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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「父親譲り」 第四話

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その日は母とずっと話をしていた。
父が出かけて行って気兼ねなく聞きたいと思っていたことを切り出した。

「お母さん、怒っているんじゃないのよ。聞きたいと思っていることがあるの」

「なに?変な事言ったかしら」

「ううん、昨日ね帰って来てお風呂に入ってから自分の部屋に戻ろうとしたとき、お母さんたちの部屋から声がしてた。何が言いたいか解る?」

「聞こえていたの?」

「うん、子供の頃からずっと聞こえていたこと」

「恥ずかしいね・・・お父さんにあなたが居るから聞こえちゃうので嫌だといつも言ってたのよ。でもそんなこと夫婦だから気にすることではないと言われていた」

「仲良くすることが嫌だと言うのじゃなく、子供には感づかれないようにして欲しかったと思ってたわ。家を出たかった理由にそういう事もあったの」

「そうだったの。あなたには辛いことだったのね。ごめんなさい」

「責めてなんかいないよ。私に理解が無かっただけ。今ならお母さんの気持ちも少しは解るし、自分も夫から求められたら断れないだろうって感じるもの」

「伸治さんとは初めは仲良くしてたのよね?それがあんなことになって。女の幸せは優しさだけじゃなく、経済的なことも大きいって身をもって知ったわね。これからどうするつもり?」

「うん、お金は大事だよね。でも私はやっぱりお金じゃなく気持ちが一番大切だって今も思うの。だから恋愛はしても経済的な部分にはこだわることはしない。お母さんはお父さんのこと愛してる?」

「急に何を言うんだい。そんなこと・・・当たり前だろう」

「そうよね。あんなに仲良くしてるんだからそうよね」

「また、思い出すように言うんじゃないよ、恥ずかしいのに」

「ごめんごめん。私は伸治さんしか知らないから男の人がどうなのか解らないって思う。お母さんはそのう、お父さん以外も知ってるの?」

「変な事を聞くね。知るわけがないでしょう。お見合いで結婚したんだから」

「そう、学生時代に好きな人は居なかったの?」

「女子高から女子大だったからね」

「お父さんに不満は無いの?」