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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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10億円を持ったホームレス

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デリバリーガール



札幌駅近くのホテルに入ろうとした時、若い男が白い封筒を手渡した。急に手渡されると無意識に受け取ってしまうものだと分かった。かばんに入れた。チェクインし部屋に入って封筒を開けてみると、若い女性の写真が10人ほどで目に付いた。「デリバリーガール」と見出しがあった。吉沢はすぐに内容が理解できた。ホテルは10日間の予約を入れたので、退屈しのぎに電話をかけた。
「お電話ありがとうございます。ご指名の娘がおりますか」
「旅先だから、誰でもいい」
「ありがとうございます。23歳の沙希を伺わせます。料金はチラシのご案内どうりです」
「どの位で来る」
「そちらのホテルでしたら30分です。フロントには知人が来ると連絡しておいてください」
 30分後に部屋のドアがノックされた。ドアを開けると、予想したイメージの女性が顔を見せた。
「中にどうぞ」
「沙希です」
「若いね」
「23歳です」
「大学卒業したくらいの年だね」
「そうです」
「酒は飲める」
「少しでしたら」
「外に出ようか」
「2時間ですから、やる時間無くなりますよ」
「延長は出来ない」
「予約が入って無ければ出来ますが、店に確認取らないと」
「そう、とりあえず外に行こう」
「料金頂きたいのですが」
「前金だったね。4万円だね」
「はい」
「1万円は君のチップ」
「嬉しいです。お客様と延長したいな」
「そう。いいよ」
沙希はすすきのを案内した。
「飲み代の予算は?」
「2人で飲めるところがいいな、君に任せる」
「そう、焼鳥屋でいいかな」
「いいよ」
吉沢は今までも体を合わせるだけの関係は持たなかった。性行為に何か相手に通じる気持ちが無ければ、それは自慰よりも空しいと思っていた。沙希は化粧で美しく見えるのかも知れないが、なぜこんな仕事をしているのか尋ねたくなった。それは酒を飲んでからにしようと思った。
 焼鳥屋はカウンターに5人ほど客がいた。
「お座敷空いてますか?」
「どうぞ」
 障子を閉めると個室に成る。
「落ち着いていいね」
「適当に注文します」
「任せる」
沙希はビールを注いでくれた。吉沢は沙希にビールを注いだ。
「お名前いいですか」
「吉沢ですよ」
「お仕事もいいですか」
「無職」
「社長さんでしょう」
「観える」
「時計高そうだもの」
吉沢が初めて贅沢をしたものであった。パルミジャーニ・フルーリエ製で
300万円ほどした。
「目が肥えてるよ」
「君のバッグも本物だろう」
ケリーのクロコダイルに観えた。
「お客から頂いたものだから、コピーかも」
「そう、君には地味かもしれない」
「おねだりしちゃおうかな」
「何が欲しい」
「本物のブランドバッグ」
「君がこの仕事に就いたきっかけを教えてくれたら」
「ほんとに買ってくれるの」
「いいよ」
沙希は嬉しそうな顔をした。単純なことで沙希の喜ぶ顔はまさに幸せに観えた。やはり金の魔力はすごいものだと吉沢は感じた。