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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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バレンタイン最後の日

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「代金はチョコレート100mlです」
「はい」

財布を溶かして、受け取り口にチョコを流し込む。
ちょうど100ml注ぐと受け取り完了のチョコ文字が点灯した。

「ありがとうございましたー」

店を出ると、チョコの自転車に乗ったチョコ人間が
歩道を猛スピードで突っ切っていった。

「ちょっと危ないじゃない!」

怒りで体が熱くなると、少しチョコが溶けだしてしまった。

そんな変わり映えしない毎日を
ショコラ星の人たちは変わらずに過ごしていた。

けれど、ある日緊急ニュースが入った。

『ただいま入って来た情報によりますと、
 我がショコラ星は本日、バレンタインに
 同級生のサトシ君へと贈られることがわかりました』

聞いたチョコ人間たちは大慌て。

「大変! どこかへ逃げないと!」

「逃げるってどこへ!?
 彼らは星の核であるアーモンドすらも
 一口で食べるバケモノよ! 逃げられないわ!」

ハチの巣をつついたような大騒ぎのあと、
星のどこに逃げても同じことだとわかってあきらめた。

「みんな、どうして諦めるのよ!?」

「だって……私たちじゃもうどうすることもできない。
 残った時間であがくくらいなら
 残された時間でゆっくり心の準備をしたいもの……」

「まだ食べられると決まったわけじゃないわ!
 うんと星を甘くすればいいのよ!」

女の声掛けでチョコ人間たちははっとした。

「確かに……相手が甘いもの好きじゃないなら、
 見た目からして甘そうなチョコは敬遠されるかも!」

「みんな! この星を一気に甘くするぞ!」

チョコ人間たちは、これまで意味なく作っていた
高層チョコビルを砕いて星に同化させる。
星はいっそう甘さを増した。

作りすぎた道路も、多すぎるコンビニも壊して星に加えた。

どんどん星は甘さを増していく。


「よし、これなら大丈夫なはず!」

全チョコ人類の協力により、
星は劇甘のチョコ星へと変貌した。

近づくだけでチョコの甘い香りが鼻に入ってくる。


『ただいま入った速報によりますと、
 今回、チョコを受け取るサトシ氏は
 無類のスイーツ男子だとわかりました』

「そ、そんなぁ!」

男はビター好きという勝手な幻想を先走らせた結果、
かえって相手に喜ばれそうな形へと星を導いてしまった。

「もうだめだ……」
「ああ、おしまいだ……」
「せめて一流パティシェに作ってほしかった……」

チョコ人間たちはホワイトチョコの涙を流した。
星の表面にはパラパラと白色のコーティングがなされる。

それを見て、思いついたチョコ女が声をかけた。

「みんな! ホワイトチョコレートを用意して!
 チョコのプレートを作るの!」

「誕生日とかに使うあれかい?
 今更あんなものを用意してどうなるんだ」

「いいから早く!」

チョコ人間たちは星を掘り進め、
中にあるホワイトチョコの源泉を引っ張ってくる。

そうして作られたのはホワイトチョコのプレート。

「いったい何をするつもりだ?」

「ここに名前を書くのよ」

チョコ女はひとりプレートの上に立って、
自らの腕を砕き溶かして、チョコ文字を書いていく。

「おい! もうサトシに渡されてしまうぞ!
 なにをするつもりか知らんが間に合わなくなる!」

「もう少し!」

包み紙雲の切れ間から大きな目がこちらを覗く。

「できた!!」

ホワイトチョコプレートの文字を書き終えた。



『マサル君、大好き』


「これなら、受け取った相手は絶対食べないわ!」

チョコ人類は女の機転に歓喜した。
そして、そのままあえなく食べられた。

 ・
 ・
 ・

「サトシ、本命チョコもらったんだって?」

「ああ、もらった。これで今年は1個ゲット。
 何個もらえるのか楽しみだ」

「で、味はどうだったんだ?」

「味? さあどうだったかな。
 そんなこと、どうして気にするんだよ。
 大事なのは何個もらえたかだろ?」

男たちの目には、もうチョコなんて目に入っていなかった。