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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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9月23日はBブロックがバカの日

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「現在、日本ではクリエイティブな環境が失われています。
 そこで"バカの日"を作りました。
 該当ブロックの国民は思う存分バカになってください」

日本の地域ごとに区分けされて、
俺のいる関東地域はDブロックになった。

『ご覧ください! 今日はAブロックのバカの日!
 町の人はなにをしても許されるとあって……きゃあ!』

『バカの日最高~~!!』

テレビの中継にはマイクを奪って、
カメラにアップで映り込む若者の姿がお茶の間に届けられた。

「ああ、楽しそうだなぁ」

バカの日はどんなことしても許される。
法律でも裁かれないし、誰にも止められない。

俺はDブロックのバカの日をずっと待っていた。


――Dブロック バカの日 当日。


朝起きて日付をしっかり確認する。
ついに待ちに待ったバカの日。
今日は何をやっても許される。

……のはずだけど。

「どうするか……」

いざ当日になってみると、俺は普通の日常を送っていた。
今までため込んできたモラルや常識でがんじがらめにされて、
新しくバカをすることが怖いのだろうか。

「ダメだダメだ!
 きっと今日を無駄にしたら後で後悔する!」

わざと近所迷惑になるように大音量で音楽をかけて、
SNSにふざけて殺害予告を流して、
服を着ないで外を軽く走ったりしてみた。


「……何やってんだ俺」

その直後、ものすごい悲壮感が押し寄せてきた。

子供のころはバカなことを平気でやったけど、
羞恥心やプライドが凝り固まった今じゃバカをしても
ただただ心の中で自分の価値を低くしてしまうだけだ。

「辞めよう。やっぱり無理なんてすることないじゃないか」

そのとき、友達がやってきた。


「よお、ちょっと革命しに行こうぜ」

「か、革命?」

「今日はバカの日だろ。
 Dブロックの人はみんななんでも許される。
 だから全員でバカをやるほうが革命的に楽しいはずだ」

「なるほど!」

俺は二つ返事で友達についていった。
すでに俺以外にも声をかけているのか、
街には大量の人が友達からの"バカ命令"を待っていた。

「全員集まったな! 手始めに国会議事堂を破壊する!」

「「「 おおーー! 」」」

なんて意味のないことを。
最初はそう思ったけど、
みんなと一緒にバカをやるとこんなにも楽しいなんて。

「運動したら腹が減ったな! 全員で食い逃げだ――!」

「「「 おおーー! 」」」

まるでバカをやっていた学生時代に戻ったようだ。


「次は俺たちで渋滞を作ろうぜ! 道をふさぐんだ!」
「すべての家のインターホンを破壊しろ!」
「金持ちの車と貧乏な家の車を勝手に交換するぞー!」

次から次へと友達は"バカ命令"を出しては実行させた。
人の迷惑になるものから、なんの意味もないイタズラまで。

終わってみると、不思議な達成感で胸がいっぱいになった。

「ありがとう、お前のおかげでとても充実したよ」

「気にするな。俺もバカがやりたかっただけだ。
 それに正しいことも悪いことも、一緒に楽しむ人がいないとつまらない」

「ああ、そうだな」

「さあバカの日は終わりだ。常識人に戻ろうぜ」




翌日、けたたましいノックの音で目が覚めた。
そういえばインターホン破壊したんだった。

「……ふぁい」

寝ぼけながらドアを開けると、
いかつい男2人が立っていた。

「警察です」

背中に氷でも入れられたように、一気に背筋が伸びた。

「まさか……昨日の……?」

「お分かりですか、では署まで同行を」

「ちょっと待ってください!
 だって昨日はバカの日だったでしょ!?
 なにをしても許される日はずだ!」

「ええ、その通りです。
 昨日はどんなことをしても許されます」

もう一人の警察官はカバンから
プリントアウトしてきた紙を出した。


「ただね、ネットに出したものはずっと残り続けるんですよ。
 だから今日あなたを逮捕しに来たんです」


紙にはふざけて投稿した俺の殺害予告が載っていた。