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青井サイベル
青井サイベル
novelistID. 59033
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カレーの人格

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カレーを作ってもらった。
ゆかしい日本のカレーライスである。
だんなさんは丁寧で潔癖だ。
だが雑であっぱらぱあの自分が作るカレーと彼の作るそれとは、大差がない。
これはタイカレーにおいても、インドカレーにおいても同じである。


カレーには、作る人物の人格はあまり出ないようだ。
これはどういう訳か。



多分カレーという料理はどこの国でも、おおらかなるものなのだ。
インドではカレーは「カリー」「カリ」「タリー」「タリ」つまり「汁」、
というような意味であるそうで、言ってみれば味噌汁とか煮込みに近い感覚のものらしい。
食材を鍋にぶち込んでことこと煮ればそれは大体、うまいだろう。


いや、待てよ。
以前行ったインド人の経営するインド料理店で出てきたカレーには瞠目させられた。
甘いんだよ歯が溶けるほど。カレーだよ?
わたしは「まさか」「そういう味のものなのか」「砂糖を入れ過ぎたのか」
という思いですがるように厨房に目をやったが、インド人たちはぺらぺらお喋りをしながらのんきにしているばかり。
いまだにあれが本場のカレーの一種だったのか、それとも分量間違いかわからない。
カレーを作る人物の人格は、あの料理人の性格は、派手におおらかで、わたし以上にあっぱらぱあであったのか。



あれ?問題提起しておきながら早くもわたしの価値観が崩れるよ?



インドのカレーに関してはさもありなんという逸話、都市伝説がある。
あるバックパッカーがインドを旅し、奥地の村へ行く途中で赤痢になってしまった。
さあ困った、と村に着いてから医者を探した。
しかしそこは奥地の事、医者などなく、あるのは「村の呪術医」だけだった。
だが背に腹は代えられない。
行くと医師(魔術師)は彼を看て尋ねた。
「これはひどい。カレーを食べたのかね?」
インドという国はもちろん、どこでもカレーばかりである。
そうだと答えると呪術医は言った。
「こんな体でカレーを食べるなどもってのほかだ。私が薬を調合するから、それを飲みなさい」
呪術医はおもむろに火を焚き、炉で何かしらを作って、器にそれを注いで差し出した。
カレー。
仕方なく彼はそれを飲み干した。
彼はさらに激しい下痢に見舞われ、針金のように痩せ細って帰国したという。


呪術医は親切心と悠久の歴史を誇る知識をもってカレーを作ったが、人につらい思いをさせてしまった。
親切心がアダとなる。そういう人はいる。


わたしが間違っていた。
カレーに人格は、出る。
作品名:カレーの人格 作家名:青井サイベル