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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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自撮りのメデューサ

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友達のSNSに自撮り画像がアップされていた。

『寝起きの顔だから超ブサイク~~(>_<)』

ウソつけ。
ばっちりメイクもしてるし、角度も計算しているじゃない。
ブスのくせにいっちょ前に画像上げちゃって。

「はぁ……私も自撮りあげられたらなぁ」

こんなブスを吹き飛ばすほどの反響を叩き出せるのに。
自分で言うのもなんだけど、私はかなりの美人。

ただし、メデューサ。

私は自分を見ても石化しないけれど、
アップした画像を見てしまえば別の誰かが石化してしまう。

まあ、別に石化してもいいけれど
私の美しさを認識しても広めてもらえないのが問題で。

パシャッ。

ケータイには誰に見せるでもなく、
私の自撮り写真だけがたまっていった。

そのとき、つけっぱなしのテレビにCMが流れた。

『これであなたも別人に!
 有名人そっくり顔マスク、新・発・売!!』


「……これだ!!」

私はさっそくマスク屋さんへと向かった。


マスク屋さんにはさまざまな「そっくりさんマスク」が飾られている。
私は顔をフルフェイスのヘルメットで隠して入店。

「いらっしゃ……ぎゃああ強盗!?」

「あっちがいます! お客です! メデューサなんです!」

事情を説明すること15分。
店主もやっと私の状況を理解してくれたみたいだ。

「わかりました。それで、誰の顔のマスクを作るんです?」
「私です」

「はっ?」
「私の顔のマスクを作ってほしいんです」

「自分の顔のマスクって……意味あるんです?
 自分の顔に、自分の顔をつけても意味ないような……あっ!」

店員は言いながら気付いたらしい。
それはメデューサの私だから意味があるのだということに。

「はい。私の石化能力は直に見ない限り大丈夫です。
 だから、マスクを作れば自分の顔を晒すことができるんです」

「マスクも安いものじゃないですよ?
 どうしてそんなにまでして作りたがるんです?」

「決まってるじゃない!
 私の美顔をもっと広めるためよ!」

「……はぁ」

店員は私の顔を直接見ないように気を付けながら作業をした。
型を取り、色を付け、寸法を合わせる。

普通の客以上に繊細でめんどくさい工程をふみながら、
私の自分の顔マスクが完成した。

「わぁ! 本当に私そっくりの顔じゃない!」

「それはよかった」

店を出るとさっそくマスクを装着。
そして……

パシャ!
パシャパシャ!
パシャパシャパシャ!

自撮り開始。

奇跡の1枚。
いや、女神の1枚を見つけるために何度も自撮り繰り返す。


できるだけ自然体に"狙って撮ってません感"を演出し、
なおかつ私の最高にカワイイ角度を意識させて、
さらには、一緒に食べ物を映して目的をそらさせる。

「よし! 完璧!!」

1000枚の連写のすえに生まれた奇跡の1枚を保存する。
そして、撮った写真を選択してアップ。


アップから数秒でたくさんの「かわいいね!」ボタンが押された。

「ほらやっぱり! 私って美人なのね!
 こうしちゃいられない! 直に感想も聞いちゃおう!」


「かわいいね!」を押してくれた友達に、
かたっぱしから自撮りの感想を聞くために電話をかける。

もちろん、どの友達も褒めちぎってくれる。

『写真見たよーー。超カワイかったーー』
『見た瞬間、女優さんかと思ったわ!』
『超美人だったね! 男子にモテモテでしょ!?』

「そんなことないよぉ~~」

やっぱり客観的に見ても私は美人だったんだ。
嬉しくなって、アップされた写真を確認する。


「あれ!?」

アップされていた画像は奇跡の1枚じゃなかった。
私がマスクを着けずに自撮り溜めしていた中の1枚だった。

アップするときに間違って選択してしまったんだ。

この画像を見た人間は当然……。


『画像見たよ! 本当にカワイかった!』
『きっとアイドルにもなれるよ!』
『超美人! 私もこんな顔になりたい~~!』

友達の褒め言葉とともに、
また写真への「かわいいね!」は増え続けた。