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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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宇宙人かくれんぼ

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それは今朝会社に向かってる最中だった。

「……あ」

空き缶が立ててあった。
飲み終わってポイ捨てどころか立てるなんて。

どこかに捨てるかと周りを見渡した時、
町の大きなモニターから緊急ニュースが割り込んだ。

『みなさん、落ち着いて聞いてください。
 たった今判明いたしました。
 この地球は、すでに宇宙人に侵略されかかっています!』

そんな馬鹿な。
よくあるSF映画だって多少の前フリはある。

そんな疑いの目を持った人も、
空に浮かぶバカでかい円盤を見た瞬間、反論する意欲をしぼませた。


『もはや迎撃も間に合いません!
 みなさん、宇宙人に見つからないようどこかに隠れてください!
 幸い、まだ宇宙人は地上まで来ていません!』


それまで普通に歩いていた人が一斉に建物に逃げ込んだ。

宇宙人に見つかれば何をされるかわからない。
とにかく物陰に隠れなくては。

UFOからはスポットライト上の光が出て、
宇宙人が次々に降り立つのが見えた。

「まずい……! もう来たのかよ!」

かくれんぼでも最初は数十秒待つのに!

俺は慌てて一番近いビルに向かった。
けれど、入口は完全に封鎖されていた。

「ちょっと! 中に入れてくれよ!」

「しー! 静かにしろ! ここに隠れているのがバレる!」

どこも考えは同じようで、
隠れ遅れた人間をかくまって共倒れになるわけにいかない。

俺はやむを得ず、足元のマンホールへ飛び込んだ。

マンホールの穴から外の様子をうかがった。


地上からは次々に人間が見つかって、
UFOのスポットライトでどんどん回収されていく。

そして、俺が隠れようとしていたビルにも
宇宙人が入ってきてあっさりみんな捕まった。

人数が多すぎて、隠れる場所がなくなってしまったんだ。


(あ、危ねぇ……!)


もし、あそこに匿われていたら……。
俺も同じようにまとめてUFO送りにされるところだった。

国の迎撃ももはや当てにできない。
となれば、宇宙人が満足して帰ってもらうまで隠れるしかない。

マンホールにいつまでも隠れても食料が尽きる。

隙を見て抜け出し、俺の実家まで向かおう。
俺の実家には畑も野菜もあるし、山の中で視界も悪い。

食料には困らないし、人も寄り付かない場所に
わざわざ宇宙人が捕まえに来ることもないだろう。

まさに自然が生み出したシェルター。


「よし、行くぞ……」

俺は宇宙人が外にいないことを確認し、
そっと音を立てないようにマンホールのふたを開ける。

「誰もいないな……」




「ニンゲン、ニンゲン」

「わぁ!?」

マンホールのふた、すぐ後ろに宇宙人はいた。
ちょうど死角だったんだ。

「ツカマエル。ニンゲン」

宇宙人は俺を指さしている。
まずい、このままじゃ俺も……。

俺はマンホールから抜け出すと全力ダッシュ。
これでも昔は陸上部で100mは……。


「コレクライ。オイツケル」

「ってめっちゃ早ぇぇ!!」

宇宙人の足はもっと速かった。
ぐんぐん差を詰めてきて、その手が俺の頭に届く。
そのとき。


コワンッ!


「あ……?」

必死に逃げる際、足元に立ててあった缶を蹴とばした。
俺が一番最初に見つけた空き缶だった。


「シマッタ」


宇宙人のその一言とともに、
空の円盤からはとらえられた人間たちが地上へ降りていく。

そう、これは……。


「かくれんぼじゃなくて……缶蹴り?」


やがて、俺は世界を救った英雄として祭りあげられた。
めでたしめでたし。




「デハ、モウイチド」

宇宙人が缶をもう一度セットするまでは。
世界は再び恐怖のどん底に叩き落とされた。
作品名:宇宙人かくれんぼ 作家名:かなりえずき