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BEAT~我が家の兄貴はロックミュージシャン

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 今すぐにこの場から退散したい気分だが、この次兄を前に逃げるのは態とらしく、引き攣った笑顔を浮かべながら陸は始まるであろう兄たちの舌戦を想像して一応聞いてみた。
 「海兄、何したの…?」
 「何って、起こしただけだよ。こいつを起こすのは俺しかいないし」
 「普通に起こしてない…よね?」
 「俺にとっては普通だけど?愛のモーニングコールさ」
 何をしたか、陸は理解った。 
 「何だよ、もやしになるよりはいいぞ~。鉄仮面の次にもやしじゃ、親父も墓の中で嘆くぞ。布団中で本当になっちまうぞ。もやしに」
 布団の中で、本当にモヤシが栽培できるか考え物だが、起こさなければ昼間まで起きないのが空だ。
 「もやしもやしと…!だからって、抱きつくんじゃねぇ」
 実にくだらない、兄弟喧嘩である。
 (ウチの兄貴達、本当に『BROTHERS』なのかなぁ…)
 陸がそう思うのも、無理はない。
 「やっぱり…」
 「呼んでも起きないし。あの、もやし…」
 にっこり笑う空の背後から、スリッパが飛んで来る。
 「物は大事にしようねぇ…、もやしくん」
 見事スコーンと後頭部に命中したスリッパを拾い、海は反省も懲りてもいないのが陸にも理解った。双子の口喧嘩は天道家お馴染みの光景だが、『BROTHERS』のとしての切り替えはそれは見事なものだ。
 「陸、そろそろ行かないと遅刻するよ」
 「いけね」
 パンを口に挟み、リュックを背負いつつ去っていく末っ子を見送りながら、海は改めて空に視線を戻した。その表情はさっきとは別人だ。
 「―――今月発売の『LEGEND』、もう見たか?」
 『LEGEND』は創刊五十年の音楽専門誌である。その名の通り、取り上げられるアーティストは大物揃いだ。
 「俺の所為だ」
 二人の前には、その音楽専門誌『LEGEND』の月刊誌があった。そこには、一人の壮年男性の写真が載っている。神崎芸能事務所の社長、神崎竜二。
 神崎竜二は、昔ミュージシャンだったと云う。カリスマと云われた天才ギターリストは、二十二年前、日本から突然消えた。
 神崎が何故帰って来たのか、今の二人には嫌と云うほど理解る。天童家と全く関わりがないと云うのなら無視が出来たが。
 (冗談じゃない)
 記事を読んだ海は、思わず心の中で叫んだ。
 「あの叔父貴にその顔、台無しにされない事を祈るんだな。俺は同じ面(ツラ)、家の中でも見なくて済むが」
 「…冗談きついぞ、空」
 「冗談ですめばいいが?」
 とことん容赦ない空の言葉に、とてもその叔父には云えないと思った、海である。
 「海の悪い癖は、馬鹿正直な所だな。直ぐに態度に出る」
 「素直って、どうして云えないかなぁ~」
 「そんな可愛いタマに見えないが?」
 「お互い様だ」
 武道館のステージに立つと云う夢のため、立ち止まる事は出来ない。
 例え、どんな困難が立ち塞がろうとも