小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

ピーターパン張り込み中につき

INDEX|1ページ/1ページ|

 
「ターゲットは?」
「まだ動きありません」

二人の刑事は電柱の陰でとある一室を張り込んでいる。

「先輩、本当に現れるんですかね」

「間違いなくピーターパンは現れる。
 そして、ウェンディを連れ去りにやってくる」

「大事な一人娘をどこぞの馬の骨にネバーランドへ連れてかれるんだから、
 依頼した父親の気持ちも少しわかりますね……」

「ネバーランドのフック船長は極めてずるがしこくて、
 空も飛べるし、人を奴隷としてしか扱わない鬼畜なうえに、
 他人に化けられる能力まで持っている危険な存在だからな」

「ネバーランド少しも夢の世界じゃないじゃないですか!」

「フック船長さえいなければ、
 空が飛べて老化しない最高の世界なんだけどな」


二人はピーターパンが現れるかどうかを夜通し監視していた。


「先輩、もひとついいですか?」
「なんだ」

「どうして女装してるんですか?」

「ああ、これか」

先輩は本気の女装で張り込んでいる。
どこからどうみても10代女子にしか見えない作りこみで。

「男がふたりで街灯の下にいるのは不自然だろう?
 めざといピーターパンのことだ、すぐに引き返してしまうだろう。
 そのためのカムフラージュのためさ」

「だったら、後輩の僕が……」

「それはダメだ!!」

先輩は急に声を荒げた。
深夜の寝静まった外気に先輩の声が鋭く響いた。

「その……お前じゃ信用できないからな」

「はぁそっすか……」


張り込みを続けること数時間。
日も出始めてもうピーターパンは現れない時間帯に。


「先輩、今日はもう大丈夫そうですよ。
 ピーターパンは日が出るころには現れませんし。
 きっと僕たちの張り込みに気付いて引き返したとかでしょう」

「いや待て!!」

先輩が指さすと、空から飛んでくる人の影。

「ピーターパンだ!」

「後輩! お前は家を守れ! 侵入を防ぐんだ!
 俺はピーターパンを取り押さえる!!」

「わかりました!」

後輩はドアの前に立ってピーターパンに備えると、
先輩はすぐさまピーターパンのもとに駆け寄る。

そして、女装した先輩はピーターパンに声をかけた。

「ピーター! わたし、ウェンディよ! ずっと待ってたの!
 さあ、はやく私をネバーランドに連れて行って!」

「せ、先輩!?」

先輩はピーターパンを食い止めるどころか、
守るべきウェンディになりきってピーターパンの手を握る。

先輩の女装の意味はこのためだった。

「ああ、ウェンディ、来てくれたんだね。
 さあ一緒にネバーランドへ行こうじゃないか!」

「はい!」

先輩はピーターパンの手を取って、ふわりと浮き上がる。
やがて見えてきたのはネバーランドと大きな船。


「嬉しいわピーター。
 これで私もネバーランドにいけるのね」

「ああ、そうとも。ネバーランドだとも」


船が近づくにつれ、ピーターパンの顔がはがれはじめる。


「年老いることなく、ずっと働き続ける世界だからな」


ピーターパンに化けていたフック船長がにやりと笑った。