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カクテルの紡ぐ恋歌(うた)Ⅱ

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 エレベーターが地下六階に着くと、日垣は先に降り、大股で歩き出した。その後を、美紗は小走りするようについていった。会議場はエレベーターホールからさほど遠くない位置にあり、廊下を挟んで向かい側に、いくつかの小部屋があった。そのひとつが比留川の言っていた別室なのだろう、と美紗は見当をつけ、会議場のほうに入った。
 長方形の広い部屋には、幕板付きの重厚な長机と、それに見合う大きな革張りの椅子が、ロの字型に配置されていた。すでに、地域担当部所属の佐官たちが、大きなモニターのそばに設置されたパソコンの前で顔を突き合わせ、ブリーフィング画面の最終チェックをしている。日垣もそこに加わり、持参した画像データを確認しながら、先着の面々と話しだした。その間、美紗は、比留川に持たされたブリーフィング資料を各席に配った。
 自国側の末席に、当該セッションの本来の担当者である高峰3等陸佐の名札があった。彼が急遽欠席になったことが、ロジ担当の事業企画課には伝わっていないようだった。さすがに、そこに座るのははばかられる。美紗は、高峰の名札とその傍にすでに置かれていた地域担当部の配布資料一式を手に取ると、日垣のほうを見た。彼は、モニターをチェックしながら、美紗をちらりと見やり、部屋の奥を指さした。壁際に簡易机があった。美紗は、自分の席を確保してようやく落ち着くと、筆記具類と会議資料の類を机の上に広げた。
 ほどなくして、地域担当部の部長クラス四、五人と共に、米国の「お客」が登場した。先方も、日本側と同じく、陸海空の三軍の制服と背広の人間が入り混じっている。会議資料に記載された出席者一覧によると、五、六人からなる一行のうちの一人は在京大使館の国防武官、もう一人は在日米軍情報部の人間で、残りは全員、米国防総省隷下にある国防情報局の所属ということだった。美紗は、談笑しながら着席する彼らのほうを、恐る恐る見た。
 相手も主な仕事はデスクワークのはずだ。本来、情報機関に所属する人間は、自らスパイ映画のアクションシーンを演じることはない。そのような「現場の仕事」に携わるのは、通常は、軍か公安の「実行部隊」か、情報機関から報酬を得て活動する部外者である。
 美紗もそのあたりのことは承知していた。それでも、目の前に現れた面々が世界最大の情報収集能力を誇る大国の情報関係者、というだけで、緊張感を覚えた。一方の彼らは、部屋の隅に座る小柄な女性職員には目もくれず、カウンターパートの筆頭である日垣と、ひとしきり挨拶を交わしていた。
 両国合わせて二十名弱が揃うと、すぐに部屋の照明が落とされ、午後一番のセッションが開始された。