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糸魚川 翡翠
糸魚川 翡翠
novelistID. 57856
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囚人と青い鍵 1

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2 萌(翡翠side)


「えー、シャンポリオンと言えばフランスの考古学者で、ナポレオンのエジプト遠征時に発見されたロゼッタストーンを解読したことで有名ですが、実はこのシャンポリオンの書いた別の論文によると……」

だめだ、講義が全然頭に入ってこない。5限だからとかいう問題じゃない。大好きな世界史なのに全然集中できないなんて、こりゃ重症だな。
あぁ、やっぱ今日睡眠足りてないのかな。
あんなこともあったし、頭の整理がつかないって。

「では、今日はここまで。」

やっば、全然聞いてなかった…。

「ひーちゃん、何ぼーっとしてんの?ひーちゃんってば。おーい、生きてるー?」
「ん、あぁ、萌か。」

彼女は楠 萌(くすのき もえ)
数少ない私の友達。可愛くて女子力満開なのに、いろいろとズレてる。

「ひーちゃん聞いて聞いて!今日ね、すっごくびっくりしたことがあったんだよ!」
「ん、なんだよ。」

今朝あれだけのことがあったんだ。そうそう驚かないよ。

「ホントなんだから信じてね?」
「まず内容を言え。」
「あのね、うちにボーカロイドが届いたの!しかも、人型なんだよ!」

っ!!他にもいたのか!?
飲もうとした午後ティーを吹き出しそうになる。

「びっくりした?もしかしてひーちゃん、冗談だと思って信じてない?」
「いや、信じる。ごめん、なんでもないから今のは気にしないで。」
「そりゃ、ひーちゃんだってびっくりだよねぇ、萌もすっごくびっくりしたもん。あのね、リンちゃんとレンくんっていうんだよ。双子でね、すっごく可愛いの!今度ひーちゃんにも紹介するね!」
「あぁ、うん。よろしく。」

カイト一人でさえ面倒なのに、萌のところは二人なのか。というか、順応するの早くね!?まぁ、萌ならわからなくもない。

「ひーちゃんまだぼーっとしてるね?なんか考えごと?なんかあったらいつでも萌に言ってね。萌、すっごく役に立つよ。」
「自分で言うな。あとお前の役に立つは宇宙人っぽいことが起きそうで怖い。」
「宇宙人っぽいことってなによー」
「お前しょっちゅう宇宙人と通信してそう。」
「そっかぁ、だからリンちゃんとレンくんがうちにきたんだね♪」
「してたんかい! あ、そうだ。さっきの講義、ノートとってた?」
「うん!」
満面の笑みでノートを開く萌。

開いたページには、いろんなものがカラフルに描かれていて、さっぱり解読できなかった。かろうじて、動物園の絵かもしれない、ってくらいだ。

「お前、なに描いてんだよ。」
「ノートとってないひーちゃんに言われたくはないな」
「珍しく正論…って、お前も同じだろうが!」
「じゃ、二人が待ってるから先帰るねー☆」
「あぁ、またね。」

私も、帰ろう。カイトに留守番させたままだし。
そうだ、帰りにアイス買っていこう。あいつ、好きだって言ってたし。
…なんでこんなこと思い出すんだよ。
てか、ボーカロイドは食べ物食えるのか?
まぁ、あいつが食えなかったら私が食べればいい。朝の様子を見るに、食べられるんだろうけど。

作品名:囚人と青い鍵 1 作家名:糸魚川 翡翠