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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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ゆっくり進化する?!…お母さん畑。

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お母さんの家に帰って畑を手伝うことになった。
私が帰る前に結構野菜は植えられていた。
その中で空いてるスペースをあいちゃん(仮名;私)畑とした。

私はお母さん畑を一切手伝わないというルールを自分で勝手に決めた。
お母さんの友達から、
『思いやりが無いわぁ~。』
とか、
『お母さんは年なんだから手伝ってあげて~。』
とか言われたけど無視した。

お母さん畑を通って行った端っこにあいちゃん畑がある。
ということは、お母さん畑を見渡しながらあいちゃん畑へと行くわけだ。
雨じゃない日は必ず畑に出る。
もちろんお母さん畑は見るだけ…。

その中にトマトとナスが何本かいるのだが、誰に教わったのかちゃんと茎を支えるための棒を立てていた。
ちゃんとどちらの野菜も農業用の紐で止められていた。
トマトもナスもまだ背が低いので、紐で止めてあるのは一箇所だけ。
そのくらい小さな小さな野菜たち。
そしてまだまだ背の低い野菜たちを見て私はウンウンと肯き、心置きなく自分の畑へと行くのだ。

しかしそれも一週間が経ち、二週間が経ちとして行く中、トマトの異変に気付いた。
トマトが…地を這い始めた…。
あーあと私は思った。
ナスはどうだろうか…。
たぶん、首を傾げているわけじゃないと思う。
首を傾げさせられているだけなんだと思う。
お母さんが紐で止めてあげないから、トマトは地を這い出し、ナスは首を傾げさせられてしまった。
私は手伝わないけど、気付いたことは伝えていた。
伝えながらお母さんは驚きもせずに、平然と聞いている。
そして、
『知ってる。』
の一言。
呆れた私が、
『だから、トマトとナスが困ってるって言ってるの!!助けてあげて!!』
と言うと、お母さんは目を私に向けたまま口を畑の方に向けて、
『頑張って~。』
と冷たく言いやがった。
家と畑の間には倉庫があるので、見えない畑に向かってそう言った。
お母さんに言い返そうとしたら畑から声が聞こえた。
トマトもナスも変な体勢のまま、ため息混じりに、
『は~ぃ。』
と応えた。
倉庫を超えて私の耳へと届いた。
野菜たちが無理して頑張ってるように感じたので、そのことを言おうとしたらお母さんの方が先に、
『ほらみなさい。“はい。”って返事したじゃないの。お母さんの野菜なんだから、お母さんのやり方で大丈夫なの。』
と言ってきた。
野菜たちの気持ちは違うような気がしたので、私が代弁しようとしたら一番体勢が苦しそうなトマトが、
『いえ、そうじゃないですよ~、お母さ~ん。…結構…大変…。でも頑張ります…。』
と地面と顔を向き合わせているような格好でトマトがそう言った。
お母さんはそれを聞くと顔色が変わり、
『あっ、すみませ~ん。そのうちしま~す。』
と畑に向かって言った。
トマトがお母さんに、
『は~い、よろしくお願いしま~す。…でも期待してませ~ん。』
と本音?!を言ってきた。
お母さんはそのまま畑に向かって、
『あっ、よ、よくお分かりで…。でも、ちゃんとしますよ~。』
と自信なく応えていた。
何故だろうかトマトは返事をしなかった。
そしてお母さんもなかなかトマトとナスの手助けをしなかった。
動物だけじゃなく、野菜も飼い主に似るのかもしれないと思った。
野菜たちもお母さんを無視するし、お母さんもトマトとナスに手を差し伸べないし…。
持ちつ持たれつになっていないようで、なってるのかも…。

畑の真ん中は、畑を行き来しやすいように道になっている。
右にトマトとナスがいて、道を挟んで左にニガウリときゅうりがいる。
これも私が帰った時には、もう植えられていた。
でもまだ植えたばかりだったのか、自分の力で立っているほどの背丈だった。
帰ったその日は、ほとんど野菜からの言葉はなかった。
でもだんだんと聞こえ始めた。
きゅうりのツルが一本、二本と伸び始めていた。
その二本が気持ちよさそうに、両手を左右に伸ばしているようにも見えた。
“ガンバレ~。”
と心から声をかける。
『は~い、頑張ってるよ~。…お母さんは声をかけないけど~。』
といらぬ一言が聞こえたが…、まあいいとした。
ニガウリはどうだろうか…。
ニガウリの方が伸びているツルの本数が少し多い。
しかもニガウリのツルはきゅうりと比べて細いので、すぐに絡まり合う。
…でもまだそこまでには至っていない。
それも私は見て、ウンウンと肯きながら同じく、
“ガンバレ~。”
とこれも心から声をかけた。
『ありがと~。お母さんに早く網を作って~って伝えて~。早くしないとこれがこうなる。』
と言って来た。
これがこうなる…?!と思った私はニガウリの言う部分を見た。
“ツルの行き場がないのかぁ~!!”
と思ったら、ニガウリに、
『そう~。だから早くお母さ~ん!!』
と訴えだした。
結構、切羽詰まってる気配…。
あいちゃん畑に向かっていたけれでも、そう言われるとあいちゃん畑へは向かえない。
だから私は急いで家の中にいるお母さんの元へと踵を返し向かった。

キッチンにいたお母さんに伝えた。
『うん、それも分かってる。でも、まだ大丈夫だから…。大丈夫ですよねぇ~。そのうちしま~す。』
と畑に向かって言った。
きゅうりとニガウリのため息混じりの返事だけが聞こえた。
間に挟まれた私の心の行き場がなくなる…。
どうしたら良いんだろうか…とあっちに行ったりこっちに行ったりして答えを探す。
結局、お母さんの重たい心の腰がいつ上がるのかとみんなで待つしかなかった。
私はひたすらお母さん畑の野菜たちの愚痴を聞きながら励ましていた。
たまに、みんなと一緒になってお母さんの愚痴も言っていた。
お母さんが畑にいでもしたならば、細い目で見られる時もあった。
一応、私はみんなの言い分を代弁してあげる。
『お母さんが文句を言うのはおかしい。文句言うくらいなら、ちゃんとしてあげて。』
と伝える。
お母さんはもちろん言い返してくる。
『別に文句を言ってません。そっちを見ただけです。』
と…。
日々こんな事を繰り返し送っていた。
それでもなかなかツルを這わせる物を用意しなかった。

それから、十日ほどが経ってからか、私は自分の畑の土を耕していた。
お母さんも畑にいた…が、何処かに姿を消した。
まあいいやと無視して土を耕す私。
何か音がしたのでそっちの方を見ると、お母さんが緑の支柱を倉庫から持って来て畑にほっぽり出した音だった。
そしてまたお母さんが何処かに消えた。
そしてしばらくしてまた音がした。
また支柱を持って来た。
そのお母さんに私は声をかけた。
『まさか…、ついに…、ニガウリときゅうりのやつ作るの~?!』
と聞いたら、お母さんが睨みを利かせ唸るような声で、
『う゛~ん゛っ!!』
と返事をした。
ニガウリもきゅうりも一応喜んだけど、それはお母さんに気遣ってだとすごく感じた。
あんまり声をかけるとうるさそうなので、私は自分の作業に集中した。
…でも何処からか声が聞こえる…。
『あー、どうしたらいいんだろう…。どうやってするか…。』
と聞こえて来る。
そっちの方向を見ると、もちろんそれはお母さん。
地面に支柱を置いて、仮の出来た状況を想定中…。
私はそれを遠くから見ている。