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月とコンビニ
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novelistID. 53800
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食事

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『食事』
○男の子
○女の子

薄暗がり。
舞台上には、仮面ライダーの御面をつけた男の子とプリキュアの御面をつけた女の子。

女の子 ここは暗いの?
男の子 …。
女の子 あたし、それくらいは分かるのよ。
男の子 …。
女の子 顔、見えるの?
男の子 うん。
女の子 それくらいの光はあるのね。
男の子 …。
女の子 それともあなたの目が良いのかしら?
男の子 …。
女の子 うらやましいわ。とってもうらやましい。
男の子 …。
女の子 もし?
男の子 …。
女の子 ねえ、もし?
男の子 …。
女の子 聞こえているのかしら?
男の子 聞こえているよ。
女の子 あら、よかった。でも、なぜ返事をしないの?
男の子 …。
女の子 ねえ、もし?
男の子 人に言葉を掛けられるのは、久方ぶりなんだ。
女の子 あらあら、まあまあ。
男の子 …。
女の子 あたしも、よくお返事をせずに母様に叱られるの。でも、母様の気持ちも分かるわね。お返事はしなくては駄目よ。
男の子 …。
女の子 もし?
男の子 うん、わかった。
女の子 お返事をしないと、どこにいるのかわからないわ。置いて行かれたのではないかと不安になるの。あたし、歩くの遅いのよ?
男の子 ごめん。
女の子 謝ることではないの。
男の子 ごめん。
女の子 もう。
男の子 …。
女の子 ふう。
男の子 …きみって、へんなやつ。
女の子 あら、そんなことを言われたのははじめてよ。いつも、元気な子ねって言われるのだけれど…。お隣のフィラノおば様なんて、元気な子だからって、何かにつけてキャロットを食べさせようとするの。もちろん、とても美味しいのだけれど、元気とキャロットが結びつかないわ。とっても不思議よ。不思議よね?
男の子 え?
女の子 え?
男の子 え?
女の子 もう、お話を聞いていたの?
男の子 あ、うん。
女の子 右から左に抜けているのじゃないかしら? ああ、でもキャロットの話をしたらお腹がすいたわ。
男の子 やっぱり、へんなやつ。
女の子 あらあら、まあまあ。
男の子 …なに?
女の子 うふふ。
男の子 なに?
女の子 いじわる。
男の子 え?
女の子 意地悪なことを言っているわ。
男の子 あ、ごめん。
女の子 いいのよ、いいの。男の子は、気になる女の子に意地悪なことをするものだって姉様が言っていたわ。
男の子 へえ、そうなんだ。
女の子 …ねえ、お顔を触ってもいいかしら?
     ☆男の子よける
女の子 いないわ。
男の子 だめだよ。
女の子 どうして?
男の子 …。
女の子 気になるの。気になるのよ?
男の子 …。
女の子 いつからここにいるの?
男の子 前から。
女の子 外に出たいとは思わないの?
男の子 どうして?
女の子 日の光を浴びないと、人間おかしくなってしまうものなの。姉様なんて、日に2回はひなたぼっこをしているわ。
男の子 それは、いいものなの?
女の子 ええ、私も姉様もひなたぼっこをしながらうとうとするの。うとうとするって、楽しいものよ?
男の子 僕も、うとうとくらいするさ。
女の子 日が当たると、もっとうんとうとうとするのよ。
男の子 うんと?
女の子 日の光はね、ろうそくの明かりとは違うの。あたたかいの。
男の子 …。
女の子 あたし、それくらいは分かるのよ。
男の子 …。
女の子 あっ、お散歩だってあるわ。雨の匂いがしないときにはお散歩をするの。3時にアルが迎えに来てくれるのよ。3時はおやつの時間なのって言うのだけれど、いっつも3時なの。お仕事のお休みの時間なんだって。そして、アルってば決まって、「知ってるか。空を見てると地面が見えないんだぜ」なんて格好つけて言うのだけれど、お空と地面が逆さまにあるなんてこと、あたしだってお勉強で習っているわ。アルってば、本当にそんなことばかり自慢してくるの。そうだ、アルも、アルは? アル? ううん、フィラノおば様、紹介するわ。ねえ? ねえ、お散歩ってとってもいいものよ。もし? ねえ、もし?
男の子 聞こえてるよ。
女の子 …。
男の子 いいものだね。
女の子 え?
男の子 いいものだね。
女の子 うん、でしょう?
男の子 それでも僕は夜が好き。
女の子 …。
男の子 夜が、好きだよ。(言い聞かせる)
女の子 …。
男の子 どうしてた?
女の子 …。
男の子 みんなはどうしてた?
女の子 え、え?
男の子 言ってよ。
女の子 あっ。
男の子 ほらはやく。
女の子 あっ、あっ…。
男の子 母様は?
女の子 かっ、母様と父様は、ファージーのおじ様のところに何度も何度も…。でも、これは決まったことなんだって、家も仕事も取り上げるぞって。それでもいいって言ってくれて、だから、そんなのあたしが嫌だって…。
男の子 姉様は?
女の子 姉様は、あたしを抱きしめてずうっとずうっと、涙が枯れて無くなってしまうんじゃないかってくらい泣いてくれて…。
男の子 おば様は?
女の子 フィラノおば様は、ごめんねごめんねって、自分はあたしのせいで怪我をして、なのに…。
男の子 男の子は?
女の子 アルはっ、アルはっ…。
男の子 …。
女の子 アルの声が聞こえないのっ。どこにいるのっ。いつも手を引いて歩いてくれたのにっ、あたしを置いて行ってしまったのっ? あたしっ、あたし、歩くの遅いのよ? 
男の子 うん、うん。いいな、いいなぁ。
女の子 アル? ねえ、アル?
男の子 ああ、食べ物の話をしてたから…。
女の子 生まれ変わっても、あたしはアンタと恋に落ちるよ。(ボソッと)
男の子 ごめんね。

男の子は女の子を押し倒し、衝動に身を任せる。
作品名:食事 作家名:月とコンビニ