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カクテルの紡ぐ恋歌(うた)Ⅱ

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「会議の概要はこれを見ろ。USBは議事録作成用だ。待ち時間に作っちまえば後が楽だろ。フォーマットはこの中に入ってる。パソコンは別室に置いてあるのを使えるはずだ。作成したものは向こうの端末には残すな。あんたの作る議事録は『秘』指定になるからな」
 書類の山を受け取ろうと比留川に歩み寄った美紗は、最後の言葉を聞いて、差し出しかけた手を思わず引っ込めた。よく見ると、配れと言われた資料にも、赤字で「秘」と印字してある。自分がそんな内容に関わることになるのかと思うと、なんとなく怖い気がした。
「そんなに構える話じゃないだろ。海外の情報機関から仕入れたネタは、ほんの一行でも『秘』区分に指定されることになってんだよ。松永も言ってたが、あんたちょっと気が弱すぎる。おまけに、考えてることがすぐ顔に出るんだな。もう少し図太くならんと、ここじゃ生き残れないぞ」
 比留川は、半分笑いながら、書類一式をまとめて美紗に押し付けた。美紗は、聞き取れないほど小さな声で、すみません、と答えた。気にしていることをあからさまに指摘され、悲しくなった。それがまた、態度に出る。ついさっきまで盛大に愚痴をこぼしていた1等空尉の片桐までが、恰幅のいい直轄班長とますます小さく見える美紗のやり取りを、心配そうに見ていた。
「第五セッションが終わったら、うちの地域担当部の出席者はごっそり帰るはずだから、そのタイミングであんたも別室に移ればいい。質問は?」
 そう聞かれても、美紗には、指示されたこと以外に何を確認すべきかも分からない。
「まあ、場数を踏んでいけば、勝手も分かるし自信もつく。いよいよ困ったら、後で日垣1佐に助けてもらえ。別に怒られることもないだろ。今回はあんたのデビュー戦だからな」
 比留川が大きな笑い声を立てる横で、宮崎が浮かない顔の美紗に声をかけた。
「確かに、慣れないテーマでは話についていくのが難しいだろうから、まだ時間もあるし、会議に入る前に、テロ関係の資料を少し読んでいったほうがいいね。うちの情報データあされば、使えそうなのが出てくるはずだけど……」
「今、検索してます。ヒラ文ならプリントアウトしていいっすよね」
 美紗より早く、片桐が返事をする。比留川は、先輩二人の素早いサポートぶりを眺め、満足そうに目を細めた。