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南山あおい
南山あおい
novelistID. 58068
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永遠とは、無限とは。

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手帳に日々の切れ端がメモしてあることがある。

掃除をしてたら青色の懐かしい表紙が見えて、何気なく開いたページに、学生の頃の自分の文字が、楽しそうに踊っていた。


5月5日 日曜日

今日は…今まで散々バカにしてごめんなさいと思った。ごめんなさい。
帰ってきたのは3時ごろで、その後ごみ箱買いに行きました。


なんの変哲もない、ありふれた日曜日のできごとがこの後にも書き連ねられている。雑貨屋さんに買い物に行き、結局のところ、買いたいものは何も買えなかったこと。その後、夕飯をどこで食べたのかということ。そして、この日は、大好きだった彼が念願の車を手にして実家から帰ってきた日なのだけれど、それについての心配ごと。当時、仲間うちでまことしやかに語られていた、「彼氏が車をもつと別れる」というジンクスについて。そして、最後にこう締めくくられるのだ。


これを読み返してる大人の私は笑うかな?懐かしむかな?


あの頃のわたしは、なりふり構わず前に進んでいた。過去のわたしが、その頃のわたしを支え、輝かしい未来に向かって歩みを進めている、そんな風に自負していた。踏み出した一歩は、間違いなく最良の選択である、と。その何か月後かに自ら告げた、別れという決断でさえも。
満たされる、ということは、喪うことに対してひどく鈍感になることなのだろう。それは、グラスに注がれすぎた水が、だらだらと溢れ出すのに似ている。実際には失っているのに、現実的な喪失感はない。今ならわかる。わたしがどれだけ甘えていたのか、安心しきっていたのか。水を絶って初めて、わたしは渇いていく自分に気づいた。

あれから10年、たくさんのたらればが、過去から不意に追いかけてくることがある。わたしにとって、永遠という言葉も、無限という言葉も、彼方への広がりを表す言葉ではない。選ばなかった果てしない数の選択肢と、その先に待っていたであろう手にすることのなかった未来。それを繰り返し反芻する作業の中に、永遠も無限も存在している。そして、今日もじっと、その波が去っていくのを耳を塞いで待っている。


2005年5月5日の日曜日。わたしの、あさはかで無邪気な未来予想図。
次の日からは、また白紙の手帳。
満たされている時、日記が書けない癖は、まだ直らないままで。