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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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通り過ぎた人々 探偵奇談5

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「先輩…この上には、なにがあるんですか…?」

ひた、と伊吹が歩みを止めた。ぴんと空気が凍り付く。聞いてはいけないことを聞いてしまったのだと、感覚で瑞は理解する。


「ぜんぶのおわり」


ぞっとするくらい冷たい声だった。まるで温度のない人形から発せられたような。


「ほら、行こう」
「待って、待って待って!あの子泣いてる、戻ってこいって言ってるんだ!」

声はまだ聞こえてくる。戻ってきて、と繰り返して。それは胸を突かれるような、本当に悲壮な声なのだ。無視なんてできない。

「あれは俺だよ」

こちらを振り返らず、伊吹は言った。

「戻ってきてなんて、口が裂けても言っちゃいけないのに。ばかなやつだろ」

苛立った声だった。ままならないことに腹を立て、もどかしさを感じているような。

「これが俺のお役目なんだ。何千年も前から決まってたんだ。いま、その約束を果たす」

来い、と腕を引かれる。でも瑞は知っている。伊吹もこの上に行くことを恐れているのだと。どうすればいいのだろう。役目を果たすという伊吹と、戻ってこいと懇願する幼い伊吹。どちらへ向かうべきなのだろう。わからない。

何を迷うことがあるんだ、と自分の中の誰かが言う。

おまえの運命は、もう決まっているはずだろう、と。