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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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ニガウリだって夜空を見上げる。

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とっても暑い八月の中旬、お母さん畑を案内しようとお母さんの妹を連れて畑へと行った。

小さなあいちゃん(仮名;私)畑を簡単に紹介して、スイカと間違えてしまったカボチャを紹介した。
紹介しながらも私は、間違った事へのお詫びの気持ちからカボチャたちに頭を下げていた。

カメラを向けたらノリノリになったスイカたちも紹介した。

そんな風に紹介していたら、ドスンという音がした。
その方向を見ると、土の上に大きなニガウリが投げ捨てられていた。
飛んで来た方向を見ると、お母さんが独り言の愚痴を言いながらニガウリの収穫をしていた。
私は畑の案内に集中していたので、お母さんがいた事を忘れていた。
しかも私たちの場所からは見えないので、尚更分からなかった。

そして、私は投げ捨てられたニガウリが気になりすぐにそこへと足を向かわせた。
そのニガウリを拾い上げて、
『お母さん、これまだ食べられるけど、ここに置いたの?!それとも捨てたの?!』
と聞いたら、
『もう食べられない。捨てた、捨てた。』
と雑に返された。
私はその拾ったニガウリを見つめた。
“まだ食べられると思うなぁ~。”
そう思っているとそのニガウリが、
『まだ、食べられるよ。』
と言って来た。
おっ!!と驚き、お母さんにニガウリを向けその言葉を伝えた。
『お母さん、ニガウリが、“まだ、食べられるよ。”だって。あっ、“少し柔らかいけど…。”だって。』
そう伝えると、
『まだ食べれる~…?!う~ん、食べ…ない。捨てる。』
と言い切った。
私はショックを受けたのにニガウリは、
『あっ、では食べないということでいいですか?!』
とお母さんに聞いて来た。
それを聞いてお母さんは、
『はい、食べま~せん。』
と言った。
またそれを聞いたニガウリは、
『はい、分かりました。では、土に返ります。』
と言った。
“土に返る?!”と考えながら、お母さんに伝えるとお母さんも、
『土に返る?!』
と手を止め考えていた。
そして、
『あっ、そういうことかぁ~。人間も野菜も死んだら土に返るってことか。』
とお母さんは納得していた。
私は手に持っているニガウリと向き合ってはお母さんにニガウリを向けて言い分を伝え、お母さんと向き合ってお母さんの言い分を聞けばニガウリと向き合いというやり取りを繰り返していた。
そんな中、お母さんの所からまたニガウリが飛んで来た。
最初のより大きい。
私はまたそれを拾って両手にニガウリとなって、
『お母さん、これもまだ食べれるよ。』
と言うと、そのニガウリもまた口を開き、
『食べれるよ~。う~ん、少し柔らかい…かなぁ~。でも、食べれるよ~。どうしますか~?!』
と聞いて来た。
お母さんは、
『う~ん、…食べ~ない。捨てる。』
と言った。
私としたら、本人がいる前で、しかも今採れたばかりの野菜に、“捨てる。”なんて言い難い…と思った。
お母さんは潔いのかなぁ~なんて思う。
ニガウリもショック受けてない所が、何故か私が傷付いてるし…。
そんなニガウリが、
『じゃあ、土に返るの?!』
とお母さんに聞いている。
『うん、そう。土に~返る!!』
お母さんはニガウリにそう言った。
私は心が痛いまま、両手のニガウリを交互に見て、
『お母さんが食べないと言うので、土に戻します。』
と伝えたら、
『は~い。土に戻りま~す。またねぇ~。』
と何のためらいもなく言った。
お母さんも何のためらいもなく、
『は~い、土に返ってくださ~い。またねぇ~。』
と手作業をしながらそう言った。
私だけが重い心…。
土に返すとはどうしたらいいのだろうかと右往左往しながら、
『ここでいいかなぁ~。ここに置きま~す。』
と何も野菜が育ってない土の上に、二つのニガウリを寝せるように揃えて置いた。
ニガウリたちは何も言わず、寝そべって空を見てる…。
不思議な光景だった。

そんなやり取りをお母さんの妹は初めて目の当たりにして、驚いてはいたけどニコニコして眺めていた。

その日の夜、布団に入った私の頭に夜空が映った。
何故夜空…?!とその景色を見ていたら声が聞こえた。
『星が綺麗ですね~。』
『こうして寝っ転がって空を見上げる事なんてないですからね~。』
『こんな経験もたまにはいいですね~。食べられるだけじゃなくて、こんな形で土に返って行くのもいいですね~。』
とあのニガウリ二つの会話が聞こえた。
今、あのニガウリたちは星を眺めてるんだと知ると、傷んだ心のモヤモヤが何故か消え、私も頭の中に映っている夜空をしばらく一緒に眺めた。

それから一ヶ月後、お母さんの家へと帰った私は発見した!!
変な所から芽が出ているニガウリを!!
あんな事などすっかり忘れていた私は、こんな所からニガウリ…?!と首を傾げたが、すぐに思い出した。
『あーーーっ、あの時のニガウリーーーっ!!ちゃんと二ヶ所から…。』
と驚いていたら、
『また生えた。』
とニガウリから聞こえた。

死んで誰かに生まれ変わるとか聞くけれど、生まれ変わってもニガウリはニガウリ、誰かになるわけでもないんだなぁ~と知った瞬間だった。