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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 25

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第87章 アネモスの大戦、冥界のカロン


 世界を守るため、そして親友の無念をはらすため、ガルシア達九人は、元ギアナ村の東、その昔アネモス族が住んでいたと言われる地へ向かっていた。
 アネモス族には代々、未来を予知する能力を持つ者が生まれ、そうした能力を持つ者が集落を統治していたという。
 そしてある時、大悪魔デュラハンの来襲を予知する統治者が生まれてしまい、アネモス族は総出で天界の神々へ救いを求めるべくアネモス神殿を造り上げた。
 その時のアネモス族の長が予見したのは、アテカ大陸最北端の灯台が灯るとき、翼を携える船が空を現れ、その船に乗る者が、世界に点在する四つ全ての灯台を灯し、その時に大悪魔が降臨する、といったものだった。
 船が飛ぶこと自体、途方もない話であったが、アネモス族に備わる予知能力に狂いはなかった。それより遥か昔も大災害を予知し、見事に的中させてしまったという実績があった。
 それ故にアネモス族は、一族の終焉を怖れ、どうにか神からの救いの手が伸びることを願い、信仰のために神殿を建てたのだった。
 そうして彼らに救いの手を差し伸べたのが、風の神アネモイであった。
 その神の手によって、アネモス族の集落は地上を離れる事になったのだった。これは、ギアナ村の東の大地に穿たれた巨大なクレーターの正体とされる話である。
 地上を去ることによって、アネモス族は皆救われた。そのように思えたのもつかの間であった。
 アネモス族の予知通り、天界に大悪魔デュラハンが軍勢を率いて侵攻し、天界は火の海へと沈んだ。
 アネモイの神々により、天界へとその集落ごと、ウェイアードから逃げ延びたはずのアネモス族であるが、皮肉な事に、アネモイの神々の救いによって、アネモス族は地上のどの人間よりも早く滅びを迎えることとなってしまった。
 しかし、ギアナの民と結ばれ、地上に残ったアネモス族だけはその血筋を絶やすことはなかった。それでも今や、アネモス族の血を引くものは二人の姉弟だけとなっている。
 世界に再び現れたデュラハンは今、アネモス族が生き延びるために造り上げたという神殿を根城としている。
 アネモス神殿は風の神、アネモイの力なくしては決して門が開かれる事のない聖地であった。そのアネモイの神々はデュラハンの手にかかり、力を奪われる事となってしまった。
 デュラハンはアネモイの力を使い、アネモス神殿を居城としたのだった。
 アネモイの力がない限り、決して開く事のない性質上、デュラハンの魔の手から逃れるべく造られた神殿が、その力を手に入れたデュラハンに乗っ取られてしまうことになった。
 アネモス族にとって、この上ない皮肉な話である。
 そして、その数奇な因果は、九人の戦士達によって断ち切られようとしていた。
「ここが、アネモス神殿……」
 一言呟いたのはガルシアだった。
 彼らの目前に佇む厳かな神殿こそが、アネモス族が保身のために築き上げたアネモス神殿に違いなかった。
 この神殿に、ロビンの仇であるデュラハンがおり、そして太陽神ソルに導かれし虹の女神イリスと、アネモス族との関係性が根強く示唆され、アネモスの巫女と呼ばれる仲間、シバが囚われている。
 荘厳な造りのアネモス神殿には、内部に入るための門扉が一切窺えない。鼠の入れる隙間はおろか、蟻一匹たりとも侵入できる穴もない。
 アネモス神殿は、アネモスの、並びにアネモイの神々の力なくしては決して入ることはかなわない。
「ここはボクに任せてください」
 アネモス族の血を引くたった二人姉弟の末裔の内、弟であるイワンが一歩前に出る。
「頼むぞ、イワン」
「ええ……」
 イワンはゆっくりと神殿の前へと進んだ。そして壁の連なる中の一部に目を向ける。
『イマジン』
 イワンは真実を見抜くエナジーを発動する。エナジーによって青く輝く瞳には、アネモス神殿の真の姿が映り込んだ。
 その中でイワンは、アネモス神殿の門扉を発見した。
「皆さん、ボクの近くに来てください。真実の領域を開いて、皆さんにもボクの目に映る神殿の姿をお見せします」
 ガルシア達は言われた通り、イワンの側に寄った。
 そしてイワンはエナジーを展開し、辺りを真実を明らかとする領域を開いた。「見える、見えるぜ! あれが扉だな、よし、行くぜ!」
 ジェラルドは門扉が見えた瞬間、扉を開こうと駆け寄った。
「待ってください、ジェラルド。その扉は偽物です!」
 イワンやシバ、ハモが使うアネモス族の力の一つ、真実を暴き出す『イマジン』を発動している間は、いかなる虚も真に変える力がある。
 それにも関わらず、イワンは姿を現したアネモス神殿扉を偽と言い切った。
「何を言ってんだよイワン、『イマジン』を使ってて偽物って事はないだろう?」
「ええ、ジェラルド、確かにそれは神殿の中に入れる扉なのですが、最奥まで行くことはできないのです」
「あん? イワン、お前何言ってんだ?」
 ジェラルドは得心がいかず、眉根を寄せた。他の者も理解できないようだった。
「まさか、ここまで来て今更怖じ気付いたのかしら……?」
 メガエラは挑発的な物言いをする。
「……確かに、怖くないと言えば嘘になりますが……」
 ロビンを一瞬の内に殺し、ギアナ村を崩壊させたデュラハンを相手取っている。イワンには多少なりとも恐怖心はあった。
「ですが、ボクは本当の事を言っています。そこからでは中に侵入できませんよ」
「ふん、信用ならないわね。私は行くわよ、この手で必ずデュラハンを葬ってやるわ!」
 メガエラはイワンの忠告を聞き入れず、アネモス神殿の門を開いて中に進もうと飛び出してしまった。
「イワン、お前を信じてないわけじゃないけど、せっかく入口らしきものを見つけたんだ。オレも行く!」
 ジェラルドはメガエラの後に続いていく。
「そんな、ダメです! そんな軽はずみに行っては、ワナかもしれませんのに!」
 イワンが引き止めるにも関わらず、二人は偽の入口に突っ込んでいってしまった。
 メガエラが扉に触れると、門はいとも容易く開いた。そしてその先を覗く。
「えっ……!?」
「なっ、なんだこりゃ!」
 二人は驚きの声を上げた。
 扉の先にあったもの、それは致命的な罠ではなかったが、二人が驚くのも無理はなかった。
 アネモス神殿唯一の入口と思われる扉の先は、数メートル先が完全に壁で塞がれていた。
 二人は上下左右を調べるが、それらのどこにも他の道らしきものはない。あるのはやはり、数メートル先に行き止まりが立ち塞がるだけである。
「どうやら、別に危険なワナはなかったようですね。これでお二人も分かったでしょう? その扉は偽物だと」
 イワンは少し安堵した様子で話す。
「アネモス族はボクと類似した力を持つせいか、偽の真実という矛盾したものが作れたようですね……」
 イワンの言う偽の真実とは、真実の領域を開く『イマジン』の中であっても偽の入口を本物に見せかける、そのようなものであった。
 アネモスのエナジー、『イマジン』を十分に使いこなせない事には、この偽の入口によって真実を見通せないばかりか、行き止まりにはまって逆に惑わされてしまう事になる。
 風のエナジーの神秘を会得したアネモス族特有の罠であった。