」

「なるほど、そう考えてみればそうか」

「それと、天才免許証は常に見せてください。
 こっそり隠すのはこの社会としての損失です」

男はつかつかと歩くと、
俺のおでこに免許証をはりつけた。

「これでよし」

「え、これはさすがに変でしょう!?」

「いやいや、天才と掲げられてるんですよ。
 これも新しいファッションだと思われます。
 なにせ、あなたは天才ですから」

男の言うことはもっともで、
笑われないかと思ったが通行人は見こそすれ、誰も笑いはしなかった。

"ああ、やっぱり天才は違うな"

と、羨望のまなざしを送るくらいだった。
気持ちいい。



翌日、家に編集者がやってきた。

「先生、今週分の原稿をいただきにきました」

「ああ、これね」

俺は昨日書いていた小説を渡した。
出来はまあまあだが、ノルマは達成したしこれでいいだろう。

すると、編集は原稿よりも俺のおでこに興味が移った。

「先生、その免許証……」

「ああ、昨日取ったんだ」

「さすが先生です! やはり先生は天才だったんですね!」
「ふふ、わかるか」

「ええ、ええ! わかりますとも!
 先生の才能は私もずっと前から感じていました!
 この人はやっぱりちがうなーーって!」

「そうだろうそうだろう」

なにこれ気持ちい。
やっぱり天才免許取ってよかった。

「今回の先生の作品も、
 きっと天才の才能あふれる作品に仕上がっているんでしょうね!
 私、今から楽しみです!」

「……え?」

「天才が書いた作品ですからね、
 やっぱり私みたいな凡人は期待しちゃいます!
 自分には届かない才能を見せつけられることを待っているんです!」


「ああーー! しまったぁーー!
 急に手が滑ったーー!!」

俺はすぐさま編集の手から原稿を奪い取り、
そのままシュレッダーにダンクシュートをかました。

「ああっ、先生! 原稿がっ」

「これは書き直さないといけないなーー。
 でも時間はまだあるから間に合うかーー」

「それじゃ先生、すみませんがよろしくお願いします」

編集が帰ると、たまっていた脂汗がどっと出た。

「やばい……天才らしい作品を書かないと!!」

この作品はおそらく生涯で最も頭を使った。
気持ちの乗るままに書いたこれまでの作品とは別に
展開をかんがえ、登場人物を選定し、文章にも気を遣う。

作品が仕上がるころにはぐったりと疲れ切っていた。

「で、できた……」

――ピンポーン

「先生、原稿を取りに伺いました」

「ああ、できてるよ」

「それじゃ天才の作品、預かりました」

「ああ……」

もう疲れ切ってそれどころじゃない。
ただ、作品の出来に関してだけは自信がある。


数日後、俺の予想は的中した。

命を削って書いた新作は大ヒットとなって、
俺の名前と「天才」の肩書きは一気に有名になった。

「先生、すごいですよ! ミリオンセールです!
 天才は違いますねっ、あんな展開誰にも思いつきません」

「ふふふ、そうだろう」

思いつくまで死に物狂いで考えたかいがある。
ありとあらゆるものを吸収し、ネタに使えないか考える。

絞り切った雑巾をさらに絞るような、つらい作業だった。

それを天才の才能かと言われれば……どうなんだ。

「それじゃ、俺はミリオンセール記念に旅行でも……」

「先生、なにを言ってるんですか?」

「え?」

「読者は常に驚きに飢えています。
 先生の才能を見せつけられることを求めてます。
 さあ、ほら、早く次の作品を書いてください」

「えっえっ」

「次の作品も、もちろん天才の作品なんですよね?」


「ひいいいいいい!!!」


※ ※ ※

高層ビルのとある1室。

「おい、これ見ろよ。
 この人は前にここに免許証取りに来た人だよな?」

「ああ、間違いない」

天才免許証の職員2人は、
新聞にやつれた顔で映っている男を見つけた。

記事にはいくつも「天才」という文字がちりばめられている。

「単純なものだ。
 あんな免許証ひとつでも周りから祭りあげられれば
 自然と天才になれるよう努力するんだな」

「天才ネットワークなんてあるわけないし
 あの免許証なんてなんの効力もないのにな」

すると、また1人が部屋にやってきた。

「あの、ここで天才免許証が手に入ると聞いたんですが……」

二人はすぐさま顔を作って迎えた。


「お待ちしておりました、天才様」