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青井サイベル
青井サイベル
novelistID. 59033
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ラブホテル漂流記

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カップルに人気のスポットは夜景の名所が目立つ。
こんな噺いや話がある。


その高校生は、人の少ない野村ビルが行きつけだった。
一人で行き、暮れなずむ摩天楼がやがて地上のまばゆい星空に変わるのを眺めていた。
ブラインドがあればな、と思った。
ちらっ、とめくりたかった。
そしてできれば、ガウンにスリッパで、丸いグラスをくるくる回し、
これでおよしよと言ってみたい、
そんな気分だった。


やがて恋人ができた。
浮かれる高校生。
ある日彼女は恋人から、耳より情報をきく。
平日の昼間は、何時間いても料金変わらないらしいよ。
うっそーまじでー。
彼女は弁当を作った。
ラブホテルで弁当をあけ、使えるものはなべて使い尽くし、
することも忘れて部屋で大暴れするのだった。
楽しかったが、いつもつまらないのは、
窓をあければ夜景ではなく、隣のビルの壁とダクトがそれはもう、
殺伐と目の前にそそり立っていることだった。


以上の話を総合すると、恋人にとってよいスポットは、
「夜景の見えるラブホテル」ということになる。
だが、シティホテルは高すぎ、ナニの為のアレも置いていないだろう。
それでは不親切。
三○ビルとかラン○マークタワーとかサ○シャインとか六本木○ルズ、
名だたる日本の高層夜景スポットは、恋人たちでいつも混雑。
わたしも一度行って、鳥島のアホウドリの営巣地で巣作りをするつがいみたいな、
ちょっとあんた押さないでよみたいな殺気立ったものを感じ、
輝くロマンも輝かなかった。


だからそんな名だたるをビル丸ごと、ラブホテルにしてしまってはどうだろう。
道はひとつなんだし。もうかるよ。昼のお得なサービスタイムもお忘れなく。
どうですかア○ン・ド・グループの社長。
作品名:ラブホテル漂流記 作家名:青井サイベル