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青井サイベル
青井サイベル
novelistID. 59033
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夜のヒキガエル

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プールの隅にはよくヒキガエルが折り重なってじっとしていた。
それは秋だったけれど、如月の今思い起こしてみる。
その底にいるヒキガエルは、今の自分と大差ないなと。



孤独とどう向き合えるかは、人それぞれだと思う。
知る限りの友人に片っ端から連絡を取るとか、スポーツや料理や読書に没頭するとか、
単にひねくれ我儘になってそれだけか。



文を作ろうと思う。
夜のヒキガエルのようにしんしんと。
かれらは何も生み出さないかもしれないが、そう決めつけたものじゃない。
他のカエルたちと熱を分ちあい、眠るような思いを分かちあっているのかもしれない。



ヒキガエルたちは、やがて春、池に出て、池の花を優しくなぞってくれるのかもしれない。



昨夜は久方ぶりにしんしんと降るような孤独であった。
ただ、それを必要としていたことも、わかっていた。
痛みや苦痛、喜びなどのもろもろは、独りであることでいきいきと色づくのだと改めて感じていた。


じっと感じ、考えること。
恵みの意味を、この在り方を、いかに受け取るか。


ヒキガエルは秋冬には眠っていたが、新緑かがやく春には池を自在に泳ぎ回り、青春を謳歌していたのを思い出した。
孤独の果てに花咲くもの、そんなことを、想っていた。

作品名:夜のヒキガエル 作家名:青井サイベル