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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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仇討ちシェアハウス

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仇討ちシェアハウスにやってくると、
すでに家には俺以外に3人が入居していた。

「あの、俺この家に来るように言われたんですが、
 本当に仇討ちしてくれるんですか?」

「オーイエス! もちろんだよ!
 この家に入居した人たちは一心同体!
 お互いの仇討ち対象に仇討ちをするYO!」

「そうだにゃん♪
 変に恨みや私情が入らないぶん、成功率は増すにゃ♪」

「……仇討ち成功し、たら。
 この家……出ていく、ルー、ル」

「それじゃ聞いてくれ。
 俺が仇討ちしたい人は……」

それから俺は同居人に仇討ち対象を話した。

中学の同級生だったこと。
自分をいじめた奴らだったこと。

そして……。

「ホワッツ? 顔は覚えてない?」

「卒業アルバムも憎しみですぐに燃やしたし
 顔も思い出さないように努力してたから……」

「はにゅ~。それじゃ仇討ちのしようがないにゃん♪」

「だからこそ、このシェアハウスに来たんだよ!
 それでも……ここなら何かできるかもって!」

「それは……無理、だ……。
 あたしらは素人……殺し屋じゃな、い……」

「……そうだけど」

メンバーはまるで協力的じゃなかった。
ここは信用させて協力させるためにも、
自ら率先して仇討ちをするしかないだろう。

「それじゃ、みんなの仇討ち対象を教えてくれよ。
 俺が代わりに仇討ちするから」

俺以外の3人の不幸話を聞かされた。
でも、本気で殺したいとかそこまでのものじゃない。
ちょっとバチが当たればいいな、くらいのものだった。

「ミーは会社の上司だYO」

「私は浮気した泥棒女だにゃん♪」

「あたし、は……元夫……よ」


「てんでバラバラじゃないか!」

とりあえず、男の会社の上司あたりに仇討ちをしようか。
俺は、同居人の男から会社の住所を聞き出した。

会社につくと、上司の情報を調べ上げ、家を割り出す。

「仇討ち、かぁ……何すればいいだろ」

恨みを持っている人だと、
徹底的に恨みを晴らしちゃったりするんだろうな。

俺みたいに縁もゆかりもない人だから、
客観的に適量の仇討ちができる。

ま、ありきたりだけどこれがリスクない仇討ちだろうな。


がしゃーーん!

俺は窓ガラスを割って部屋の中に石を投げ込んだ。
といっても、石は囮で中に浮気の証拠を入れることが目的。

こっそり家の中に女のもの化粧品などを隠し入れる。

「これでよし、と」



それから数日後、仇討ちの成果はシェアハウスで知った。

「HEY! 君、仇討ちしてくれたんだね!
 あのクソ上司ったら、浮気が疑われて出世取り消されてたZE!」

「あなたが……仇討ちしてくれた、の……?
 元夫の奴、顔が真っ青になっていた……わ」

「あなたが仇討ちしてくれたのにゃん?
 あの泥棒女ったら、家の空気最悪だって泣いてたにゃん♪」


「え、え、ええ?」

まさか3人から仇討ち報告が返ってくるとは思ってなかった。

「待ってくれ。俺が仇討ちしたのは、1人だ。
 会社の上司の家に、浮気っぽい物を入れただけで……」

「OH! それだYO!
 それのおかげで、出世は取り消C!
 一気に収入が減って、妻は不幸のどん底だゼ!」

それを聞いて、暗い顔の女が立ち上がった。

「その男の妻……あたしの元夫の……浮気相、手」

「えっ?」

「ふふ……いい気味、ね……。
 浮気相手が不幸になって、あえなくなったから……。
 あたしの元夫たら……死んだような顔になって……る」

浮気相手に愛情を求めるような人にとっては、
浮気している相手と会えなくなったら一気に滅入るだろう。

俺の行動がここまで影響を与えているとは思わなかった。

すると、ぶりっ子の女も手を挙げた。

「あーーわかったにゃん♪
 あなたの元夫の再婚相手、泥棒猫のパパにゃん♪」

「どういうこと!?」

「浮気相手と会えなくなって、家庭内空気最悪だにゃん♪
 荒れに荒れるもんだから、一人娘の泥棒女は帰る家がないにゃん♪」


俺が、会社の上司に浮気疑惑をかけたことで
その妻は浮気ができなくなった。

浮気ができなくなったことで、
その相手の男……元夫はストレスがたまり、荒れまくった。

荒れまくった結果、その娘……泥棒女は不幸になる。


こんなに不幸が連鎖するなんて思ってもみなかった。
でも、これを偶然として片付けるのは無理がある。

「そうか……! わかった!
 俺がこのシェアハウスに呼ばれたのは、このためだったんだ!
 お互いに仇討ち先がリンクしているからだったんだ!」

まるでパズルのピースをはめるみたいに、
俺は仇討ちシェアハウスに招集された。

なぜなら、誰か1人でも仇討ちに成功させれば
ドミノ倒しのように仇討ちに成功するはず……


「あれ? 俺は?」


俺だけ仇討ちされていなかった。

「OK、もうそんなことどうでもいいYO!
 かつてのいじめ相手なんて忘れちまえYO!」

「そうだにゃん♪
 いつまでも恨みを引きずるなんてみっともないにゃん♪」

「男らしく……な、い」


「お前ら仇討ち成功したからって!!
 さっきまで、ずっと恨み引きずってたじゃねえか!!」


「さっきはさっきだYO。
 それじゃ、シェアハウスルールがあるから出なくちゃNE」

「次の入居者に仇討ちをお願いするにゃん♪
 ばいばいにゃーん♪」

「もしくは……恨みなんてさっさと忘れ、な」

薄情な入居者たちはさっさと家を出て行った。

「あーーあ、結局、俺だけ仇討ち失敗かよぉ。
 なんだか不公平だなぁ」


キキーーーーッ!

外からブレーキ音が響いた。



ニュース速報

ただいま、国道123号線で人身事故が発生。
運転手の女は家庭内の雰囲気に耐えきれず暴走していたとのこと。
現在、責任能力があるのかを調査中

重傷:山田 孝則
重傷:佐藤 美鈴
重傷:渡辺 美佐


「あっ」

表示された名前はどれも、かつてのいじめっ子だった。
3人の顔写真は、ちょうどさっき家を出て行った3人で……。


「ざまあ」