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四方山サラダボウル 第1話

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(一)
 バスに揺られながらふと外を見る。満開の桜が春を感じさせる。
 僕の名前は古川蓮、この春から高校に通うため下宿先に向かっている。
 バスが止まる、僕は降りる。荷物を地面に置いて目線を上に。
 目の前にある新しくもなく、かといって古びてもいない建物。
「ここが」
 そう下宿先の四方山荘だ。
 今日からここで人生初の一人暮らし。上手くやっていけるだろうか。
「不安だけど・・・、立ち止まっていてもしょうがないか」
 吐きたくもないため息をつく。
 ドアをノックしてドアノブに手をかける。妙に緊張する、手汗が凄い。
 ひと呼吸おきドアを開ける。
「こんにちはー」
 誰もいないみたいだ。時間通りに来たのに・・・。
 右手側に掲示板、左側に郵便受け。中央にソファーが2つ、その間にガラス机が置いてある。
 いい意味で昔ながらのアパートって感じだ。
「あのー、誰かいませんか?」
 反応がない。仕方ない、座って待つとするかな。
 と思って何気なく後ろを振り返ると、くちばしの長い真っ白い仮面を付けた人が立っていた。
「わぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「だ、だ、誰なんですか?」
「・・・・。」
 手が伸びてくる。
「ちょ、やめ」
「何もしやしないよ」
 伸びてきた手は僕の頭をくしゃくしゃと撫でる。
「よく来たね、蓮」
「・・・もしかして叔母さん?」
「おぉ!よくわかったね!」
 仮面を外す。長い髪、どことなく母に似た雰囲気があるこの女性が四方山荘の大家さん、そして僕にとっては叔母にあたる。
「とりあえず」
「四方山荘へようこそ!」
 そう言いながら叔母さんが手を差し出す。
 上手くやっていけるのだろうか。正直不安は残るけど、向けられている笑顔が少しだけ僕を安心させてくれる。
 差し出された手を握り返し立ち上がる。
「お世話になります。叔母さん」
 と言った瞬間思いっきり手を握られる。
「いっって!」
「ここでは大家さんって呼んでくれるかい?もしくはお姉さんだね」
「よろしく、お願いします・・・大家さん」
 よろしいと言いながら(納得いってない感じではあるが)手を離してくれた。あー痛かった。
「それにしても・・・、大きくなったねぇ」
「そうですかね?」
「そうだよ!前見たときはこ〜んなに小さかったのに」
 手で表現してくれたそれはどう考えてもあり得ないサイズだった。ミジンコか僕は。
「そんなに小さくないでしょ」
「それだけかわいかったってことさね」
「はぁ・・・」
「かわいすぎて色々したものさ・・・」
「色々?」
「覚えてないのかい?まぁその方が幸せかもね」
 いったい何をされたのだろうか僕は・・・。
「まぁ積もる話しはこれくらいにするとして。ちょっと待ってな」
「あっ、はーい」
 奥に消えていく叔母さん。ソファーに座る僕。
 戻ってくるまでちょっと休憩。

