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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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ゾンビで始めるハローワーク

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「なにかいい仕事ないですか?」

「ないですねぇ」

ハローワークでのこのやり取りも何度目だろう。
ただでさえゾンビは人間より劣ると思われてるので、
なかなか働き口が見つからない。

見つかったとしても
ゾンビが襲ってくると思われてすぐに辞めさせられる。

「このままじゃ毎日の食事もままなりません」

「ははは、ゾンビなのに?」

「ゾンビでも普通の食事はとるんですよ!」

職員は半笑いの顔で1枚の書類を出した。

「……これなんかどうですか?
 あなたにぴったりだと思いますよ」

「かませ……役?」

「そうそう、かませ役。
 この世界には1位を盛り上げてくれる役が必要なわけ。
 ゾンビならこの仕事うってつけだと思うけど?」

「まあ、ほかに選択肢もなさそうですし……」

しょうがないのでかませ役としての仕事を始めた。
最初の仕事は、どこかの会社に入社することだった。

「新入社員のゾンビ男くんだ。
 なんでも、過去に1流企業に勤めていて
 当時は営業成績もトップだったみたいだよ」

会社の職員たちはどよめいた。
もちろん、そんなたいそうな肩書は身に覚えがない。

けれど、これもかませ役の仕事のうち。

仕事場に入るやいなや、ことさらに挑発を繰り返した。

「やぁ、君たち下流人間とは違って
 俺のような完璧パーフェクトゾンビの方が仕事が早いぜ」

数日後、変化はすぐに訪れた。
これまでただ与えられているものをこなすだけだった社員が
ゾンビに小馬鹿にされたことが許せなくてやる気全開。

ここから先が、かませ役の腕の見せどころ。

「そっ! そんな馬鹿な!
 こいつにこんな力があったなんて!!」

やりすぎなぐらいに敗北した感でリアクションする。
すると、自分を上回った相手は自分の能力を信じて
さらに頑張ってくれるようになる。

人のやる気を出させるためのカンフル剤。
それがかませ役という仕事。

「たしかに、これは天職かもしれない!」

ゾンビの能力はよほどのことがない限り人間より劣る。
それだけに「ゾンビに負けた」屈辱感がバネになり
かませ役としての効果を最大限に出してくれる。

この1件からかませ役の依頼はどんどん入るようになり
ゾンビが過労死するほど忙しくなった。



「ふふふ、君ら人間はゾンビの俺より劣るなんて」

「こ、こんなはずでは! こんなはずではぁぁぁ!!」

「やれやれ、ここにいる人間どもはみんな無能だ!」

「やっぱり人間には勝てなかったよ……」

ひとつの会社にとどまらずに、
かませ役としてさまざまな仕事を経験していった。

かませ役の仕事もどんどん上達していくにつれ、
だんだんと自分の心の中にわだかまりができてきた。

そして、またハローワークへと向かった。


「ええ!? かませ役を辞めたい!?」

「はい。いろんな仕事を経験しているうちに、
 やっぱりかませ役として全部終わるのはいやなんです。
 どんな仕事でもいいので、回してもらえませんか?」

「ないない。ゾンビを雇ってくれる仕事なんてない。
 どうせゾンビなんて"あ゛~"って言うだけのトロい生き物なんだし」

「でも……いつまでもこんな扱いは嫌なんです」

「しつこいな!! ゾンビが就ける仕事なんてないんだよ!
 かませ役がゾンビには一番ふさわしいんだ!」

職員はついに怒って机をバンとたたいた。

「何度も言うが、お前みたいなゾンビに
 まっとうな仕事なんてあるわけない。あきらめろ」

「……そうですか」

そこで、ふと気が付いた。

「いえ、ありました。ありましたよ!
 新しい就職口が見つかりました! 俺はそこに就きます!」





数日後、ハローワークに新入社員がやってきた。

「いやぁ君のような人材がいて助かったよ。
 クビにしたゾンビの職員だけどね、
 あいつは無能で使えなかったから、君と交換したんだ」

「ありがとうございいます。
 いつも通っていたこの場所で働けるなんて嬉しいです」

社長とほくほく顔で握手を交わす。

「クビにしたゾンビの社員だけど、
 今はかませ役として働いているそうだよ。
 あれ? たしか君とは面識があったんだっけ」

「ええ、あの人が人間のときに何度か」

「そうだったのか。
 でも、いろんな会社を経験した君の方が
 ずっとずっと有能なゾンビだよ。ほこりたまえ」

社長の言葉に顔がほころんだ。


「はい、彼にはいい噛ませ役になってもらいました♪」