小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

あなたは今日死んでいる

INDEX|1ページ/1ページ|

 
「ハッピーDEATHデイ、ディアあなた~。
 ハッピーDEATHデイ、トゥユー」

ケーキに立てられたろうそくを一気に吹き消す。

今日は俺の死亡日。
まだ死んでないけど、将来死ぬ日は決まっている。

「今年も死ななかったね」

「まだ死ぬ年連じゃないに決まってるだろ。
 あと30年、40年後の今日に死ぬんだよ」

それに、事故で死ぬとしても
こうして毎年死亡日を友達とお祝いしていれば
よほどの事故じゃない限り死ぬことはない。

「死亡日に、ろうそくで火事になったりして」

「あはは。そんなわけないだろ」

俺は笑った。
翌年に言い出した友達が死ぬなんて思いもしなかった。

死亡日にかつての恋人に殺されてしまったらしい。

「そんな……」

どこかで死亡日は今の自分とは遠いところにあって、
こんな簡単に、あっけなく訪れるとは思いもしなかった。


「ハッピーDEATHデイ、ディア俺~。
 ハッピーDEATHデイ、トゥユー」

ひとりきりで、ろうそくの火を吹き消した。

友達が死亡日に招いた元恋人によって殺された。
それ以来、誰かを自分の死亡日に招いてパーティしなくなった。

俺自身、いったいどこでどう恨みを買っているかわからない。
楽しく笑っているその陰で、殺意をくすぶらせているのかも。

「……でも、このまま死ぬのもなぁ」

もし、今年の死亡日に俺が死ぬとしても
誰もいない場所でただ孤独に死ぬのは寂しい。

ふと、カーテンを開けた時だった。

一瞬だけ見えていた人影が、一瞬で物陰に隠れた。

「今のは……女だった」

体中に冷汗が流れて、身の危険を感じた。
女の知り合いはいない。
考えられるのは死亡日に俺を殺す役に決まっている。

俺は鍵を閉めて、部屋に閉じこもって布団をかぶり震えていた。

女はあきらめたのか、俺は今年の死亡日を乗り切ることができた。


「ハッピーDEATHデイ、ディア俺~。
 ハッピーDEATHデイ、トゥユー」

次の年も、俺はひとりでお祝いをしていた。
鍵も新しくして、ドアも窓も頑丈なものに作り替えた。

これなら、去年のあの女も押し入ることはできない。

死亡日を生き残れた安心に浸っている時だった。
黒い煙がどこからか部屋に入り込んでいる。

「……なんだ?」

気になって向かったのが運のつき。
俺の家が外から放火されていた。

逃げようにも煙を吸いすぎて体が思うように動かない。

頑丈に作り変えたせいで窓もドアも開けられない。

「うそ……これが……俺の死亡日……?」












「ハッピーDEATHデイ、ディア俺~。
 ハッピーDEATHデイ、トゥユー」

次の年、俺は彼女と死亡日をお祝いした。

「君が火を外から消してくれなかったら、
 もう今年の死亡日をお祝いすることはできなかったよ」

「あなたの家の近くでうろうろしている男がいたから、
 怪しいなと思って監視していたの」

俺は自分の窮地を救ってくれた女と晴れて付き合うことに。

「私の死亡日は、あなたとは別日だから
 こうして一緒にお祝いしている限りきっと安全だわ」

「そうだな。やっぱり人は一人じゃ生きられないんだね」

もう記念日なんてこりごりだ。
毎日、普通に生きていけることへのありがたさを実感する。

すると、彼女は電話をかけはじめた。

「はい、それじゃあホールケーキを1つお願いします」


ホールケーキ?


「なあ、どうしてホールケーキが必要なんだ?
 明日はなにかの記念日だったっけ?」

「何言っているのよ。
 明日は二人のケンカ記念日で、
 あさっては、二人の不倫記念日で
 しあさっては、二人の別居記念日じゃない」

二人になって激増した記念日が来るたび、
俺は毎年恐怖することになった。