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てっしゅう
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「もう一つの戦争」 最終章2.

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戦後の復興が急ピッチで進められる中、独り身だったしづは再婚した。同じように戦争で子供を亡くした男性と人生をやり直す決意をしたのだ。
裕美子はそして自らの決心でしづを支えたいと思い、伊豆に帰ることを拒んだ。
やがて祖母に教えられた歴史からはしづたちが東京に向かうことだろう。
その時までに自分の命が途絶えるのならそれに従おうと運命には逆らわないことに決めていた。

その最大の理由は、大きな運命に逆らってこの時代へと来たことが一番意味を成すのであって、自分が変えられるような運命はもう存在しないという真実だった。
たった一つだけ、もし生きていたら東京には着いてゆかないと言おうと思っていた。
幸一の両親には頼んでこちらに来てもらうか、時折会いにゆくことで了解してもらおうと考えている。

日本は昭和二十六年九月にサンフランシスコ講和条約への署名で日本国は戦後を終了させた。
翌二十七年四月二十八日に条約は発効して、GHQによる占領支配は終了し独立国家として歩みだした。

この時美幸は十歳の誕生日を前にしていた。
小学校から帰って来て、裕美子と誕生日にどんなお祝いをしてくれるのか聞いていた。

「ねえ、お母さん、明日の誕生日には何買ってくれるの?」

「そうね、何がいいかしら?」

「お洋服買って!」

「洋服?学校に着てゆきたいの?」

「ううん、お父さんのお墓参りに着てゆきたいの。日本はもう独立国になったのよね。お父さんたちのお蔭だと先生が話してくれた。だからお礼にと思って」

「そう、偉いわね。そういうことが言えるだなんて。そうしましょう。鹿児島のデパートに行って買ってきてあげるわね。どんなのが良いかしら?」

「ほんと!嬉しい。水玉のワンピースが良いなあ~」

「かわいいよね。じゃあ白のワンピースを選んでくるね。明日学校から帰ってきたら渡せるように戻ってくるから」

「うん、ありがとう」