 しばらくすると叔母さんが戻ってきた。手には鍵と・・・紙袋?
「ほい」
 投げられた鍵を受け取る。
「送られてきた荷物は部屋に入っているよ。夕食までに片付けちゃいな」
「ありがとうございます」
「それと」
 紙袋を差し出してくる。そんなもの送ったっけ?
「何ですかそれ?」
「紙袋だよ!」
「見ればわかりますよ。僕の荷物にそんなものありましたっけ?」
「あんたのじゃないんだ」
「じゃあ誰の?」
「あんたの隣の部屋の子」
「それが僕にどういう関係が?」
「その子に渡してきてくれるか?」
「僕がですか?」
「ほかに誰もいないだろう?」
 ニヤリとする。嫌な予感がする。
「本当にそれだけですか?」
「・・・もちろんじゃないか」
「何ですか、その間は」
「いいじゃないか。渡してくれるだけでいいからさ」
「片付けもあるし、申し訳ないですけど・・・・」
「なんだい、なんだい。久しぶりに会った私の頼みが聞けないってことかい?」
「いや、でも・・・」
「片付けぐらいすぐ終わるさ。それに終わったらやる事ないんだろ?」
「まぁそうですけど」
「それに、あーうんと、そう!挨拶がてらになるしいいじゃないか」
「・・・それ今思いついたでしょ」
「引っ越してきたんだし隣人に挨拶するのは大事だろ?」
「確かに。それは一理ありますね」
「そうだろ、そうだろ!じゃあお願いね!」
 渋々紙袋を受け取る。
「いやー、助かるよ」
 結局引き受けてしまった。いつもこうなんだよな、僕の場合。
 でもまぁ挨拶がてらってのは正論だし行ってもみてもいいか、今後のために。
「じゃあ僕、部屋に行きますね」
「何かあったら呼びな!」
「はーい」
 自分の荷物と紙袋を持って部屋に向かう。
 それにしてもこの紙袋変に重いな。何が入っているのかな。
「さてさて、どうなるかねぇ」

(二)
「よし、終わり」
 思ってたよりもすぐに片付いた。まぁ荷物そんなに多くないし当然か。
「さてと行くか」
 叔母さんに渡された紙袋を持つ。ささっと終わらせよう。

 102号室のドアの前。さっきとは違った緊張感。
 覚悟を決めてノックする。
「あのー、すみませーん」
 反応がない。留守なのかな?ちょっとだけほっとする。
 出直すかなと思い自分の部屋に戻ろうとした矢先
「はーい!」
「今行きまーす」
 声が聞こえた。その瞬間ドキッとした。
 こちらに近づいてくる足音、高鳴る鼓動。
 ガチャリという音とともにドアが開く。
 出てきたのは、黄金色髪に赤い瞳、Tシャツに短パンというシンプルな服装の小柄な女の子。
 思わず見とれてしまう。かわいい、同年代ぐらいかな。
「えっと、どちら様?」
「あっ、えっと・・・、今日から隣に引っ越してきた古川蓮です。えっとよろしくお願いします」
「あっ、君が蓮君か〜。大家さんから聞いてるよ」
「私は朱血、朱血エリザベートって言います!こちらこそよろしくね!」
 ぺこりと頭を下げたので僕も慌てて同じ行動をする。くそ、静まれ鼓動。
「あっ、えっと、これどうぞ」
 叔母さんから預かった紙袋を差し出す。
「なぁにこれ?」
「叔母・・・じゃなくて大家さんから渡すように言われたんですけど中身は聞いてないです」
「あ〜、頼んでたやつか!届けてくれてありがとう!」
 笑顔もかわいい。
「じゃあ僕はこれで」
「あれ?帰っちゃうの?」
「え?まぁ、はい」
「せっかくだしもう少し話さない?」
「いやでも・・・」
「いいじゃんいいじゃん、少しだけだからさ〜」
 腕を絡めてくる。ちょっ胸が・・・。まずいまずいって。
 理性がフル稼働してる僕をよそに強引に部屋に引きずり込んでいく。女の子なのに力強いな。
「さぁさぁ、上がって、上がって〜」
「おっ・・邪魔します」

(三)
「クッションあるからそこに座って〜」
「飲み物取ってくるから少し待っててね〜」
「あっ、お構いなく」
 とりあえず座る。落ち着かない。女の子の部屋なんて初めて入ったし。
 部屋を見渡す。同じ部屋なのにこうも違うのか。これが女の子の部屋・・・。
「ん?」
 窓がない・・・。いやよく見ると窓があるはずのところが板で塞がれている。変だな。
「蓮君は〜」
 ビクッとして振り返る。朱血さんが飲み物を持って後ろに立っていた。
「お茶でよかった?」