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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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俺の体は2つしかない!

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「それじゃ明日、打ち合わせします」
「明日遊びに行かない?」
「明日どうしても頼みたいことがあるんだ」

「くっ……そろそろ自分支店を出すしかないか」

もう俺ひとりでは、「俺」をすることができない。
支店を出して分担していく方がいいだろう。

さっそく、「俺」の面接が俺によって行われた。

応募者は履歴書をもって会場に入ってくる。

「以前から、誰かの支店として活動したいと思ってました!」
「動機が嘘っぽいのでダメ」

「つーか、支店になればー金もらえるんスよねー」
「金目当てなのでダメ」


「以前は山田さんの支店をやっていました。
 ぜひ、あなたの支店をやりたいです、よろしくお願いします」

20人目の「俺」応募者にしていい感じの人が来た。

支店になるとたまに勘違いして、
自分こそオリジナルと思い始める危険もあったが
別の支店経験者ならその点は大丈夫そうだ。

「それじゃ君に「俺」をお願いするよ」
「ありがとうございます!」

こうして、俺2号がきまった。




翌日、さっそく2号は俺の代わりに日常を過ごすことに。

俺の代わりに打ち合わせに参加し、
俺の代わりに遊びに行って、
俺の代わりに頼みを聞いていく。

「いやあ、楽ちん楽ちん♪
 最初からこうしていればよかったなぁ」

2号が俺の代わりになってくれているおかげで、
思う存分だらだらし放題。

ただ、それでも初めての支店ということで……。

「……本当に大丈夫かな」

時間がたつほどに、ちゃんと「俺」ができているか不安になってきた。
昨日の面接ではいい感じだったので、
問題ないと思うが同時に不安との板挟みになる。

「や、やっぱり見に行こう!」

大丈夫だと思うが、やっぱり気になるので2号を見に行くことに。


2号が俺の代わりに仕事をしているかどうか見に行くと、
ものすごい怒鳴り声が途中で聞こえてきた。

「なんだその口のきき方は! それでも社会人かっ!」

「ちっ……うぜぇな……」

「貴様! 上司に向かってうぜぇとは何事か!!」

慌てて2号のもとに駆け寄る。
上司としては同じ顔の人間が現れたので驚いている。

「お、おい! なにしてるんだよ!
 ちゃんと「俺」の代わりにやってるんじゃないのか!」

「だって、オレは支店ッスから」

「んなことわかってるよ! 俺が依頼したんだから!」

「じゃなくて、別の人の支店ッスもん」

「……は?」

よくよく話を聞いてみると、
昨日の面接に来ていた男がオリジナルで、
今日に「俺」の代わりをしているコイツは2号なんだという。

「ま、オレっち毎日ヒマっすからねー時間はあるんス」

「だろうね! 誰もお前に仕事頼まないからだろ!
 信頼される人間は頼まれるから時間ないんだよ!」

とにかくすぐに支店契約を解除した。

2号を使えなくなるのは痛かったが、
こんないい加減な男に「俺」を任せるわけにはいかない。

今後、「俺」支店をまかせるときは
そいつが支店じゃないかどうかも確認しなくては。

「まったく……支店を任せられたのを支店に頼むなんて、
 いったいどういう神経しているんだか」

なんだか疲れてしまった。
新2号探しはまた今度にして、家に帰った。





家につくと、俺が待っていた。

「おかえり、俺2号」