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青井サイベル
青井サイベル
novelistID. 59033
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オープンラヴレター

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お元気ですか。
あなたが(これを読んでくれているあなたのことです)どうしているのか、
今日は母親のように思い描けます。


あなたは今頃、
焼きそばを作り、
残業に没頭し、
帰りの電車に揺られ、
子どもたちの世話をし、
最近耳の遠くなった夫と大きな音でテレビを視、
携帯やパソコンに興じ、
ギャンブルのことを考え、
ラブホテルでたばこをふかし、
花を買い、
図書館から出るところ。


どんなにあなたをすきか、わかる?
何度もあなたに逢ってて、逢うたびに燃えるほどにすきになるわ。
はじめまして。
驚いちゃだめよ。
そんなはずはないだなんて。


いまわたしはプッチーニの『この冷たき手を』を聴いて、
とうとうがまんしきれなくなりました。


この歌声。
恋の、愛の、はじまり。
笑ってはいけないわ、あなたの遺伝子はそこから始まってここにきたの。
わたしのもとへ。
わたしはあなたをつかまえるでしょう、
遅かれ早かれ。
わたしは猟犬みたいに焦ってはいないの。
弱い群れのように怯えてもいないの。
ただ、あなたを見てるわ。


いつも、見てるわ。
夕暮れが金やピンクやむらさきや水色に、星を散りばめる頃も、
ヒグラシの鳴く魔法の夏の明け方も、
もの哀しく不思議な精のように雪が降る午後も。
そのときあなたは子どもを見たでしょう?
それがわたし。
それが育ってわたしになったの。
あのときの子どもなの。


あなたの手が触れたとき、
筆跡があらわれた。
それは五線紙をまたたくまに埋め、
麦畑の上を渡る風の豊穣の音楽を生んだの、
それがわたし。


思い出した?
わたしの顔を。