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Hysteric Papillion 第17話

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「桔平ちゃんすごかったんですよ、レイアップっていうらしいんですけど、シュパシュパ決まっちゃうんです」

「ふうん。いいなあ、私も見に行きたかったけど、さすがに仕事があるからなあ…」

夕方、といっても、7月中旬に差し掛かった日の光は、まだ明るさを保ってる。

6時過ぎなんて信じられない、まだ、4時過ぎくらいの色の光の中、エプロン姿の薫さんは、そんなことを私につぶやきながら、お店の前の道路に、水を打っていた。

そうそう、薫さんの職業って、けっこう意外なものだったのだ。

あの恐ろしい叔父さんを、あんな脅し方&株を買い占めることができるなんていうとんでもない資産の両方を持って、見事に手玉に取れるのだから、

『どっかの大会社の社長さんかなぁ』

とか、

『もしかしたら、すごいところのご令嬢様なのかなぁ』

とか、はたまた、

『こんなにきれいなんだから、女優さんかも(あんまりテレビ見ないから、この可能性はありだと思ってたんだけどね)?』

とか、いろんな想像をしていたのに…薫さんの職業、何だと思います?










いまだに少し信じられないから、お店の中のイスに座って、ぼうっと、仕事中の薫さんの姿を見てしまいます。


ヒント1:薫さんは、エプロンを着ています。

ヒント2:このお仕事をするに当たり、特に必要な資格はありません。
     
     たまに、私もただ普通に手伝わされることがあります。

ヒント3:この仕事をすると、意外と手が荒れます。水仕事は多いです。
   
     いつもお仕事が終わると、薫さんはきちんとハンドクリームを塗って眠ってます。

ヒント4:お客さんは、老若男女問いません。でも、このお店はさすが薫さんのお店なだけあって、センスがいいです。おじいさんでも、おばあさんでも気軽に買いに来ることができて、若い人の好みにもあった、すごいお店です。


…って、これだけでわかるわけないですよね。










答えは、お花屋さんです。











え、いえ、だからっ、別に薫さんのエプロン姿が似合わないとか、手伝うと手が荒れるのがいやだ!!とかじゃないんですってば!!

ただ、お花屋さんってそんなに儲かるものなのかが不思議だったんですよっ!!

だって、株の60パーセントっていったら、とんでもないお金なんだから!!

花っていっても、ここに来て、高いものだったら10000円は軽くすることがわかったけど、まさかそんなに高い花ばかり毎日売ってるわけでもないし、だったら儲けっていっても…。

どこかのファッション関係のショーで使うフラワーアレンジメントとかには、いつも品出ししてるみたいだけど、あとは結婚式のブーケ作りとか、お葬式の菊とかぁ…。










「宥稀ちゃん、ちょっと配達に行ってきてくれるかな?」

「あ、はい。どこまでですか?」

「この花束を、2丁目の春日さんのお家まで。落とさないように気をつけてね」

「はぁい」











後は、どれだけ小さなものでも、きちんと責任を持って送り届けます、っていうところかな。

手渡されたのは、ちょっと小さな花束。

でも、中身は異様に豪華で、赤や黄色の混じった、かわいいチューリップがメインのカラフルな花束。

その中に埋もれているカードには、『まだまだ努力しよう』という感じのつたない字で、おじいちゃんとおばあちゃんへのメッセージが書かれている。

薫さんは、この花束を買った小さな男の子、女の子に、どうやって話しかけてあげてたのだろう?

きっと、この花束だって、子供たちの持っていたお金より相当高いはずだけど、『お姉さんがおまけしてあげるね?』とかって、作ってあげたんだろうな。

そんなことを思いながら、私は買ったばっかりの自転車の荷台に花束を入れて、ペダルをこぎ始めた。

やっぱり、薫さんは優しいんだなぁ…って、改めて思い返しながら。













…ところが、事件は突如勃発しました。

このまま普通の一日が過ぎて、明日は楽しい日曜日。

お店も定休日だし、薫さんが『明日一日、どこかにドライブでも行こうか?』なんて誘ってくれていたのに…。

たった一本の電話のおかげで、私は、その日、今にも死にそうな桔平ちゃんと会わなければいけなくなったのだ。











待ち合わせの場所には、当事者?の桔平ちゃんと、そのギャラリー兼お付の者である章介と明仁。

ちょっと自転車だと距離があったし、信号にずっと引っかかりっぱなしだったから、待ち合わせ時間にちょっとだけ遅れてしまった。

お店は、近くの喫茶店。

着いたころには、章介と明仁の前のアイスコーヒーは半分くらいになってたけど、何か、桔平ちゃんの前においてある。

…どうしてか、一人、オレンジジュース、なんだけど、それは半分薄まってて、何か氷の溶けた薄い黄色の液体になってた。

全然飲んでない、上の空。

桔平ちゃん自体、何か不安定っぽい。

昨日会った時は、あれだけ元気だったのに、何か変…いや、もとからちょっと変わった人だとは思ってたけど、よくよく見たら、表情が沈んでるし。

「…桔平…ちゃん?」

「おう…宥稀ぃ…」

妙によぼよぼの声。

完全に何かが終わってるよ…。

「…ねえ、何かあったの?」

完全に魂の抜けた桔平ちゃんのことはおいといて、章介と明仁に聞いてみる。

すると、2人とも、これまた困ってんだよ…といった顔で、話し始めた。

「…桔平のヤツ、告られたんだよ」

「…なあんだ。それ、告白ってことだよね?よかったじゃん、桔平ちゃん!」

と、肩をポンッと叩いてあげたのに、それを聞いた桔平ちゃん、いきなりテーブルの上のものをグシャグシャにして、とにかく全部叩き落して、大暴れし始めた。

「うおおおっ!!!」

「な、何ごと!?」

「バカ、アンマリ今ヤツを刺激するなよっ!!」

いきなり怒り狂った桔平ちゃん、片付けに来たウエイトレスさんにまでキバ剥いてるよぉ…。

「えーっと…桔平ちゃんは、誰に告白されたのかなあ?」















「「…今野センパイ」」

















……。


















……私はその言葉を聞いた瞬間、意外と凍りついたんだよ…ね。