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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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「もう一つの戦争」 最終回

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「良かった、裕美子さん。心配したのよ」

「しづさん・・・すみませんでした」

「いいのよ、美幸ちゃんを抱きしめてあげて」

裕美子は美幸の身体に手を回した。嗚咽が続く病室で医師も看護婦も泣いていた。
奇跡の生還をしたと言う思いが感動的だったのだろう。
誕生日のプレゼントは壊れてしまったけど、母親の命が助かったことが大きなプレゼントだと美幸は感じていた。

「おかあさん、美幸は今日から何も欲しがらないから安心して。お母さんの命が一生分の贈り物だから」

裕美子は流れ落ちる涙と共に運命が変えられたことへの嬉しさで神に感謝した。
怪我が回復したら伊豆へ戻って幸一の両親と暮らそうと決心した。
そしてこのことが大きな運命の流れを変えたのか、大久保しづ夫婦は東京に行かなかった。
裕美子は美幸を連れて修善寺に帰り、女将の旅館の再開を手伝った。
幸一の両親は元の家に戻り戦争から帰って来ていた幸一の弟と暮らしていた。

お嫁さんが来ていた幸一の両親は裕美子とは暮らせない状況になっていた。
それは離れていたので仕方のないことだった。
女将の信子は再婚もしないで旅館の経営に奮闘した。
平和な時代と高度成長の流れで旅館業は賑わいをみせ、裕美子も若女将と呼ばれて忙しい毎日を過ごしていた。

裕美子には再婚話もたくさん来ていたが夫幸一の生き方を考えるとしたいとは思わなかった。美幸が結婚して自分に孫が出来て人生を全うできた幸せを心から出会った人、支えてくれた人、そして夫幸一、女将信子、助けてくれた山本五十六、運命の出会いだった大久保しづ、何よりも未来の美幸おばあちゃんに感謝すると共に、あの世での再会に胸を膨らませていた。

「もう一つの戦争」 終わり。